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漢方医療の眼 ~漢方薬で予防と治療と養生~

冷え症

血(けつ)の関与する冷え症
血おと血虚

1.漢方の血(ケツ)

 漢方薬局では患者さんの全体像から漢方医学の病態を判断して適切な漢方処方を提案します。この漢方医療の眼(考え方)を「冷え症」を例にしてお話ししています。「冷え」以外の色々な悩みも適切な漢方薬を選ぶヒントになりますので、色々な苦悩をお話しください。

血

 「冷え症」の病態には氣の流れの異常(氣滞や氣逆)、氣の不足(氣虚)があることを説明してきました。 今回は漢方医学の血(ケツ)の異常で「冷える」病態と治療法を解説します。

 漢方医学の血は全身に栄養分を運び、潤い(水分)を保つ機能を有します。 これは現代医学の血液とほぼ同様です。

 血の流れが悪い病態を血お(ケツオ)と言い、停滞した血をお血(オケツ)と言います。「お」は「滞った」という意味です。 体外から見えるお血は打撲した部位に見られる内出血(青あざ)です。

2.お血(血の停滞)による「冷え症」

?血

 血の流れが停滞すると局部の栄養分が不足しますから「冷え」を感じます(長期になれば「痛み」も感じます)。

 Aさんのような「冷えのぼせ」にお血が関係していることは、はぐき(歯茎)が暗紫色になっていることで判断します。 舌の裏の静脈が欝滞していないかを見せていただくことがあります。 下肢に静脈のこぶ(瘤)が浮き出ていないかどうかも確認します。 痔や生理不順とお血は密接に関係しますので、お尋ねすることがあります。

 お血は血の巡りを良くする漢方薬で治療します。 活血薬(カッケツヤク)や駆お血薬(クオケツヤヤク)と言います。 血おの原因には、血を循環させる機能(氣)の異常(氣滞)があります。

 Aさんの「冷えのぼせ」は、氣滞(氣逆)と血おによると考えます。 そこでAさんの「冷えのぼせ」やイライラや便秘には、活血薬の桃仁(トウニン:モモの種子)、 大黄(ダイオウ)、桂皮(ケイヒ)の配合された桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)が適切だと判断するわけです。

 大黄と桂皮は氣滞や氣逆もお血も改善する漢方薬です。

モモ 桃仁(トウニン)
モモ 桃仁(トウニン)

 便秘がない場合には牡丹皮(ボタンピ:ボタンの根の皮)、芍薬、桃仁、桂皮などを含む桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)という丸薬が適します(煎じ薬で服用する場合もあります)。

ボタン シャクヤク

ボタン

シャクヤク

桂枝茯苓丸の丸剤 桂枝茯苓丸の配合生薬とその分量

桂枝茯苓丸の丸剤

桂枝茯苓丸の配合生薬とその分量

3.血虚(血の不足)による「冷え症」

血虚

 血の量や栄養作用が不足した血虚では「冷え」を感じ、皮膚が乾燥し肌が荒れます。

 Bさんの「冷え」に血虚が関係していることを確認するために、顔の色つやが良くないかどうかを診ます。 また、爪がもろくないか、めまい感、動悸、生理不順などをお尋ねします。

 血虚には血の機能を補う漢方薬(補血薬)を用います。 当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)、 芍薬(シャクヤク:シャクヤクの根)、地黄(ジオウ)などです。この4種類を含むのが四物湯 (シモツトウ)という処方です。

カイケイジオウ 地黄(ジオウ)

カイケイジオウ

地黄(ジオウ)

 血虚の原因には、胃腸の消化吸収機能が弱い(脾胃氣虚)があります。また脾胃氣虚はむくみ(水滞)を誘発します。

 Bさんの「冷え症」は、血虚と氣虚が主体で、水滞も認められますので茯苓(ブクリョウ)、蒼朮(ソウジュツ)などの補氣・利水薬の配合された当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)が適切だと判断できます。

 貧血傾向の人の「冷え症」では、皮膚が乾燥傾向であれば地黄を含む四物湯、皮膚がしっとりして足がむくむ(水滞)ようであれば茯苓などを含む当帰芍薬散を使います。

4.薬補より食補:貝原益軒『養生訓』

金龍寺(福岡市)にある貝原益軒の銅像

 貝原益軒(カイバラエッケン)先生は江戸時代(17世紀末)の漢方医(儒学者)です。 益軒先生の『養生訓』には「人生を楽しむ」ために養生と節制の必要なことが述べられています。

 とくに「食べ物による予防的な治療」の重要性を庶民に説きました。現代の薬膳(漢方薬を含む料理)に相当する考え方です。

~ちょっと一言~

紅花(植物名はベニバナ)

 ベニバナの花の色は黄色から赤(紅色)に変化します。
 水に溶ける黄色の色素を洗い出して紅色に調製します。ベニバナは古代エジプトでも使われていました。シルクロード(絹の道)を経て中国に伝わり、そして日本にもたらされました。
日本では山形県で栽培されています。

 紅を「くれない」と読むのは「呉(クレ)から来た藍(アイ)」という言葉に由来します。呉は中国南部の揚子江の河口付近(現在の江蘇省)の地名です。

コウカ ベニバナ
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