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症状と漢方薬

胃食道逆流症の漢方

(1)基礎知識 (2)基本方剤
(3)理気化痰剤

 今回は胃食道逆流症(GERD)に用いられる理気(リキ)化痰剤を考えます。

1.いらだちを伴うGERD:柴胡(サイコ)配合剤

(ダイサイコトウ)の適応病態には、心窩部の痞え感心下急 シンカキュウ、心下満痛 シンカマンツウ)が例示されています。これはGERD痰飲気滞の症状に相当します。

大柴胡湯は、高血圧患者(83歳)に伴う胃もたれ吐き気、空腹時の上腹部痛を4日間の投与で軽減した。

 この報告は83歳の高齢者ですが、病理の実証を確認すれば短期間であれば瀉下剤の短期間投与が可能であることを示しています。

 大柴胡湯は、主に上腹部と脇腹と腹部の膨満感を伴うメタボ肥満や高血圧の随伴症状に用いられる方剤です。肥満(2)を参照してください。

(シギャクサン)は、いらだち抑うつと、胸腹部のつかえ感胃痛腹痛食欲不振胃もたれげっぷに用いられます。漢方薬名の意味:四逆散を参照してください。

四逆散は、四肢冷感を主訴とする女性(35歳)の、体の重だるさ、頭重感、緊張感、不安焦燥恐怖感、胸部の痞塞感口苦口粘感を軽減した。

 この患者の症状はストレスで悪化することから気滞と判断して理気剤四逆散が用いられました。

(サイコケイシトウ)は筋肉が絞られるような、胃痛腹痛を伴う機能性ディスペプシア(FDGERD、非びらん性GERDNERD)に用いられます。
 本方の主たる適応は、微熱、頭痛、食欲不振や吐き気、心窩部つかえを伴う亜急性期の感冒性胃腸炎です。胃腸かぜを参照してください。

2.抑うつを伴うGERD:半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)

 半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)は、抑うつ不安吐き気心窩部つかえを軽減する理気化痰剤です。漢方薬名の意味:半夏厚朴湯を参照してください。

 半夏厚朴湯はプロトンポンプ阻害剤(PPI)が効きにくいGERDPPIと併用されています。

PPIで胸やけの軽減したGERD患者に半夏厚朴湯を追加併用することで食欲不振胃もたれの改善がみられた。
PPIと消化管運動機能改善剤が無効であったGERD患者のげっぷ半夏厚朴湯六君子湯PPIを併用することで軽減できた。

 半夏厚朴湯胃排出促進作用PPIとの併用に寄与したと考えられます。

3.半夏厚朴湯と併用される方剤

 半夏厚朴湯は併用に適した方剤です。その理由は1)甘草(カンゾウ)など重複すると副作用が増強される生薬を含まない、2)寒証熱証にかかわらず適応領域が広い、3)慢性病態に伴う抑うつ不安感を軽減することがあげられます。
 本方は、前項の柴胡配合剤と併用されています。
 ここではGERD治療で併用される機会の多いその他の方剤を考えます。

(サイボクトウ)は、半夏厚朴湯小柴胡湯(ショウサイコトウ)の合方です。胃食道逆流症に伴う咳嗽などの呼吸症状に適します。

 柴朴湯(と胃食道逆流症に対する通常の西洋医学的治療併用)は、西洋医学的療法によっても胃食道逆流症に伴う咽喉頭部違和感軽度呼吸困難など呼吸器症状を西洋医学的治療単独群より有意に改善した。

ランダム化比較試験 漢方と最新治療. 2005; 14: 333-8

(ブクリョウイン)は、げっぷ胸やけ食欲不振胃部膨満感・痞塞感腹鳴になどのGERD症状に用いられます。胃食道逆流症(2)を参照してください。
 医療用には本方と半夏厚朴湯を合剤にした製剤があります。甘草を含まない胃腸薬です(図1)。

 茯苓飲に含まれる枳実(キジツ)は吐き気げっぷ、食後の膨満感痞塞感焦燥感を軽減する理気化痰薬です。

(リックンシトウ)は、FDGERDNERDに使用されています。機能性ディスペプシアを参照してください。
 本方は、半夏厚朴湯より胃腸虚弱食欲不振冷え傾向胃もたれに適します。化痰理気を強化するために半夏厚朴湯と併用されます(図2)。

(ヘイイサン)は、過食後の湿邪(シツジャ)や飲食物の停滞(食積 ショクシャク)による胃もたれ胸焼け腹部膨満感食欲不振を軽減する方剤です。
 抑うつ傾向があれば半夏厚朴湯と併用されます。

 平胃散は、半夏厚朴湯茯苓半夏での代わりに同じ薬能を持つ蒼朮(ソウジュツ)と陳皮を含みます。補気薬が強化された半夏厚朴湯の関連方剤です(図3)。

 本方は、下痢には五苓散(ゴレイサン)と併用します(⇒胃苓湯 イレイトウ)。霍乱を参照してください。いらだちがあれば四逆散と併用します。

 半夏厚朴湯の適応病態で
・絞られるような痛みを伴う場合は、芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)
・じわじわ持続する重い痛みには安中散(アンチュウサン)と併用されます。
両方剤は胃食道逆流症(2)に記載しました。

ちょっと一言:(トピックス)

GERDNERDFD治療におけるPPIと漢方製剤

 現代科学医療におけるGERDNERDFDの第一選択薬はプロトンポンプ阻害剤(PPI)などの胃酸分泌抑制薬です。
 PPIで胃酸分泌を抑制しても軽減できない症状に対して漢方製剤が併用されています。
 半夏瀉心湯六君子湯平胃散茯苓飲半夏厚朴湯PPIと組み合わせる候補になります。
 それぞれの適応症状と使い分けを2回にわたって解説しました。

(2023年4月4日 改訂公開)


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