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熊本名産「からし蓮根」

熊本県のレンコンの生産量は2500t位です。
全国で一番生産量が多いのは,茨城県で28000t、続いて徳島県11000t位です。

風景

れんこん
○生産量 2,503t/年 (平成12年熊本県農政部調べ)
○作付面積 194ha (平成12年熊本県農政部調べ)
○主要生産地 松橋町・熊本市圏
熊本県経済農業協同組合連合会ホームページより

レンコン

しかし、熊本には「からし蓮根」という名産があります。ご存知ですか?

「からし蓮根」は、熊本城主 細川忠利公が病弱であったので、玄宅和尚が健康改善、造血にとレンコンを食べることを勧め、藩のまかない方が工夫したものです。やがて城主は剛健となりました。

おせち料理

今でも熊本では、おせち料理に欠かすことのできない冬の料理です。からし蓮根の食感は、レンコンの歯ごたえと、芥子のツンと鼻に抜ける刺激が、とても新鮮です。また、レンコンには中心の穴の周りに9つの穴があり、これが細川家の紋である「九曜の紋」に似ていることから、庶民へと広がり郷土料理となったようです。

細川忠利公の病弱で貧血を治したように、レンコンにはビタミンB12を多く含み、鉄分の吸収を高めます。

例えば、レバーと合わせた 「鶏レバーと蓮根の甘辛炒め」等は、良いでしょう。


からし蓮根の作り方

:(ホームページ参考)
準備する材料(1本分、大きさにより変えて下さい)
レンコン 1本
味噌 80g(白味噌、麦味噌または合わせ味噌等、100gに練りからしだと15g。好 みで変える)
粉芥子 3~4g
小麦粉 50g
ウコン 衣の色付けに少々(クチナシ果実でもよい)
水 50cc


●からし蓮根の調理の仕方

  1. 節を切ったレンコンは金属のたわし等で、皮をむきながら、きれいに洗う。
  2. 鍋に酢を少し入れたたっぷりの湯を沸かし、沸騰したら蓮根を入れ7~8分ゆで(竹串が通る程度)、ザルに移し,立てて水を切りながら冷ます。
  3. 白味噌と粉辛子をよく混ぜ合わせ、好みの芥子味噌を作る。(練れば練るほど旨味が出ます)
  4. 芥子味噌の中に茹でたレンコンを立てて入れ、回すようにして芥子味噌を蓮根に詰めていく。(全部の穴から芥子味噌が上がってくるまで、両端より出た味噌を取り除き、蓮根中央を軽く押し、両端より出てきた味噌を取り除きます。これを行っていないと、油で揚げたときに横から味噌がはみだし、格好が悪くなります)
  5. 余分な芥子味噌は取り除き、ザルに一夜おいて寝かせておく。(すぐ揚げてもかまわない)[味比べをして下さい]。
  6. 小麦粉・ウコンを水に混ぜ、固めの衣を作る。(通常の天ぷらの倍くらいの硬さです)。
  7. 辛子味噌の詰まったレンコンの外をきれいに拭き、蓮根の中心より少し上に竹串を刺し、衣の中に入れ、まんべんなく衣を付け,170℃の油で、衣がキツネ色で泡がでなくなったら引き揚げる。揚げすぎたり、油の温度が高いと衣がはずれてしまいます。

冷めても美味しいですが、温かいのを食べると一層美味しいです。

注)辛子の替わりにからし明太、肉等を入れても美味しいようです。お試し下さい。但し,からし明太は冷凍品のため寝かせる時は"冷蔵庫で寝かせるように"との注釈がついていました。

からし蓮根による中毒事件(ボツリヌス菌事件)

1984年、ちょうど私が熊本に赴任した年、今から24年前、辛子レンコンを食して死亡する事件が起こりました。からし蓮根の中に嫌気性のボツリヌス菌が発見され、大騒ぎになりました。どうして、からし蓮根にボツリヌス菌が増え、毒素を出したかは分かっていません。しかし、熊本では、揚げたそのままの状態で、製造日のその日に食し、次の日には煮るなどして熱をかけて食しています。しかし、観光土産用に真空パックで売り出したものは、嫌気性のボツリヌス菌を繁殖させる原因の一つだったと思われます。

最近、熊本空港で真空パックのからし蓮根を見かけました。

つい「昔の事故を知っていますか」と、店の人に言ってしまいました。

 

【文】矢原正治 (YAHARA Shoji)
専門:薬用植物学・生薬学・天然物化学・環境安全
熊本大学・大学院・医学薬学研究部・創薬科学講座所属
薬学教育部・附属薬用植物園担当 助教授(園長)
〒862-0973 熊本市大江本町 5-1  TEL/FAX 096-371-4381(直通) FAX 096-371-4639(事務)

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