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素材解説 病気と薬の関係とは・・・

 
   

免疫

免疫
過労ストレス、過剰な飲酒喫煙などの生活習慣から低下する免疫力。
 

人参

 ニンジンには野菜として食用されるセリ科のキャロット(学名はDaucus carota var. sativa)と、日本薬局方に収載されているウコギ科のオタネニンジン(学名Panax ginseng)がある。

 野菜のニンジンは春まき栽培される西洋種と、秋まき栽培の東洋種に大別される。

 日本へは胡羅蔔(コラフク)という名前で17世紀頃に東洋種が伝来、順化され、19世紀末に西洋種が導入されて食用に供されるようになった。その味が当時の日本人の好みに合わなかったことから、流通の促進のために薬用のオタネニンジンの名に似せてニンジンという名称で市販したことが、今日の名称の混乱を招くことになっている。

 最近、野菜のニンジンにβ-カロテン、リコピン、アントシアンなどの色素成分が含まれており、抗酸化作用、発がんや動脈硬化の予防効果などが報告され、機能性のある食品として健康食品素材としても利用されている。

 一方、オタネニンジンは、漢方処方や生薬製剤に配剤されるなど、日本薬局方に収載されている生薬であるにもかかわらず、厚生労働省の定めた食薬区分では、効能効果を標ぼうしない限り食品としての使用も認められている。

 このため、健康食品素材としても繁用されており、用途の面からも混乱を生じている。


 ここではオタネニンジンを基源食物とする薬用の二ンジンについて紹介する。

 オタネニンジンは、中国の長白山(白頭山)付近を原産とする多年性草本で、今日では吉林省にわずかに野生するにすぎないが、吉林省などの中国東北地区や朝鮮半島で広く栽培されている。栽培には土作りに2年を要し、播種後5~6年目の地上部が枯れる8~9月ごろに掘り上げる。4年目ごろから根が太くなるので収穫されることもあるが、品質は6年根がよいといわれている。

 日本へは739年に渤海国の使者が献上品として持ち込んだのが最初といわれている。渤海国をはじめ、高麗や新羅といった朝鮮半島の諸国では、国家儀礼の最高の贈物としてニンジンが用いられており、ニンジンが国家財政や外交上で重要な位置を占めていた。正倉院の献上品目録(種々薬帳)の中で、ニンジンは約120・納められたことになり、甘草に次いで最も繁用されていた生薬であることが分かる。

 日本での本格的な栽培開始は江戸時代の八代将軍徳川吉宗のころに始まり、1728年に日光御薬園で国産化に成功している。以来、日本でのニンジン需要のすべてをまかなうとともに、高級ニンジンとして台湾や米国に輸出されていたが、最近になって安価な韓国や中国産が輸入されるようになり、国産品の市場性は失われている。

 ニンジンは中国伝統医学漢方医学における生薬の原典といわれている薬物書「神農本草経」に上品として収載され、不老延年の薬、神仙薬として東洋の伝統薬の中で最も珍重されている生薬の一つといえる。中国名の人参は、その根が真っ白でしばしば人の姿に似て分岐していることから名付けられている。

 オタネニンジンの新鮮根をそのまま乾燥したものを生干人参、周皮や細根を除いて乾燥してものを白参(直参、曲参といわれるものもある)、軽く湯通しした後に乾燥した御種人参などがあり、これらを日本薬局方ではニンジン(Ginseng Radix)とまとめて記載している。

 一方、新鮮根を長時間蒸した後に乾燥したものをコウジン(Ginseng Radix Rubra)と呼び、日本薬局方ではニンジンと区別して収載している。

 中国では生干人参を硫黄でいぶして調製する生晒参や、湯通し後に硫黄でいぶし、ついで砂糖水で処理した糖参など加工調製法(修治や炮製といわれる)の違いによる種々のニンジン類の存在が知られている。いずれのニンジン類でも、方剤に用いられる際には残茎(芦頭)は除去される。その理由は、残茎部に催吐性があるためといわれている。

 ニンジンやコウジンの伝承薬効としては、補精、強壮、鎮静、抗糖尿病および胃腸の衰弱に基づく新陳代謝機能低下の改善が知られており、保健強壮薬や健胃薬として漢方方剤や家庭薬に配剤されるほか、いわゆる健康食品などの素材として幅広く使用されている。

 含有成分としては、ダンマラン型トリテルペンサポニンのginsenoside Rb,Rg類を主成分に少量のオレアナン型トリテルペンサポニンのginsenoside Roなどのほか、アセチレン類、セスキテルペンなどが知られている。

 著者らは修治の過程における成分変動について、オタネニンジンの新鮮根、白参および紅参について比較研究したところ、新鮮根や白参などのニンジンでは、水溶性の高いmalony-ginsenoside Rb1,Rb2,Rc類などが特徴成分として存在していた。

 またコウジンには、ginsenoside Rh1,Rh2,Rg3などの部分的に加水分解された配糖体やアセチレン化合物panaxytriolが存在することを見いだした。


 ニンジンの薬理学的研究は、日本、韓国、中国の研究者を中心に非常に盛んに研究され、生薬の中で最も多く膨大である。

  • 自立神経系ホルモン系機能に関しては、含水エタノール抽出エキスは大脳皮質を刺激してコリン作動性に働き、インスリン作用の増強、呼吸促進、ストレスに対する副腎皮質機能の強化作用を示す。含有成分のginsenoside Rb,Rc群は中枢神経系に対して抑制的に、Rg群はむしろ興奮的に作用する。また、学習、記憶の改善作用を有する。
  • 強壮作用に関しては、メタノールエキスがラット遊泳試験においてグリコーゲン量および血糖値の低下、乳酸値の上昇を抑制する。
  • 代謝系に関しては、RNA合成能、タンパク合成能、血清タンパクの合成、糖および脂質代謝を促進する。
  • 循環器系に関しては、その70%メタノールエキスは血管拡張作用、血小板凝集抑制作用、線溶活性化作用や赤血球変形能の亢進作用を示す。これらの作用にginsenoside Rb1,Rg1,Roが有効成分である。
  • 免疫系に関しては、マクファージの活性化作用、NK細胞の活性化作用、抗体生産能の促進作用を示す。また、オレアナン型サポニンのginsenoside Roには抗炎症作用、抗アレルギー作用、抗肝炎作用も報告されている。

 そのほかに、コウジンの加工過程で産生されるコウジン特有のサポニンのsinsenoside Rh1やRh2, 20(S)-ginsenoside Rg3には腫瘍細胞の転移抑制作用、アポトーシス誘導作用、赤血球変形能亢進作用、血小板凝集抑制作用が報告されている。

 欧米においても臨床データをもとにニンジンの有効性は高く評価されている。ドイツにおけるCommission Eのような公定委員会でも、ニンジンは疲労や衰弱に対する強壮薬および体力の減退、集中力の低下といった症状の改善薬や疲労回復薬として有用であると報告している。

 また、WHOの報告書においても、Commission Eのニンジンについての内容は臨床データから再確認されたと述べており、精神的および肉体的な能力を強化するとしている。

 このようにニンジン類は、健康の維持、病気予防および病気回復の促准に最も適した薬用食物の一つと考えられる。

 なお、副作用の記載はないが、多量摂取によって興奮、下痢、不眠、高血圧、出血などが認められたともいわれており、高血圧の人や妊婦といった人達の服用はさけた方がよいと思われる。


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