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氣の関与する冷え症
(2)氣虚
1.漢方は氣を調整する医学(その2)
漢方医療は「どのような人」が「どのように悩んでいるか(感じているか)」に対応します。
ですから、漢方医療を受診するときは、色々な悩みを話してください。
患者さんの様子と相談された悩みの内容から、漢方医学的な病態を考えて、適切な漢方薬を選びます。

このことを「冷え症」を例にして、色々な原因・病態があることを説明しています。
前回は氣(生命力)の流れが悪い病態(氣滞と氣逆)になると「冷える(冷えのぼせる)」ことを紹介しました。
今回は氣の量と機能が不足して「冷える」2種類の病態を解説します。
氣が不足した病態を氣虚(キキョ)と言い、これを改善する効能を補氣(ホキ)といいます。
2.胃腸虚弱による「冷え症」

- 胃腸虚弱に悩む人は「冷える」
- (六君子湯の適する人のイメージ)
氣は食べ物と呼吸から補充されます。
消化吸収力が弱い胃腸虚弱の人は食べ物から栄養やエネルギー(氣)を補充できません。
そのため胃腸虚弱になると「冷える」のです。
漢方医療では胃腸虚弱の状態を脾胃氣虚(ヒイキキョ)と言います。
胃腸虚弱なお子さんを「ひ弱な子」と言いますが、この「ひ」が漢方の五臓(肝・心・脾・肺・腎)の「脾」です。
脾胃氣虚を改善する補氣薬の代表が薬用人参(朝鮮人参)です。
胃腸虚弱の人は食欲がなく「冷えて」下痢気味になります。
その場合には人参湯(ニンジントウ)や六君子湯(リックンシトウ)を用います。
補氣薬の薬用人参と甘草(カンゾウ)で胃腸機能を調えます。
六君子湯構成生薬と1日分の重量


- 氣虚の人は食欲が低下し、
「夏ばて」に悩む
- (補中益氣湯の適する
人のイメージ)
薬用人参を含む有名な処方に補中益氣湯(ホチュウエッキトウ)があります。処方名の「補中」はおなかの機能を補うこと、「益気」は氣の不足を益(マス)という意味です。
薬用人参と黄耆(オウギ)と甘草を組み合わせた代表的な補氣剤です。補中益氣湯は食欲不振の夏ばて状態を改善します。
このような人は「冷房病」の冷え症や疲労倦怠感に悩みます。
←黄耆
←黄耆の基原植物のナイモウオウギ
3.夏の「冷え」を予防する
体力がないBさんは冬はもちろん夏でも「冷え」に悩みます。
冷房の風に直接あたらないように注意してください。
できるだけ温かい飲み物を摂るようにしましょう。
昔は海水浴の後は、生姜(ショウガ)の味のする温かい水飴(飴湯:アメユ)を飲んで冷えたおなかを温めました。
最近は泳いだ後に冷菓を食べています。
これ「マチガイデス!」。
Bさんのような人は「夏ばて」しやすいので、薬用人参の配合された処方で胃腸を調えることが「冷え症」対策になります。この時に用いる代表的な処方は補中益気湯(ホチュウエッキトウ)です(名前のとおり氣を益する処方です)。
薬局でご相談ください。
4.老化にともなう「冷え症」

- 疲労倦怠感があり腰や下肢が「冷える」
- 八味地黄丸の適する人のイメージ
高齢者の「冷え」も氣の不足です。
この場合は腎虚(ジンキョ)と言います。
漢方では腎に蓄えられている氣(生命力)を使いながら成長すると考えています。
高齢になって腎に蓄えた氣が不足した病態が腎虚(ジンキョ)です。
高齢者の「冷え」や足腰の脱力感、夜間に小便が近くなる(夜間頻尿)が腎虚を診断する根拠です。
腎虚に用いる有名な処方は八味地黄丸(ハチミジオウガン)です。
八味腎氣丸(ハチミジンキガン)とも言われます。
←八味地黄丸
八味地黄丸は生薬の粉末を蜂蜜で練った丸剤ですが、煎じ薬でも用いられます。
代表的な補腎薬(ホジンヤク)の地黄(ジオウ)と「冷え」を改善する附子(ブシ)が配合されています。
八味地黄丸の構成生薬と1日分の重量

5.「冷え症」の食養生(薬食同源の食材)
胃腸が弱い人の「冷え症」の養生は、消化の良い食べ物を温めて摂ることです。
またフェンネル(茴香:ウイキョウ)、ショウガ(生姜:ショウキョウ)など身体を温めるハーブ(香辛料)を使うと食が進みます。
ちなみに茴香は「冷え症」の人の腹痛に用いる漢方胃腸薬の安中散(アンチュウサン)に配合されています(「冷え」を伴う生理痛にも用います)。
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| 茴香 |
茴香の基原植物のウイキョウ |
中国のようにハスの種子(蓮子:レンシ)の入った「朝がゆ」を食べるのも良いでしょう。
蓮子は補氣・補腎薬であり高齢者の排尿異常に用いる清心蓮子飲(セイシンレンシイン)に配合されています。ヤマノイモ(山薬:サンヤク)も高齢者の機能低下を軽減する薬食同源の食材です。山薬は八味地黄丸に配合されています。
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| 山薬 |
山薬の基原植物のヤマノイモ |
薬用人参(朝鮮人参、高麗参)
漢方薬の人参は野菜の人参と異なりますので、混乱を避けるために薬用人参とも言います。
この原料植物は朝鮮半島経由で輸入されました。
江戸時代に幕府から栽培用の種子が会津藩などに下賜(カシ)されたので、種子を「御タネ」と敬称しオタネニンジンと呼ばれるようになりました。
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| 人参 |
人参の基原植物のオタネニンジンの果実 |
薬用人参の補氣(氣を補う作用)の基本は胃腸の消化吸収機能を調えることです。