除虫菊って何?

今頃は薬液をしみ込ましたマットや薬液を浸したスティックをヒーターで加熱する形式の除虫剤が多くなりましたが、皆さんは昔風のあの緑色で渦巻き型をした火をつけるとゆらゆらと煙を昇らせて蚊を退治する蚊取り線香を覚えておられることでしょうか。
あの中に配合されているのが菊の一種、シロバナムシヨケギクの花の粉末だったのです。
この植物の原産国は地中海・中央アジアで、セルビア共和国(旧ユーゴスラビア)で発見されました。薬用部位は花で、活性成分のピレトリンは大部分が痩果部に集中し、花の満開時に最大となることが知られており、その有効成分ピレトリンT、同Uは、ピレトロロンと2種の除虫菊酸とのエステルで、液状で、加水分解すれば殺虫力を失います。
日本では、明治19年、和歌山県出身の上山英一郎が渦巻型蚊取り線香を発明、和歌山県、広島、香川県を中心とした瀬戸内地方、北海道など日本各地で栽培が推奨されました。
その結果、第二次世界大戦前には生産量が世界一になり、世界各国に輸出されました。
戦後はピレトリン類似化合物のピレスロイドが殺虫剤の主流となり、産業としての植物の栽培は現在では終了しています。
観光用としては現在でも因島、和歌山等で栽培され、美しい花を咲かせ、種子の入手は可能なようです。
シロバナムシヨケギクの特徴とその栽培法

- シロバナムシヨケギクの花
植物の特徴としては、茎は細長く、高さは30〜60cmで、茎葉には絹毛がみられます。初夏に、花茎を伸ばし、多数の頭状花をつけます。頭状花は径 3 cm内外、舌状花は白色で、キク科植物らしく、結構美しいものであります。
また植え方は、9月下旬苗床に播種し、翌年4月に本圃に移植します。
その場合、圃場に1尺間隔に穴をあけ、苗1〜2本ずつを植え付け、肥料を施しますが、その年と翌年は花が咲かず、翌々年に初めて開花する気の長い植物で、収穫の適期は管状花の全開時です。
- シロバナムシヨケギク
- 科名:キク科
- 和名:除虫菊
- 学名:Chrysanthemum cineraiaefolium visiani
ピレトリンの薬理的特徴
ピレトリンは一種の神経筋肉毒であり、温血動物に強烈な癲癇(てんかん)様痙攣(けいれん)を引き起こし、且つ血管運動神経中枢の亢奮による血圧上昇、呼吸中枢の亢奮による呼吸機能の増進を起こすことが知られています。家兎体重1Kg当たり2mgを静脈注射しても激しい中毒を起こしますが、数分で回復します。ところが、500倍の1 gを内服しても何らの異常を認めないことから、経口投与では結構安全性の高い物質と考えて良いでしょう。
蚊取り線香ができるまで

シロバナムシヨケギクの花は粉末のまま殺虫粉として用いられ、また、茎葉末、タブノキ末と混和し、マラカイトグリーンを加えて湯で練り固め、成型したものが先ほども述べた蚊取り線香です。
また、これを農業用殺虫剤として用いる場合は、花を突き砕き、石油に2昼夜浸した後濾過し、粉末石鹸及び水で乳剤とし、水で希釈して用います。
近時、ガソリンエキスも市販されていますから、用途はもっと広がるものと思います。
除虫菊(シロバナムシヨケギク)の有効成分ピレトリンは花の中に多く含まれ、満開時に最大となります。このため、この時期に花だけを独特の道具(熊手の刃間の著しく狭いもの)でこそげ取り、乾燥します。しかし、茎葉部にも若干の有効成分が含まれるため、「かとりせんこう」の製造時には、これらの粉末も賦形剤として加え、成型しています。ただし、葉茎部の色は加工中に退色してしまうため、マラカイトグリーンで着色することにより、製品に独特の色を着けているのです。

- アウトドアや庭のお手入れ時のおともに
わが国では、古く平安時代から香木を燃やして精神安定を図るor香りを部屋・衣服や頭髪などにたきこめて疾病を予防し、また自分の存在を示そうとする「空薫物(そらたきもの)」の習慣がありました。
一方、仏教においては、香を仏前でたき、悪気を去り心識を清浄にするという習慣が古くからあり、これが農村地帯に最近まで残っていた稲藁を燃やして蚊遣りをするという習慣と結びついて、「かとりせんこう」を燻して害虫を駆除するという習慣が生まれたのでしょう。
文:野口 衛