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水(スイ)の関与する冷え症
水滞と痰飲
1.お話しください

薬局の漢方相談では、患者さんの「悩み」を聴くことから始まります。
もっともつらい症状だけでなく、眠れない、肩がこる、むくむ・・・など患者さんにしかわからない症状を話してください。
お話しをうかがいながら、患者さんの姿勢、声のはり、目の輝きなど全身の状態を観察します。
そして患者さんの身体の「何」が「どうなっているのか」を漢方医学的に考えて適切な漢方薬を選びます。
このことを「冷え症」を例にして説明しています。
今まで氣と血(ケツ)の異常によって用いる漢方薬が異なることをお話ししてきました。
今回は水(スイ)の停滞による「冷え症」とその治療を紹介します。
2.水の停滞と「冷え」

漢方古典では身体の水分を赤い血と赤くない津液(シンエキ)に分けて考えています。
津という字は「興味津々(シンシン)」という言葉があるように、わき出る水の意味があります(港の意味もあります)。
日本の漢方では津液を水(スイ)と称してきました。体内の水が停滞すると腫れぼったく「むくみ」ます。その他、頭痛、めまい感、吐き気、下痢の原因になります。
この病態を水滞(スイタイ)あるいは水毒(スイドク)といいます。
そして水は元々冷たいのでそれが溜まると「冷える」と考えています。
3.水滞の「冷え」とお血の「冷え」
BOさんは、ポチャポチャと「水太り」していて、膝関節に水が溜まって痛く正座できないという「悩み」を持っておられます。
色白で汗を拭きながら話された内容をまとめると、食が細く疲れやすい、身体が重く「冷え症」傾向で夏の冷房の風があたるのが嫌いだということです。
同じような体格をしたAさんは赤ら顔で色つやは良く元気そうですが、 主な悩みは「冷えてのぼせる」ことです。
のぼせる時には頭が痛く、イライラし、首筋や肩がこるとのことです。
このような病態をお血(オケツ)ということを既に紹介しました。大黄(ダイオウ)や桃仁(トウニン)を用いる病態です。
4.「冷え」の病態と漢方処方
このように見かけは同じように肥満し「冷え」に悩む人でも漢方医学的に診ると病態が異なります。
- Aさんは、いわゆる「血液ネバネバ」なので血の流れが悪くなり「冷えのぼせ」が起きています。
- BOさんは、身体に余分の水がたまっている状態です。その原因は消化器機能が弱いことが関係しています。

Aさんには桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)、BOさんには防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)が適当だと考えられます。
この両処方の配合生薬を図に比較しました。防已黄耆湯に含まれる防已、黄耆、蒼朮が利水効果を発揮します。
黄耆と蒼朮は胃腸を整える機能もあります。
AさんとBOさんの見た目の体格は似ていますが、漢方医学の病態が異なりますので、異なる処方を用いるのです。これが漢方医療の眼です。

前回、血の不足した病態(血虚:ケッキョ)で「冷え症」に悩むBさんも、足がむくみ、めまい感や頭が重たい感じに悩みます。
これが「水滞」です。Bさんに適した当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)にも蒼朮や茯苓(ブクリョウ)や沢瀉(タクシャ)という利水薬が配合されています。
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| タクシャの栽培畑 |
沢潟 |
5.「冷え症」の自己診断と養生
冷え症の人は右に示したように、自分で自覚し、無意識のうちに防衛しているようです。
この「身体の声」に耳を傾けて生活するのが養生の基本です。
夏でもシャワーで済ませずに「ぬるめ」のお湯にゆっくり浸かって温まってください。
エアコンをきかせた生活では汗をかきませんから、お風呂で適度に汗をかくと「水」が循環するので体調が良くなります。
(なお風呂上がりに少し水を飲んでください)
冷えている身体の声を聴く
- 他の人に比べて「寒がり」の性分だと思う
- 腰や手足、身体の一部に「冷え」があってつらい
- 冬になると「冷える」ので、電気毛布などを常用する
- 足が「冷える」ので夏でも靴下をはくようにしている
- 冷房の風が直接あたるのを好まない
- 夏でも温かい飲み物を好む
- 他の人より厚着をする方だと思う