漢方を知る

きぐすり.com は、漢方薬、女性の健康、サプリメント、ハーブの情報を専門家がやさしく解説しています。

女性の生活と健康

体の健康 体と心に健康を

 
   

生活の中の美しさと健康

生活の中の美しさと健康

四季の変化、月ごとの変化、さらに一日の中でも体は環境によって変化しています。

 

体の健康

 四季の変化、月ごとの変化、さらに一日の中でも体は環境によって変化しています。
漢方理論には、四季の変化と五臓六腑(五臓=肝・心・脾・肺・腎、六腑=胆・胃・小腸・大腸・膀胱・三焦)の関係や、陰と陽の満ちる時間・衰退する時間や体内の陰陽なども考慮に入れ、体に起こり得る状況を読みとってバランスを保つ知恵がたくさん詰まっています。

 例えば、漢方の古典である『黄帝内経』という書物には、人間の基本的生活のありかた、女性・男性それぞれの健康を守るために、四季の変化や外気要因(漢方用語で六淫といい、風・寒・暑・熱・燥・湿がある)の変化をいかにうまく受け止め、健康を害さないようにするか、という心得が記載されています。

 年齢と体の成長については、女性は7の倍数で一区切り(一紀)の成長がみられ、男性は8の倍数で成長が認められるとされています。腎(漢方用語でいう腎であり、西洋医学でいう腎臓とは違います)は生殖・水代謝・骨・耳に関係するといわれており、腎の成熟・衰退によりそれぞれの変化が現れるのです。

 例えば、女性は7歳で腎気が活発になるため歯が抜け永久歯がはえ始め、14歳で腎気の成熟が進み生理がはじまり、21歳で腎気がゆきわたりホルモンなどが安定し、28歳で体の最も強壮な時期をむかえ、35歳で腎気が衰退しはじめ肌が衰えだし、42歳で白髪が目立ちはじめ、49歳で血脈が衰え閉経をむかえるというものです。


 健康な体には、陰陽のバランスが保たれており、様々な変化の中で重要となる五臓六腑が滞りなく働く、ということが必要なのです。

 とは体や細胞に必要な栄養分と考えられ、大まかには津液(しんえき)と呼ばれている細胞に必要な水分や血液などがあげられます。とは主に体の恒常性を保つ体温や代謝を司る力で、生命エネルギーと考えられます。

 陽は明け方より強まり、昼12時頃にピークに達し(この時陰は一番衰退しています)、その後陽はしだいに衰退します。かわりに陰が強まり、夜24時頃に陰がピークを迎え、陽は一番衰退しています。陽の盛んな時間帯は代謝・循環などが活発になり陰を生じさせ、充足させた陰(潤い、血液、栄養)を安定させるのです。陽は陰を生み、陰は陽を助けます。陰は体の栄養分に関係しますから、体を休めず夜更かしすると潤いや栄養を消耗し肌や髪の毛がパサついてくるのはそのためです。

 「陰が盛んで陽の衰退している夜遅くには、代謝がおちているのでカロリーの高い物の摂取を避け、冷えやすいので冷たい物は避ける。」「陽が盛んで陰が衰退している昼間は、エネルギーを代謝・消費しやすいので栄養分を十分にとる。」、など陰陽の働きを考慮した生活が健康の秘訣です。

 陽が極端に衰えると《外気が冷たくそれに対応できない場合や、老化・病後など外気に関係なく個人の陽が衰えている場合》、それ以上の陽気を消費しないように体をまるめ、横になりたくなり、眠たくなったり気分が落ち込んだりすることもあるのです。


 最近、女性の活躍が目立っていますが、オフィスの過剰なクーラーや時間や季節を考慮しない冷たい物の飲食は陽を損ない、不規則または多様で過剰な仕事は陰を消耗させるため陰陽が失調し循環が悪くなり、下半身の冷え・頭痛・肩こり・子宮筋腫や内膜症などを発症したり、不眠で髪や肌はかさつき…という人が増えています。体内のバランスが整っていないと、そこに六淫といわれる外的要因が四季の変化にのって加わり、これに対応できず病を生じてしまうのです。

 それぞれの年齢にそった美しさと健康を保てるよう、7の倍数で考えられる体の状況と自分の体の質を考慮に入れつつ、環境の変化や生理周期にそった生活を心がけましょう。

心の泉

 私の好きな本の一つにアン・モロウ・リンドバーグの『海からの贈り物』があります。その中に次のようなフレーズがあります。

 「女は絶え間なく自分を溢れさせようとしている…」《ひとりの女性として親として社会とつながっているために神経をつかい、数え切れない細かな家事をこなし、子供の教育を考えることなど、女としての本能すべてが自分を与え続けることを強制する。本能的にもそう望んでいるのかもしれないが自分をしっかりもつために、内なる泉を発見し、自分と自分の核がしっかり繋がっているときだけ他者と繋がることができるのだと。》

 これを読んだときハッとしました。心の泉、心のベッド、私が患者さんに話をするときによく使う言葉です。実はこれも漢方理論の“心陰(しんいん)”というものに関係があるのです。心陰とは“心臓―心(しん)―こころ―精神―神経の栄養分”とやや抽象的かつ哲学的ですがこのように考えられます。

 心の泉が常に溢れていることで周りの人に心遣いができ、心が満ちることで心のベッドがゆったりとでき、昼間働いた陽気が体内に帰った時にこれを受け止め、良い眠りにつけるのです。これ(心陰)が欠乏すると実際の臓器的な動悸(病的な不整脈などのないもの)などの症状を出す一方で、不眠・イライラをおこしやすくなったり、人の言葉に過敏になったり、悲しくなったりもするのです。心のベッドが整っていないと様々な刺激を処理したり、包み込むことができなくなったりします。

 健康のためには五臓六腑と陰陽のバランスが重要で、漢方理論では心とからだは切り離さず考えます。ここが、心とからだを切り離して発展した西洋医学と異なる所の1つです。心で感じたことは多かれ少なかれからだにも影響を与えます。また、からだの変化も気持ち(心)に影響するのです。

 心の泉を常に溢れさせるためには、ひとりになる時間を大切にして、しっかり自分の核と向き合うことが必要です。仕事・家事・育児・社会との関わりなど多様な細かい仕事が増えると、一生懸命考え動いても、単なる忙しさによって遠心力が働くように自分の核から離れてしまうことがあります。振り回されるだけではなく、少し眼を内へ向けて自分の本質を見ることで、~女性にとってこれは永遠の課題かもしれませんが~、 “元気そうにしていても気持ちの疲れている自分”がみえるかもしれません。

 美味しいお茶でもいれてホッと一息、そして心とからだを健康に保つことが大切です。


文:中本かよ(佳代子)先生


冷えについて 「最近疲れが取れないのよね」と思ったりすることがありませんか?
東洋医学的にみた皮膚病 皮膚科の診療をしていますとよく遭遇する質問があります。
アレルギー疾患への処方箋 最も大切なことは、日常生活を見直すことにあると考えています。
お血(おけつ)と女性 漢方はお血(おけつ)の改善を援助する「縁の下の力持ち」です。
現代医療における東洋医学の役割 西洋医学的疾患概念や病態の把握は東洋医学におけるそれとおおきく異なります。
生活の中の美しさと健康 四季の変化、月ごとの変化、さらに一日の中でも体は環境によって変化しています。
海の幸 変化する食生活の改善・・・・摂取する脂質の種類
感動の涙 ~漢方と、補助療法としてのアロマセラピー~ 漢方と、補助療法としてのアロマセラピー

TOP