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東洋医学的にみた皮膚病

東洋医学的にみた皮膚病
皮膚科の診療をしていますとよく遭遇する質問があります。
 

東洋医学的にみた皮膚病

 皮膚科の診療をしていますとよく遭遇する質問があります。その代表的なものをいくつか挙げてみます。

Question1 私は主婦湿疹で手が赤くなって困っています。どうしたら治りますか。
Question2 じんま疹が治りません。肝臓の機能が悪いかも知れないので検査をしたいのですが。
Question3 湿疹が繰り返しでるのは内臓に異常があるのでしょうか。
 さて、ごく普通の問いかけですがどう答えましょうか。西洋医学的に答える場合漢方的に答える場合とでは答えのニュアンスが異なります。それぞれの学問のなりたちの違いが答えの違いとなってしまうのです。
 

Answer1

 1の人に答えるとき、西洋の立場であれば「主婦湿疹」というきちんとした医師による診断を受けている前提があり、「湿疹に対しての治療はステロイド外用」とスタンダードな治療が確立されていますので答えは比較的容易です。

 漢方的にいうと、その人の体質に関する情報はありませんので手に湿疹のある人でしかなく、体力のある元気な人に起こった手湿疹とおなかをこわしやすい冷え性の人の手湿疹では意味が違うのです。これでは治療の薬までは答えを出す事が出来ません。

 ところが「冷え性で手のひらは火照る事があり、生理の異常のある人の手湿疹なら温経湯という漢方薬が効果があります」、と言う事が出来ます。どちらも答えとしては正しいですし、結果として患者さんがよくなればよいのです。どちらの考え方が好きですか?と聞かれた時、いいなと思うほうで治療すればいいのです。

 



Answer2

 2の人に答えるとき、西洋的にいえば「肝機能が悪くてじんま疹が出る事はありません。採血でも正常ですので検査は必要ありません。

 じんま疹御希望なら原因となり得そうなアレルゲンの採血をやりましょう。」という答えが一般的です。

 漢方でいう肝の機能はいわゆる肝臓を指している範囲より広く、体のしくみの中で気分や水分が動いたり筋肉が動いたり感情が豊かに過ごせたりと、生きている活動そのものを順調にする働きを肝の働きとして普遍的に考えます。

 かゆみが止まらなくなるのは、かゆみ反応を自分でうまく調節できない状態に何かの理由でなっている、という事ですから肝の働きがうまくいっていない証拠なのです。この肝の働きと西洋の肝臓機能は意味するところが違いますから、当然検査しても正常なのです。

 誰からも教えられなくても肝の機能を気にして病院にやってくる患者さんの感覚、これこそ日本人が本来持っている自然の感覚でその根底にあるものが漢方をはぐくんだ文化です。




Answer3

 3の人に答えましょう。西洋的には内臓と関係ある皮膚症状をデルマドロームといって、特徴的な症状群別に病名がついています。そのような診断を想定する時は必要な検査を行います。その患者さんの症状が内臓と関係ありそうならば検査をします。

 しかし検査で異常が見つかる場合は案外少ないものです。先ほど肝機能に少し触れましたが漢方では臓器の考え方に五臓(腎・脾・肝・肺・心)という考え方があります。人間の体のしくみを働きごとに五つの「臓」と結びつけています。そのため肺といえばガス交換を行う呼吸の袋としての肺を指すのが西洋医学の常識ですが、漢方では皮膚をはじめとする体と外界とを隔てる部分全てに肺の働きがあると考えます。

 目にも口にも消化管にも腎臓にも肺の働きが存在します。個々の臓器が健康である事も大切ですが、人としての機能体が健康に働くためには個々の臓器がばらばらに機能するのではなく、うまく連携している事が必要なのです。現在は西洋医学が進んで個々の臓器の機能を細部まで検査する方法が確立されました。

 しかし臓器ごとの連携の具合を測定する検査法は残念ながらよい方法がありません。湿疹は皮膚の炎症ですので採血などの検査でいくら内臓を検査しても何の所見も出てきません。幸いな事に漢方ではそれらの検査がない時代に作られた学問なので、皮膚に炎症が起こる仕組みを考えるための別の尺度を持っています。漢方的には3の方にこう答えることができます。

 皮膚を丈夫にするためにはそれを支える内臓の働きがスムーズでなければなりません。内臓にも問題がある可能性があります。

 

 こうしてみてみますと西洋医学のみを実践している場合には「素人考え」ないし「迷信」として切り捨ててきた自然に湧き上がって来る私たち自身が持っている生体観がそのまま漢方医学の育ててきた考え方と気づきます。

 漢方を勉強する事は人が動物として忘れかけている自然の法則を思い出すことでもあるのです。そういう目で見ていった皮膚の病気について次号以後考えていく事にしましょう。

 
文:龍野医院 龍野佐知子先生


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