漢方を知る

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御影雅幸先生の漢方あれこれ

漢方薬と和漢薬と民間薬

 日々利用される言葉は生きていますから,どんどん変化します。とは言え,AさんとBさんが同じ用語を違った意味で使うとすれば,話は通じなくなります。とくに健康にまつわる用語が誤解されてはたいへんです。今回は漢方に関する言葉の定義が話題です。

 よく誤解されているのは「漢方薬」です。薬(くすり)とは病気の治療あるいは予防を目的に使用するものですから,「漢方薬」とはすなわち葛根湯などの処方を意味するはずで,その中の葛根や麻黄など個々の薬物を漢方薬というのは正しくないでしょう。なぜなら,漢方ではそれらが単独で治療に使われることがないからです。
 個々の薬物は,専門的には以前は「漢薬」と呼ばれていましたが,これでは中国の民間薬も含んでしまいますので,最近ではより狭義に「漢方生薬」と呼んでいます。なお,中国では薬材と呼んでいます。

 「和漢薬」は,本来は「和薬」と先述の「漢薬」を合成した用語ですから,日中両国産の漢方生薬の意味でしょうが,最近では単に「生薬」の意味にも使用されています。なお,和薬には桜皮など日本で開発された漢方生薬が含まれます。

 「民間薬」は文字通り,民間療法で使用される個々の薬草や生薬です。民間療法では一般に1種類の生薬だけが使用されることが多いので,正しい語法でしょう。
 一方,漢方生薬でも例えば薬用人参酒のように民間的に使用される場合には,薬用人参は民間薬ということになります。これは食用の玄米が漢方生薬「粳米」に,またアズキが「赤小豆」になるのと同じで,用途の相違で分類される範疇が変わるからです。

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