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新生活が始まり、増えていくのがお酒の席。
花見。歓迎会。親睦会。ノミニケーション。

二日酔いに服んでおきたい漢方薬と言えば、
有名なのが五苓散と黄連解毒散です。
二日酔いに用いる市販薬の多くも、
この漢方薬や、その配合生薬がベースになっており、
現代でも、二日酔いが漢方薬頼みな点は、感慨深く感じます。
(ただし、二日酔い予防にも効くか?と言えば、それほど効果的でもない気がします)

五苓散や黄連解毒散は二日酔い症状の緩和に用いる事ができる漢方薬です。
けれど、それらの漢方薬が「二日酔い症状の緩和」を目的に
作られたものかと言えば、全くそうではありません。

五苓散は突発的な水毒症状(=体液の吸収・溢出障害)に、
黄連解毒湯は、急性の熱毒症状(=血管拡張による充血障害)に向けた漢方薬です。
二日酔い(=アルコール障害)は、水毒症や熱毒症の一形態に過ぎず、
五苓散/黄連解毒湯はそれ以外の水毒症状/熱毒症状にも用いることができます。

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早い話が、これらの漢方薬は一種の「解毒薬」に相当します。
ただし、アルコールの存在そのものが、水毒とか熱毒という訳でありません。
もちろん深酒すれば、人は水毒&熱毒に冒されてしまう訳ですが、
同じアルコ―ルの摂取量でも、それで水毒・熱毒に及ぶかどうかは、また別の話です。

最近、アルコールに弱くなった。そう感じるようになったのは、
アルコールが水毒・熱毒に及びやすい(=そういう体の状態に陥っている)サインです。
そういう状態をしばしば、「肝臓が疲れている」と表現しますが
それはまさに、体内に水毒・熱毒が蓄積した状態を意味しています。

体内に蓄積した水毒・熱毒まで、五苓散&黄連解毒散が対応してくれるかどうか。
そこにはやはり限界があります。
それこそ、五苓散&黄連解毒散は、肝臓の疲れを回復する漢方薬ではありませんから。
その場合には、同じ五苓散ベースの漢方薬でも、茵陳五苓散や柴苓湯、
また同じ黄連解毒散ベースの漢方薬でも、竜胆瀉肝湯などに一服の価値があります。

人の体は様々な性質、色々な物質の存在を通じて、バランスを保っています。
同じバランスでも、単独(=1個)の存在で保たれる関係よりも、
複数(=例えば100個)の存在で保たれる関係の方が、安定は得やすくなります。

一点の存在だけでバランスを保つ関係は、
その一点が正常である限り、バランスは保たれるという長所がある反面、
その一点に不具合が生じると、途端にバランスが崩壊するという短所を持ちます。
いわば、針の上でバランスを取る、とてもリスキーな関係です。

一方で、100個の存在でバランスを保つ関係は
1個の存在に不具合が生じても、残り99個でバランスを取れば良いので、
バランスが崩れにくいという長所がある反面、
一旦崩れたバランスは、1個、2個の不具合を改善しても整いにくいという短所を持ちます。
(=最悪の場合、過半数の51個にアプローチを行わないと、バランスは正常に回復しません)

1個の存在で支えるバランスと、100個の存在で支えるバランス。
同じ1個の存在でも、与える影響の大きさは、単純に考えれば100倍も違う訳です。
逆に考えると、100個の存在で支えるバランスには、
個々の影響・不具合が緩和される状態、ある種の曖昧さが存在しています。

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人の体は、ただ1個の存在だけでバランスを取っている訳ではありません。
自律神経系や内分泌系を整えても、それでバランス全体が整うという訳でもありません。
けれど一方で自律神経系や内分泌系も、
ただ1個の存在だけでバランスを取っている訳ではありません。
わかりやすく言うと、人のバランス全体が複数(例えば100個)の要素で成り立つ場合、
自律神経系や内分泌系もその一つには過ぎず、
けれどその自律神経系のバランスもまた、
複数(例えば100個)の要素で成り立つならば、
人のバランスは都合、100×100=10,000個の存在で成り立つ訳です。

「10,000個の存在でバランスを保つ」と言えば、凄く複雑に感じます。
けれど、「10,000個の存在で保つ存在は、ただ一つのバランス
と見ると、凄く単純に感じます。

10,000個の存在を1個に束ねると、やるべき事はその1個に限られます。
抽象的な話に聞こえると思いますが、複数の生薬を一つの漢方薬に集約させ、
処方として成立させることには、そういう意図・作用があるのでは?
と感じずにはいられません。

新しい生活環境。新しい職場。新しい学校。新しい対人関係。
春の神経症は、そうした存在を背景に
ストレス障害として発生するケースが増えています。
けれど一方で、春は気の緩みから、
自律神経系の不安定さが増える(=安定性が欠けやすい)時期でもあります。
精神面が不安定なところに、上乗せの形で緊張やストレスが伴う。
そうして、反応が大きくなるのが、春の神経症の実態です。

ただし、ストレスが存在する事=悪行ではありません。
「良い緊張感」という表現があるように、
新生活に対する期待感は、プラスの要素をもたらします。
(逆に、不安が強くなると、マイナスの効果が強くなりますが…)
精神面が不安定なところ(=自律神経系が不安定なところ)に、
良い緊張感が加わることで、安定性が補完されるようになる訳です。
(逆に、悪い緊張感が加われば、更なる不安定に及びますが…)

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けれど一方で、ストレス(=刺激)を支えに安定性を保ち続けていると、
その刺激が消失した途端、安定性が大きく揺らいでしまう場合があります。
そういう状態は、「燃え尽き症候群」とか「五月病」と呼ばれますが、
強く偏った刺激ほど、それだけに頼ると、逆に安定性を欠くリスクは高まります。
また、そうした存在に頼って安定させるほどに、
体には余分な力がかかっていく(=力んでいく)ようになります。

漢方では、体の様々な安定性(不安定性)は、
①本来持っている素養(=裏側の気)が
②外部から及ぶストレス・刺激(=表側の気)に感化され、発揮されると考えます。
自然な状態では、「表側」と「裏側」は互いに支え合い、高め合う相乗的な関係にあります。
けれど、そこに何らかの理由で、壁や隔たりが生じると、
本来あるべき繋がりが失われ(=表裏の不和)、
ストレス障害、神経症といった病態を招くようになります。

春の神経症に服んでおきたい漢方薬とは即ち、
表裏の不和を防ぎ、調和を高める漢方薬を意味します。
それには例えば小柴胡湯や柴胡桂枝湯、桂枝加芍薬湯
あるいは柴胡疎肝湯や逍遥散などに一服の価値があります。

春の訪れは、しばしば心身に緩みを及ぼします。
緩むことで体は温まり、心は開放的になりますが、
その一方で、寒い時期の緊張が解けることで
妙に浮ついたり、本来の安定を欠いたり、
弛(たる)むことで、滞りを招く面もあります。

体の緩みは、春に生じる自律神経系の乱れにも影響を及ぼします。
春に緩むこと自体は、副交感神経を優位にしますが、
その事は逆に、不意の瞬間(突発的)に交感神経が優位になるリスクも含んでいます。
そうして、自律神経の揺れ幅(落差)が大きくなり、
波風のように揺れ動いたり、舞い上がりやすくなる。
そうして、自律神経系は本来の安定性が弱くなり、
不安定さが増長していきます。

漢方では、緩みはある種の気虚として見立てられます。
気虚=虚弱とか元気がない、エネルギー不足と一般的には解釈されますが、
虚というのは、文字通り「虚ろ」な訳ですから、
本来持っている安定性が虚ろ(=不安定)という面を反映する訳です。

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この話は、天秤に例えて考えると、わかり易いと思います。
大きな(=物が沢山載せられる)天秤と、小さな(=物が少ししか載せられない)天秤。
同じ物を載せた場合、小さい天秤の方が揺れは大きくなります。
けれど一方で、同じ大きさ(=載せられる量が同じ)の天秤でも、
腕が長いものと短いものでは、腕が長い方が揺れは大きくなります。
揺れが大きくなる=不安定さが増すという点では、
天秤が小さいことも、そして腕が長いことも同じく「虚」という訳です。

春の緩みに服んでおきたい漢方薬とは即ち、
体の安定性が虚に陥るのを防ぐ漢方薬を意味します。
それには例えば、苓桂朮甘湯や桂枝加黄耆湯、香蘇散
あるいは補中益気湯などに一服の価値があります。

期待と不安は表裏一体。
良くも悪くも、心煩い(心患い)を起こすという点では同じですが
期待と不安では、煩いの方向性が違います。
簡単に言えば、期待は五臓の肝が温まる方向に、不安は肝が冷える方向に向かいます。
不安を感じること、恐がることを
「肝を冷やす」と表現するのは、正にこの事を表しますが、
肝(≒自律神経系)は本来、「温まりにくく、冷めにくい」という性質を持ちます。
けれど期待や不安が大きくなるほどに不安定になり、
温まりやすく、冷えやすい状態が際立っていきます。

ただし、温まりやすく、冷えやすい状態とは言っても、
物理的に「熱い・寒い」とか本人が「暑がり・寒がり」という意味ではありません。
肝を冷やせば、体を温めれば良いという訳でもありません。
肝の冷えやすさは、肝本来の柔軟さを欠いた状態(=肝気虚)。
肝気虚に陥れば、体の巡りは柔軟さを欠き、
極端に緩んだり、強張った状態を招いてしまいます。

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強い感情は、それによる弊害も然ることながら、
感情によって平常の気(≒平常心)を欠くという点が問題だと感じます。
期待や不安を抱くこと自体は、悪行ではありませんし、
期待が良い感情、不安が駄目な感情という訳でもありません。
いかなる大きな感情であっても、それを善行として留め置くのは、平常心がなせる業です。
それこそ、平常心が強くても、人の心は期待もするし、不安も感じます。

不安を感じる時に服んでおきたい漢方薬とは、
不安で肝気虚に陥るのを防ぐ漢方薬、肝の平常の気を保つ漢方薬を意味します。
それには例えば、桂枝加竜骨牡蛎湯や半夏厚朴湯、甘麦大棗湯、
あるいは温胆湯、抑肝散加陳皮半夏などに一服の価値があります。


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