病気の悩みを漢方で

１．やせ・栄養失調に用いられる人参（ﾆﾝｼﾞﾝ）

　やせ・栄養不足・栄養失調の予防と治療には「いろいろ食べる」食事療法と適度な運動が大切です。目標は、やせ気味の体格指数（BMI 20未満）を改善することです。

　漢方方剤は、食事療法と併用してください。食欲を増し、食べた物が「血となり肉となる」ように消化吸収機能を改善します。
　そのために用いられる主な生薬は、消化吸収機能を調える人参（ﾆﾝｼﾞﾝ）です。顔色不良などの貧血傾向を伴えば熟地黄（ｼﾞｭｸｼﾞｵｳ）と組み合わされます（図１）。

２．やせ・栄養失調に用いられる人参配合剤

やせ・栄養失調に用いられる主な人参配合剤を図２に示しました。

３．やせと栄養失調に用いられる主な人参配合剤の使い分け

　栄養失調を予防改善する主な人参配合剤の使い分けを図３に示しました。

　六君子湯（ﾘｯｸﾝｼﾄｳ）は、やせと栄養不足の当初の原因となる食欲不振を軽減する方剤です。機能性ディスペプシアの漢方を見てください。

　補中益気湯（ﾎﾁｭｳｴｯｷﾄｳ）は、やせと栄養不足になって疲労倦怠感、だるさに悩む状態に適します。フレイル（虚弱）の漢方（２．胃腸虚弱）を参照してください。

　十全大補湯（ｼﾞｭｳｾﾞﾝﾀｲﾎﾄｳ）は、栄養不足がさらに進んで顔色が悪く皮膚が乾燥した貧血傾向が使用の目安になります。
　本方に関しては、関連する人参養栄湯（ﾆﾝｼﾞﾝﾖｳｴｲﾄｳ）を含めてフレイル（虚弱）の漢方（３．顔色不良）も参照してください。

　なお、やせと脱毛に関しては、円形脱毛症の漢方（２．虚弱）で解説しています。

４．小建中湯（ｼｮｳｹﾝﾁｭｳﾄｳ）･･･中（ﾁｭｳ：おなか）を建てる

　小建中湯（ｼｮｳｹﾝﾁｭｳﾄｳ）は、中（ﾁｭｳ：おなか、胃腸）を建てる（丈夫にする）
方剤です。本方は食欲が低下し疲労しやすい人の腹痛に用いられます。
　とくに神経質で食が細く好き嫌いの多い子どもの疲労感や過敏性腸症候群の便通不定に用いられてきました。胃腸が弱く便通の定まらない成人の夏やせや疲労感にも用いられます。

　本方は、人参を含みませんが、芍薬（ｼｬｸﾔｸ）と甘草（ｶﾝｿﾞｳ）と膠飴（ｺｳｲ）で胃腸を調えます。
　膠飴は水飴ですので栄養（糖質）補給をする薬食同源の生薬です（図４）。

　小建中湯に関しては、漢方薬名の意味：建中湯類や便秘の漢方（５．小児の便秘）を参照してください。