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御影雅幸先生の漢方あれこれ

生活習慣病と漢方

 心臓病,脳血管障害,糖尿病,果てはガンも昨今は生活習慣病と考えられるようになっています。「ちりも積もれば山になる」「石の上にも3年」,些細な物事も毎日積み重なれば大事に至るということです。
 生活習慣病は日々の良くない習慣の積み重ねが引き起こす病気です。運動不足,不規則な生活,中でも問題になっているのが食習慣です。薬膳の項で書きましたように,食材はすべて何らかの薬効を有しています。生活習慣病は同じようなものを毎日摂り続けることによって引き起こされます。塩分の過剰摂取と高血圧の関係はよく知られています。

 例えば,血管が詰まる病気として心筋梗塞,脳梗塞,エコノミー症候群の名で知られる肺栓塞などがあります。いずれも血液が血管内で固まってできる血栓が原因でおこり,詰まる場所が異なるだけです。漢方ではこうした血栓ができやすくなった病態や何らかの原因で血流が悪くなった病態を「お血」と呼びます。
 治療には大黄,桃仁,牡丹皮などといった駆お血薬と呼ばれる生薬が入った処方が用いられます。お血は打撲や捻挫などによって急性的にも起こりますが,慢性的なお血は血流を悪くする何らかの生活習慣に基因していることが多く,その習慣を断ち切る必要があります。

 過剰な肉食もその原因の一つと考えられています。塩分の過剰摂取を改善せずに血圧を下げる薬を服用しても根治には至らないのと同じで,誤った食習慣を改善せずに漢方薬だけで治療しようとするのは正しくありません。

 生活習慣病はあくまでも生活習慣の改善によって治療すべきもので,漢方薬に限らず,クスリは治癒を速める補助的手段と心得るべきでしょう。

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