現在日本ではオミクロンBA.5株による第7波が猛威をふるっており、東京都では連日、感染者数が3万人前後で推移し更なる増加傾向にあります。多くの方は入院できず自宅療養を余儀なくされています。また、オミクロンBA.5株によるCOVID-19は多数が軽症と言われますが、激しい咽頭痛や高熱などの症状に苦しめられる方が多くいらっしゃいます。
COVID-19の予防・治療において、漢方薬がもたらす効果は実証されております。
予防の研究では、葛根湯と補中益気湯の内服から28日後の段階でT細胞やNK細胞の明らかな増加が確認され、また活性化受容体NKp46,NKp30、制御性受容体NKG2Aのリンパ球も増加しました。つまり、免疫増強、抗体産生促進の作用をもち、免疫制御、過激な炎症の抑制機能も強化されていることが窺えます。1)
また、治療の研究としては、当研究所所長の≪新型コロナウイルス感染症における漢方治療39例報告 ≫と≪第5波デルタ株による新型コロナウイルス感染症20例の漢方治療報告≫があり、いずれも良い治療効果が見られました。2)3)
(出典:Ogawa-Ochiai, K. et al. Front. Pharmacol. 2021, 12: 766402.)
漢方薬を用いた効率の良い予防と治療をより多くの方に提供するため、富士堂の研究成果をまとめ、ここに第9版として公開いたしました。コロナ感染の予防、治療、後遺症のケアに漢方・漢方薬の選択肢があることを広くお伝えできればと思います。
また、新型コロナウイルス感染者のため、富士堂漢方薬局ではオンラインで漢方相談治療を実施しております。お困りの場合は是非ともご相談ください。
オミクロンBA.5流行下の新型コロナウイルス感染症の漢方予防治療
(COVID-19に関する研究 第9版)
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予防
①一般の方:
葛根湯+補中益気湯
②胃腸がそれほど強くない方(葛根湯が合わない方):
五積散+補中益気湯
③抗がん剤、ステロイド剤や免疫抑制剤などで免疫が低下している方:
麻黄附子細辛湯+補中益気湯、真武湯+補中益気湯、十全大補湯
治療
①急な寒気、高熱、無汗、顔色真っ青:
麻黄湯
②悪寒、高熱、頭痛身重、口渇・煩躁・咽頭激痛で食べられない:
柴葛解肌湯
③寒気、微熱、頭痛、軽い咽頭痛:
葛根湯+桔梗石膏
④微熱、怠さ、吐き気、下痢、腹痛、冷え:
藿香正気散、附子理中湯
⑤微熱、疲労感が強く起きられない、他の症状は軽い:
麻黄附子細辛湯、真武湯
⑥微熱、解熱後も長引く咳、痰、夜寝づらい:
竹茹温胆湯(加味温胆湯、麦門冬湯)
下記の状況があればさらに併用
⑦脱水(解熱剤により発汗が多い、水が飲めない、食事もとれない)によるだるさ:
生脈飲を併用
⑧高熱、呼吸困難、頭がぼーっとする、意識低下:
カイキョー(牛黄)、感応丸を追加
⑨壊病(解熱剤を繰り返し使用し発汗しすぎて、なお熱が下がらない、吐き気・嘔吐、食欲が全くない、疲労倦怠が強い):
桂姜棗草黄辛附湯を併用
⑩血栓傾向:
冠元顆粒か桂枝茯苓丸を併用
これらは傾向を示すものであり、体質により適合するものが異なる場合があります。漢方薬を服用する際は専門家の指導のもとで正しく使いましょう。富士堂では来店相談以外にもオンライン相談 や宅配も承っております。お困りの方はお気軽にお問合せ くださいませ。
≪参考文献≫
1)Ogawa-Ochiai, K. et al. Immunological and Preventive Effects of Hochuekkito and Kakkonto Against Coronavirus Disease in Healthcare Workers: A Retrospective Observational Study.Front. Pharmacol. 2021, 12: 766402
2)許志泉:新型コロナウイルス感染症における漢方治療39例報告.漢方の臨床 第67巻第9号(2020)p.953-963
3)許志泉:第5波デルタ株による新型コロナウイルス感染症20例の漢方治療報告.日本東洋医学雑誌、第73巻、別冊号、2022年:p.208
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