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症状と漢方薬

骨粗鬆症の漢方


1.骨粗鬆症(コツ ソショウ ショウ)の概要

 骨粗鬆症は骨の強度が低下し骨折の危険度が高い疾患です。骨の強度は骨のカルシウム量(骨密度)と骨内のコラーゲン量(骨質)が関係します。
 骨粗鬆症は加齢に加えて多様な疾患や生活習慣で発症します(図1)。


2.骨粗鬆症の治療と予防・養生の概要

 骨粗鬆症の治療には、
 ・骨形成促進薬: 骨芽細胞 (コツガサイボウ)による骨の形成を促進する薬。
 ・骨吸収抑制薬: 破骨細胞 (ハコツサイボウ)による骨の吸収破壊を抑制する薬。
が用いられます。これらの医療用薬は病態・検査値に応じて使い分けられます。主治医や薬剤師の先生から説明を受けてください。

 骨粗鬆症の予防は、図1に示した運動食事など生活習慣の見直しが基本です。「ちょっと一言」を参照してください。

3.骨粗鬆症の漢方治療

 検査で病態が明らかになれば作用機序の明確な西洋薬による骨の吸収や形成を調整する治療薬が使用されます。この薬理で漢方製剤を選ぶことはできません。

 漢方は薬理や病名ではなく症状を診て治療薬を選びますので、手がかりとなる特有の症状の乏しい骨粗鬆症の治療は生薬を選ぶのが困難です。
 そこで、足腰の衰えた高齢者、更年期の婦人、体格のきゃしゃな女性など骨粗鬆症の危険因子を有する人の全身病態を診て予防的に治療します。漢方医療は、

  腎虚(ジンキョ)加齢や慢性疾患による全身機能とくに運動器機能の衰え
  気虚脾胃気虚:ヒイキキョ)消化吸収や新陳代謝機能の低下
  血虚(ケッキョ)気虚の結果としての循環・栄養維持機能の低下

を診て治療薬を考えます。運動療法や食事療法を補完するのが狙いです。

4.高齢者の転倒を予防する補腎剤(ホジンザイ)

(ゴシャジンキガン)は足腰の衰えた腎虚(ジンキョ)の高齢者(図2)の転倒を予防する目的で用いられます。
 本方は補腎薬熟地黄(ジュクジオウ)附子(ブシ)牛膝(ゴシツ)を含み足腰の衰え冷え痛みしびれむくみに用いて運動療法を支援します。胃腸虚弱ではない人に適します。
漢方薬名の意味:牛車腎気丸を参照してください。

 牛車腎気丸は9ヶ月投与後の骨量が初診時と比べて減少しなかった(現状を保った)という臨床報告があります。
 本方に含まれる八味地黄丸(ハチミジオウガン)は細胞培養実験で骨芽細胞の分化・成熟や骨形成を促進する作用が報告されています。


大防風湯(ダイボウフウトウ)は牛車腎気丸熟地黄附子牛膝が共通です。四物湯(シモツトウ)で補血活血し、人参黄耆(オウギ)で補気(ホキ)が追加され胃腸虚弱にも適応できる内容になっています。
 大防風湯牛車腎気丸より栄養状態が不良で筋肉が減少し歩行障碍のある時に適します。両方剤は関節リウマチ(2)で比較しています。

5.更年期女性の骨粗鬆症を遅らせる漢方製剤

 更年期婦人の骨粗鬆症予防にはホルモン補充療法や活性型ビタミンD3誘導体(エルデカルシトール)が投与されます。

(ニンジンヨウエイトウ)は消化吸収機能を高めて栄養療法を支援する補気剤です。
 また熟地黄当帰を含み更年期婦人の基本病態を改善する補血活血剤でもあります。
 本方は体力が低下疲労倦怠感貧血傾向空咳息切れ冷え症図3)に適します。
漢方薬名の意味:人参養栄湯を参照してください。

人参養栄湯が貧血傾向の骨粗鬆症患者の骨密度の低下を改善した臨床報告があります。


(カミキヒトウ)は、補気補血安神剤(アンシンザイ)の帰脾湯に柴胡と山梔子を加味した方剤です。虚弱で栄養不足気味の人の不安や不眠や抑うつに用いられます。

 加味帰脾湯には骨粗鬆症の女性の骨量を増加させ、赤血球の増加更年期指数を低下させた報告があります。
日本東洋医学雑誌. 1998; 49: 59-66

(サイコカリュウコツボレイトウ)は婦人更年期神経症に用いられます。本方には骨粗鬆症の予防治療が期待できる臨床報告があります。

柴胡加竜骨牡蛎湯が不定愁訴を有する婦人更年期障碍患者の不定愁訴の改善に加えて骨量の減少を抑制した臨床報告があります。

牡蛎(ボレイ:炭酸カルシウムを主成分とするカキの貝殻)

 不定愁訴に用いられる柴胡加竜骨牡蛎湯柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)や桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)には牡蛎(ボレイ:炭酸カルシウムを主成分とするカキの貝殻)が含まれています。
 なおカルシウムの補給はカルシウム製剤や骨や軟骨成分を含むサプリメントが確実ですが、牡蛎を含む方剤はカルシウムを補充する一助になるでしょう。

6.若い女性の骨粗鬆症を予防する漢方製剤


 一生で最も骨の量が多いのは20歳から30歳と言われています。図4のような若い女性の骨格脆弱(痩せすぎ)は骨粗鬆症の危険因子です。

 図4の冷え症傾向の女性には補血利水剤当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)の適応が考えられます。
自律神経失調症(4)を参照してください。

 骨粗鬆症を予防する観点からカルシウムなどの消化吸収機能を高めるために人参湯(ニンジントウ)を併用することが適切でしょう。

 図4の人の生理痛や胃痛腹痛には牡蛎を含む安中散(アンチュウサン)が適します。

ちょっと一言:(トピックス)

骨粗鬆症を予防する生活習慣の見直し

骨を強くする栄養素を多く含む主な食品
 カルシウム(目標800mg/日、乳製品、ひじき、小松菜)、ビタミンD(カルシウムの吸収促進。目標20μg/日。日光浴で皮膚で合成。鮭、しいたけ)、ビタミンK(骨の形成を促進。目標300μg/日、納豆、小松菜)。

 漢方の補気剤は消化吸収機能を調えて食事療法を補完します。
 食事療法日光浴を含む運動療法と組み合わせることが大切です。
 運動は適度の刺激が骨形成を促進し、骨周辺の筋肉量を維持し、体のバランス感覚や反射神経を良くして転倒を防ぎます。

(2021年7月13日 公開)


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