病気の悩みを漢方で

１．脂漏性（ｼﾛｳｾｲ）湿疹の概要

　脂漏性湿疹は灰白黄色の鱗屑（ﾘﾝｾﾂ）を伴う乾燥性の湿疹です。皮疹は毛のはえぎわや眉毛に発症し「ふけ」が多くなります。皮脂の分泌が多い鼻のわき､耳の後ろや外耳道などにも発生します。

　治療の主体はステロイド軟膏です。またカビ（真菌）の一種が発症に関わっているので抗真菌外用剤を併用することもあります。

　漢方では十味敗毒湯（ｼﾞｭｳﾐﾊｲﾄﾞｸﾄｳ）が用いられます。慢性化して赤ら顔になり落屑やかゆみを伴う時には温清飲（ｳﾝｾｲｲﾝ）や柴胡清肝湯（ｻｲｺｾｲｶﾝﾄｳ 一貫堂方）の適応になります。

２．十味敗毒湯（ｼﾞｭｳﾐﾊｲﾄﾞｸﾄｳ）

　十味敗毒湯の配合10生薬を図１に示しました。

　図１の上段の生薬は祛風（ｷｮﾌｳ）発表（ﾊｯﾋﾟｮｳ）解表（ｹﾞﾋｮｳ）薬です。これは乾燥とかゆみを誘発する風邪（ﾌｳｼﾞｬ）を皮膚から発散させて取り除く薬能です。中段の川芎（ｾﾝｷｭｳ）と下段の生姜も同様の薬能があります。
　中段の３生薬は排膿薬（ﾊｲﾉｳﾔｸ）です。

　十味敗毒湯には桜皮（ｵｳﾋ）ではなく樸樕（ﾎﾞｸｿｸ）を配合した製剤もあります（図２）。

　図２に示すように桜皮と樸樕は原材料が異なり､薬能も少し異なります。しかしながら､どちらを含む製剤も皮膚科領域で同じように使用されています。

３．十味敗毒湯と併用される方剤

3.1）十味敗毒湯の適応領域を広げる併用剤

　消風散（ｼｮｳﾌｳｻﾝ）は湿潤傾向の皮疹がある時に併用されます。
漢方薬名の意味：消風散を参照してください。

3.2）十味敗毒湯に清熱効果を付与する併用剤

・白虎加人参湯（ﾋﾞｬｯｺｶﾆﾝｼﾞﾝﾄｳ）は乾燥傾向の皮疹患部に発赤や熱感があり､全身のほてりや口渴があるときに併用されます。

・黄連解毒湯（ｵｳﾚﾝｹﾞﾄﾞｸﾄｳ）は湿潤傾向の皮疹患部に発赤や熱感があり､いらだちや興奮を伴う時に併用されます。

3.3）十味敗毒湯の排膿効果を強化する併用剤

・排膿散及湯（ﾊｲﾉｳｻﾝｷｭｳﾄｳ）は化膿が顕著で発赤を伴う時に併用されます。漢方薬名の意味：排膿散及湯を参照してください。

　排膿散及湯は甘草の配合量が多く､この併用は甘草による副作用発現のリスクが高まります。甘草を含まない桔梗石膏（ｷｷｮｳｾｯｺｳ：図３）エキス剤を併用することもあります。

3.4）十味敗毒湯に滋潤効果を付与する併用剤

　四物湯（ｼﾓﾂﾄｳ）は乾燥傾向の皮疹とが顕著な時に併用されます。 乾燥皮疹を潤す四物湯は乾燥肌の漢方を参照してください。
　乾燥皮疹といらだちや抑うつ感など心身症傾向の全身病態があれば加味逍遙散（ｶﾐｼｮｳﾖｳｻﾝ）合四物湯を併用します。

４．温清飲（ｳﾝｾｲｲﾝ）とその関連方剤

4.1）温清飲（四物湯＋黄連解毒湯）は熱感､のぼせを伴う長引く乾燥傾向の脂漏性湿疹に用いられます。
湿疹･皮膚炎の漢方（３.乾燥皮疹）を参照してください。

　本方は十味敗毒湯と併用されることもあります。温清飲と十味敗毒湯を併用すると柴胡清肝湯の方意に近くなります（図４）。

4.2）柴胡清肝湯（一貫堂方 15味）も乾燥傾向の脂漏性湿疹に適します。

　湿疹･皮膚炎の漢方（４.湿潤と乾燥）を参照してください。