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御影雅幸先生の漢方あれこれ

カゼと漢方(2)

慢性期(亜急性期)

 カゼを引いて3~4日経過すると,原因である風邪(ふうじゃ)は体表から次第に内部に侵入し,亜急性期に入ります。熱は下がりますが,食欲がなくなり,咳が出始めます。色のない薄い痰がたくさん出る咳がある時期には小青龍湯など「麻黄」が入った処方が選択されます。
 痰が少なく強い咳があり,体力があって痰が黄色く赤ら顔で便秘気味の人には大柴胡湯,痰は白く便秘しない人には小柴胡湯,まだ頭痛や逆上せが残っている人には柴胡桂枝湯です。

 さらに日数がたって慢性化し,虚証体質でむせ返るような強い咳がでて,暖まったり夜間にひどくなる人には麦門冬湯,実証体質で激しい咳が胸に響いて痛むような場合には麻杏甘石湯が適することもあります。

 多くの場合この時期でカゼは治りますが,体力がない人ではさらに長引いてこじれる場合があります。
 元気がない咳が続く場合には竹茹温胆湯,元気が出ないですっきりしない場合には補中益気湯,真武湯などが選択されます。これらの処方以外にもカゼの治療に用いられる薬方は数多くあります。

 漢方薬はこのように患者さんの体力や症状によって服用すべき処方が細かく変わり,また同じ病人でも病気の時期(進行程度)は刻々と変化しますので,それにつれて服用すべき薬も変わります。カゼの場合は,数日間服用を続ける漢方薬はないと心得ましょう。

 また,是非知っていただきたいことは,ここで紹介した漢方薬はカゼ症候群のみに使用される処方ではないということです。各処方が対処できる病名は多種にわたります。同病異治,異病同治は西洋医学にない漢方の特徴です。(→同病異治と異病同治

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