天然素材サプリ

　このキノコはアメリカ南部からブラジルにかけて分布しており、和名をヒメマツタケまたはカワリハラタケといわれている。

　食用とされるマッシュルーム(シャンピニオン)の近縁のキノコで、1960年代にブラジルの自生種の胞子が日本に持ち込まれ、栽培されるようになった。しかし、歯ごたえはよいが美味とはいえず、日持ちが悪く腐敗しやすいなど、食用キノコとして劣るため食材として市場に出ることはなかった。その後、健康食品の素材として生産されるようになり、キノコ関連健康食品の中では最も知名度が高く、年間200～300億円の市場を形成しているといわれている。

　アガリクスの用途としては、ほとんどが免疫力強化の目的で用いられ、抗がん効果を期待させる健康食品に利用されている。その品質としては、子実体は路地栽培されたものもあるが、多くは菌床栽培品である。また、菌糸体については、タンク培養されたものが多く流通している。

　アガリクスの含有成分および抗がん作用としては、子実体から多糖類としてFlo-a-β[分子量50万、β-(1→6)分岐を持つβ-(1→3)-D-グルカン]、FA-a-α(分子量200万、酸性ヘテログルカン)、FA-a-β(分子量200万、酸性ヘテログルカン)、FⅢ-2-b[分子量1～5万、β-(1→6)-D-グルカン-タンパク質複合体]、FⅣ-2-b(分子量1～5万、ヘテログルカン-タンパク質複合体)、AB-P(グルカン-タンパク質複合体)が分離されている。

　菌糸体の多糖類としては、ATOM(分子量10～1,000万、グルコマンナン-タンパク質複合体)、菌糸体培養ろ液の多糖類としてはAB-FP(分子量10～1,000万、マンナン-タンパク質複合体)が分離されている。また、RNA-糖-タンパク質複合体のFA-2-b-β(分子量1万)やレクチンNA-aff-ABLとA-aff-ABL(分子量64,000、糖タンパク質)のほかに、エルゴステロール誘導体およびブラゼイスピラン、プロトブラゼイスピラン誘導体のblazeispirol A,XおよびYが単離されそれぞれ構造が決定されている。アガリクスの多糖類や核酸複合体は、腹腔内投与または経口投与でSarcoma180マウスに顕著な宿主介在性抗腫瘍効果を示すといわれている。

　しかし、アガリクスの抗しゅよう活性の知見は、いずれも公開特許公報で述べられているにすぎず、臨床治験の報告も十分でないように思われる。

　アガリクスは「レーガン元大統領が治療に使った」とか「がんの特効薬」などと喧伝されており、抗がん作用のイメージが先行した健康食品ともいえ、今後の詳細な抗腫瘍活性の学術論文や臨床治験成績が公表されることを期待したい。

　元来、シイタケ、エノキダケなどの食用キノコ類は、伝統医学において薬用とされることはなく、さしたる薬効も伝承されてなかった。

　1960年代になって、キノコ類に抗腫瘍作用のあることが国立がんセンターなどから報告された。すなわち、マウスの腹部にSarcoma 180固形がん細胞を移植し、24時間後からキノコ類の熱水抽出エキスを10日間にわたり腹腔内投与(200mg/kg)した。移植後一週間ごとに腫瘍の大きさを測定し、5週間後に腫瘍を摘出して重量を無処理の対照群と比較して抑制率を明らかにした結果、メシマコブなどの薬用菌類をはじめ、シイタケ、エノキダケ、ナメコなどの食用キノコにも顕著な抗腫瘍効果のあることが判明した。その後、これら菌類の抗腫瘍活性成分として多糖体類が分離された。

　今日、抗がん剤として用いられているキノコ由来の医薬品としては、次の3種が知られているが、いずれも当初認可されていた単独使用での抗がん効果はないことが判明し、他の抗がん剤との併用時の効果のみ認められている。

1. レンチナン(lentinan)
   

   (Fig.7 lentinanの科学構造)

   マツタケ科シイタケの食用部分である子実体を熱水抽出して得られる高分子glucan(D-glucoseから成る多糖体)で(Fig.7)に示す構造を有する。生体防御機構の賦活により、抗腫瘍活性を発現するとされ、胃、大腸がんに対して化学療法剤との併用で有効。手術不能または再発胃がん患者に対するテガフール経口投与との併用による生存期間の延長が認められている。
2. シゾフィラン(sizofiran)
   シメジ科スエヒロタケの菌糸体が培養ろ液中に産生する分子量45万程度の多糖体で、3個のβ-(1→3)-D-glucopyranosyl部分に1個のβ(1→6)-D-glucopyranosyl部分が結合した四糖の繰り返し構造を有する。子宮頸がんにおける放射線療法の直接効果を増強する作用があり、肺がんへの適用拡大が進められている。
3. PS-K(クレスチン)
   サルノコシカケ科カワラタケの菌糸体から得られ、β-1,4-D-glucanが主体の多糖体で、タンパク質と結合して存在する(糖タンパク)。消化器がん、肺がん、乳がんに適用され、胃がん、結腸および直腸がん患者における化学療法との併用による生存期間の延長と小細胞肺がんにおける化学療法との併用による奏効期間の延長が認められている。

エキナセア

人参

アガリクス