肉料理や油物を摂り過ぎていませんか?
油炒めやフライものが多い現代日本の食事は、リノール酸系(n-6系)の多価不飽和脂肪酸が過剰になり、いわしなどの魚の摂取が減ることでエイコサペンタエン酸(EPA)などの系列すなわちαリノレン酸系(n-3系)が減少し、その結果、n-3/n-6比が低下します。
リノール酸は体に必須の大切な脂肪酸ですが、必要以上に摂りますと、炎症を助長する物質をどんどんつくることになります。これを抑制するのがn-3系の油脂で、魚油やしそ油、葉・根菜類の一部に含まれます。
漢方の食養生を重視した立場からは、肉や油炒めを減らし、海の幸の豊富な和食をしばしば勧めてきましたが、多価不飽和脂肪酸の観点からみて、理にかなっていたことになります。
皮膚の症状を改善するには
この脂肪酸についての話を脂質研究の大家の先生に教えていただき、生活科学部の先生と共同研究もしました。比較的最近のアトピー性皮膚炎の方にご協力いただいた結果、血液中の脂肪酸バランスn-3/n-6は、昭和30年代の推測値に比べ、全体としてかなり下がっていました。もちろん、少人数ながら注意されている方もいらっしゃって、全員n-3/n-6比が低いというわけではありません。
とはいえ、n-3/n-6比の低い人は多数を占め、n-6系の油脂を減らし、n-3系を増やすと、皮膚の症状の改善につながることが分かりました。

働き盛りの40代のサラリーマンの方。
年来のアトピー性皮膚炎で、通常の治療のみでは治らず、全身に紅斑と落屑が著明な状態で来院されました。ステロイド外用やかゆみ止め内服は以前は効果がみられたものの、次第に効きが悪くなり、かさかさで紅いという皮膚状態が続くようになってきたそうです。
生活習慣をお聞きすると、多忙で残業続き、食生活は不規則な上、外食に頼りがちでした。食事日記をみますと、朝食や昼食抜きがしばしばで、内容も、茹でた野菜は皆無に近く、フライや炒め物、肉中心の食事でした。
それまでの治療を続けた上で、n-6過剰を減らし、魚や茹でた野菜を取り入れるなどの工夫を加え、漢方薬内服を併用しました。
| 不規則な食生活 |
- 外食中心
- 朝食・昼食抜きもしばしば
- フライや炒め物、肉中心
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| 改善例 |
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その結果、紅斑が消え、皮膚の本来の潤いを取り戻され、薬もほとんど使用しなくてもよいようになりました。なおも食の注意を続けて、皮膚が治っていく実感だけでなく体も元気になってきたという喜びの感想をいただきました。血中の脂肪酸を調べますと、最初の頃、低かったn-3/n-6比は明らかに増加し、平均的なレベルになりました。
ただし、魚は汚染の問題が深刻です。重金属、ダイオキシン、環境ホルモンなど明らかにされた情報だけでも数多くあります。水銀汚染をとりあげてみても、多く食べることで血中濃度の許容値超えにつながる魚は世界中で厖大(ぼうだい)な数に上るようです。特に妊婦さんは食べないようにと注意されている魚もあります。
当面の食の注意では汚染の影響が少ない魚を選ぶなどの工夫をしますが、海の幸も山の幸も台無しにしないよう私たち一人ひとりが地球環境のことを考えた生活をするよう心がけなくてはならないとひしひし感じています。
文:大阪市立大学大学院医学研究科皮膚病態学助教授
小林裕美先生 / 薬事日報 10097号