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症状と漢方薬

男性更年期障碍の漢方

1.いらだち、気うつ感を伴う男性更年期障碍に用いられる方剤

 男性更年期障碍は多様な不定愁訴を伴います。図1にストレスがうっ積して、いらだち、気うつ感、不安感、不眠などの精神神経症状を伴う男性更年期障碍に用いられる方剤をまとめました。
 なお図1にある陰萎(インイ)は勃起(ED)や性的不能やインポテンツに、遺精(イセイ)は不随意の精液の漏れや早漏傾向に相当します。

2.男性更年期障碍の不定愁訴に用いられる柴胡剤(サイコザイ)

 図1の上側に記載した4方剤は柴胡(サイコ:図2)を含みます。

  • 柴胡は、症状に応じて
  • ・不安感、無力感、動悸、不眠を軽減する竜骨(リュウコツ)や牡蛎(ボレイ)
  • ・いらだち、焦燥感、煩躁、不眠を軽減する山梔子(サンシシ)
  • ・のぼせ、怒り、焦燥感、頭痛、めまいを軽減する釣藤鈎(チョウトウコウ)
  • ・疲労倦怠感、意欲低下を軽減する人参(ニンジン)や黄耆(オウギ)、
などと組み合わされて、男性更年期障碍の不定愁訴に用いられます。

3.柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)とその関連方剤

 柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)は、精神的な陰萎(インイ:勃起ED)に用いられます。几帳面な人が挫折した時に発現する不安感、動悸、気うつ感、いらだち、不眠、高血圧傾向で血圧の変動を過剰に心配し悩む人に適します。

 柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)も柴胡牡蛎(ボレイ)を含み、物音に驚きやすく動悸のある人に適します。頭部の発汗や口の乾燥傾向があります。
 柴胡桂枝乾姜湯柴胡加竜骨牡蛎湯の比較は、かんしゃくの漢方(2.いらだちと抑うつ感)も参照してください。

 桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウトウ)は柴胡を含みませんが、柴胡加竜骨牡蛎湯と同じように竜骨牡蛎を含み、物音に驚きやすく自信を失って勃起を呈する人に適します。

 この3方剤は体力の余力や冷え症傾向の程度で使い分けられます(図3)。

4.柴胡を含む加味逍遙散(カミショウヨウサン)と抑肝散(ヨクカンサン)

 加味逍遙散(カミショウヨウサン)は、女性の更年期で頻用されますが、適応症は「更年期」であり男性にも使用できる表現になっています。
 本方は、冷えのぼせといらだち、抑うつ感や不眠など多様な愁訴に用いられます。かんしゃくの漢方(2.いらだちと抑うつ感)を参照してください。

 本方は気うつに対する柴胡(サイコ)といらだち、のぼせに対する山梔子(サンシシ)を含む方剤です(図4

 抑肝散(ヨクカンサン)は、柴胡と頭痛、怒り、めまいに対する釣藤鈎(チョウトウコウ)を含む方剤です。本方の適応病態は加味逍遙散に類似しますが、神経の高ぶり、興奮、いらだち、怒りの顕著な性急な人に適します。
 かんしゃくの漢方(1.いらだち)を参照してください。

~ちょっと一言:男性更年期障碍の漢方医療の前に

 ここでは、柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)を中心にして男性更年期障碍に伴ういらだち、気うつ感、不安感に用いられる方剤を整理しました。

 多様な症状が、更年期によるものなのか、それとも、それ以外の疾病によるものなのか、きちんと区別してから更年期の治療をはじめることをお勧めします。
 とくに男性更年期障碍とうつ病は判別がむつかしい場合があります。「死にたい」と考えるほど悩みが深いときには、心療内科を受診してください。

(2018年6月14日 公開)


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