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忘れ去られた石菖[4]

~茶や花の文化の中へ~

石菖の香り

石菖の香りの活用は大変興味深く、しかも日本の文化に、重要な位置をしめています。
たとえば茶道では、「夜咄」といってロウソクの灯りの中で行う夜のお茶席があります。


茶や花の文化の中へ

夜咄茶は茶道の世界では究極のお茶とされており、体験できる機会も限られているとのこと。
このお茶席では、花は生けずにその替わりに石菖を用います。(炭に挿したりもします)

石菖には、蝋燭の油煙で濁った席中の空気を、清める浄化作用があるからだそうです。

▲ 夜咄茶での石菖 京都高台寺

石菖の香りの効果を経験的に熟知していたからでしょうか。
茶人は、自分の庭に石菖を植えておき、必要な時に備えておくといいます。

元来、石菖は、中国の文人が書斎において愛好し、蘇東坡の詩にも「青盆の水は石菖蒲を養ふ」などと見え、唐風趣味の流行にともなって近世中期より流行していました。

盆栽も中国文人趣味から生まれたとされていますが、日本の文人の座右の書とされ、文房清玩の内容を記した『考槃餘事』(屠隆1543~1605年)の盆玩の箋には、やはり石菖を重視している内容が記されています。

こうした石菖に対する中国の文人好みは、日本においては、中世の室町文化に移入され、やがて茶や花の文化の中にも取り入れられていったと考えられます。

十六世紀に始まった茶会の記録「茶会記」には青磁の花生に器形の分類が見られるようになりますが、その中に「せきしょう鉢」という名も見られるようになります。


【文】有限会社 香りのデザイン研究所 パフュームデザイナー
別府大学客員教授
吉武 利文(よしたけ としふみ)
http://www16.ocn.ne.jp/~kagunomi/

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