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「漢方・生薬と言えば人参」というぐらい、知名度が高い薬用人参
現代では医薬品からサプリメント、化粧品に至るまで、さまざまな形で活用されています。

そんな人参は、漢方薬にも欠かせない存在ですが、
実のところ「人参を摂ること」と「人参を用いた漢方薬を服用すること」には、
用途・効能の点で違いがあります。
それこそ「健康長寿の為に!」という、薬用人参の謳い文句は、人参湯に通用しません。
(その一方で、どちらが優れている・劣っているという話でもありません。)

人参には人参七効に代表される、数々の優れた効能があります。
一例を挙げると、補気救脱、益血復脈、養心安神・・・。
単純に考えれば、その用法には七通り(もしくはそれ以上)が存在する訳です。
人参を用いた漢方薬が数多く存在して、各々が別々の効能が持つのも、この点に基づきます。

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唯一無二の、素晴らしい効能を持つ生薬だからこそ、
その用い方にも多彩な形式があって然るべき。
古人もそのように思案したのではないでしょうか?

また一方で、薬用人参には、人の元気を養う保守的な側面と、
病気を攻める攻撃的な側面が存在すると言われます。
前述の話と重複しますが、保守的な用途に用いるか、
それと病状の用途に用いるかという点でも、人参の服用法は変わってきます。

「人参」で服んでおきたい漢方薬とは即ち、
目的に応じて人参の多彩な効能を活用していく漢方薬を意味します。
それには例えば、人参湯(人参+乾姜:腹部を温解、嘔吐・下痢を止める)
小柴胡湯(人参+柴胡:胸脇の熱を和して、みぞおちの痞えを取る)
麦門冬湯(人参+麦門冬:肺を潤して、咳を鎮める)などに一服の価値があります。

子どもの穴患いのように、正気を乱しやすい(=不安定で邪気に転びやすい)
状態を、漢方では解毒証と呼びます。

解毒と言うと「体に悪いものが存在して、それを盛んに解消している」
と想像するかもしれません。
解毒証に関しては、半分が正解で、半分が誤りです。
解毒証の場合は、体に存在しないはずの毒を仮想して、盛んに解毒を行っている状態。
早い話が、機能的な混乱が起きている状態です。

解毒を行うこと自体は良い事だから、別に問題ないのでは?と思うかもしれませんが、
漢方でいう解毒のアクションは、自らの「毒をもって毒を制す」という働きに基づきます。
人の体は、自前でも毒を作り出して、それを道連れに
(=自前の毒に対する体の反応を活かして)侵入した毒を退治していきます。
今でこそ解毒=中和のニュアンスを含みますが、
昔はむしろ荒療治としての傾向が強かったようです。
特に解毒証の場合は、退治するべき毒が存在せず(=無形の毒)、
勝手に自前で毒を作り出して、その毒に反応するという過程だけを繰り返しており、
まさしく、当て(=解毒の当て)もなく放浪する状態に近いです。

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漢方では解毒証を、心身がバランスを欠いて
陽に大きく傾いた状態(陽実・陰虚)と見立てます。
陽に傾くほどに「自前で毒を作り出す」という反応も、また強くなります(=陽実)が、
繰り返される解毒は、不要な消耗を及ぼし、穏やかな疲弊(=陰虚)を招きます。

解毒証(陽実・陰虚)になる経緯は、人によってさまざまです。
子どもである(=陽が盛ん)ということもその一つですし、
木の芽時で陽気が強くなる事も要因の一つです。
世の中には陽実を招く要素が無数にあり、それに七転八倒する(?)のが解毒証とも言えます。
なお、西洋医学的には、解毒証は免疫のバランスを欠いた一病態として解釈され、
自律神経系・内分泌系のバランスが大きく寄与すると言われます。

蛇足ですが、人の解毒証は突き詰めると、戦と平和の関係にまで及ぶと思います。
世を平定するには戦が必要だったけど、戦が激しくなれば平和は逆に遠ざかる。
平和を守る心が無ければ、戦は平和は傷つけてしまう。

人の体も同じではないでしょうか。
平和(=中庸)の精神が欠けると、良かれと励む行為が体を傷つける。
解毒証もその一つだと思います。

育ち盛りの子どもは、しばしば頭の穴患いに悩まされます。
頭に開いた穴は、口や鼻、耳などの感覚器官のことで、
それらに現れる扁桃炎や鼻炎・副鼻腔炎、中耳炎を、穴を患う病態=穴患いと呼びます。

大人の体に比べて、子どもの体は、
全身に占める頭部の割合が大きいのが特徴です(成人の8頭身に対して、1歳児は4頭身)。
また頭と足の距離が近ければ、足の熱は頭に及びやすくなり、
「頭温足熱」の様相に近づきます(健全な大人の場合は頭寒足熱)。

加えて、子どもは体温が高く、積極的に熱を逃していきます。
頭に開いた穴も、その手段の一つになりますが、
それは必然、穴に熱が集中することを暗示しています。
さながら「人の熱難の相は、穴の周囲に現れる」といったところでしょうか。

このような理由で、幼少期の子どもは昔から、頭の穴患いに悩まされてきた経緯があります。
そして昔の子どもに基づく話は、今の子どもにも通用します。
ただし、それ自体は病気ではなく、体質に基づく一時的な症状と認識されていました。
成長と共に、体の熱を制御できるなれば、自然と消失していく病態でした。
それに対して今の子どもは、アレルギーや食生活を通じて、
熱に惑わされると共に、そのコントロールが未熟で、
むしろ逆行の道を辿るようにも感じます。

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漢方では、体に開いた穴は気の通り道(気の出入りを行う場所)とされ、
穴を開くことも、また塞ぐことにも気が及ぶと考えます。
即ち、穴を塞ぐのが邪気であり、穴を開くのが正気であるいう訳です。
ただ、「朱に交われば赤くなる」ように、邪気が及ぶ正気は邪気に転じ、
正気が及ぶ邪気もまた正気に転じる関係にあります。
(色即是空とか、是非もなしとかいう世界かもしれません・・・)
要するに、子どもの穴患いのように、繰り返し起きる症状では
絶対的に駆逐すべき邪気は存在せず、
正気を濁さず整えていく(=扶正する)ことが求められます。

子供の穴患いに服んでおきたい漢方薬とは即ち、穴に通じる気を清める漢方薬を意味します。
それには例えば、黄耆建中湯や柴胡桂枝湯、
あるいは柴胡清肝湯や抑肝散加芍薬黄連などに、一服の価値があります。

頭がボヤーッとする。頭の回転が鈍い。忘れやすくなる。

春眠、暁を覚えず。春の心地良さを詠んだ歌ですが、
睡眠と脳が深く関係するように、この時期の脳も暁を覚えず、活動が鈍くなりがちです。

冬の終わりから春先にかけて、脳を取り巻く状況は変化します。
寒さが抜けた血管は緩んで、血圧は下がり、
脳の活動に影響を与える自律神経も乱れやすくなります。
同時に、脳貧血や低血圧症状も起こりやすくなる時期です。

日常生活の中でいろいろなことに注意を払い、
適切に判断して、必要な事を記憶する。
生活の上で、そうした事が当たり前に行えるのは、
脳の基本的な働きに依存しています。

脳の働きは、頭部の損傷が原因で障害を招く場合があります。
けれど一方で、神経細胞や伝達物質(アセチルコリン)など、
脳に不可欠なパーツが不足しても、失調する場合があります。

そうした脳機能の衰えは脳の老化(脳の老廃物蓄積)」と認識されますが、
脳の働きは年齢的要素だけでなく、生活環境や生活習慣、
あるいは職業の種類、刺激やストレスの有無、毎日の体調によっても影響されます。
人の体調が一年365日で変化するように、
頭脳のパフォーマンスも毎日同じという訳ではありません。
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漢方では、脳の健全な働きは、肝・肺が発揮すると考えます。
「広い視野を養う」や「見聞を深める」など、脳を養うことは
しばしば眼を養うことに例えられ、肝と脳の深い結びつきを暗示しています。
現代医学の分野でも、コルチゾールに代表されるストレス性物質が
脳に及ぼす影響について研究・解明が進んでいます。

一方で、宣発の役割を持つ肺は、上半身や頭部など上方の働きにも寄与しており、
肺を動かすことは、脳の円滑な活動を促します。
デスクの上で熟考するよりも、体を動かす方が、しばしば考えがクリアになり、
インスピレーションが生まれやすいのも、このことを反映しています。
また最近の研究では、脳の機能維持に役立つとして
肺の帰経を持つ黄耆、遠志の活性成分が注目されています。

「春眠、暁を覚えず」に服んでおきたい漢方薬とは即ち
肝・肺の気の巡りを整えて、脳の円滑な活動を促す漢方薬を意味します。
それには例えば、帰脾湯や帰耆建中湯、
あるいは葛根湯や逍遥散に一服の価値があります。

貧血は、若い女性に多い症状と思われがちですが、
高齢化社会の今、貧血に悩まされるお年寄りも少なくありません。
特に、高齢者に増えているめまいや立ち眩み、耳鳴りは、
この貧血が影響している場合も少なくありません。

ただし同じ貧血と言っても、若い女性とお年寄りでは、実体が異なります。

若い女性の貧血は、経血による体液不足(血=体液)を反映するのに対して、
高齢者の貧血は、老化による栄養不足(血=栄養)を反映します。
見方を変えると、血液が物質的に失調して、
体の様々な要素に影響を及ぼすのが、若い女性の貧血。
その逆に、体のいろいろな要素が衰退して、
血液の機能的な不調を招くのが、高齢者の貧血という訳です。
尤も、血液は体液と栄養を兼ねた存在ですから、
互いの貧血が全く別物という訳でもありません。

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漢方では、これら2つの貧血はそれぞれ
「血(営血)の虚」、「気(脾気)の虚」と区別されます。
ちなみに、女性と言えば、「血虚」が言及されますが、
営血虚=血虚+営気虚という関係にあります。
言い方を変えると、「貧血」と言いつつも、漢方では
貧血は気の不足・損耗(=気虚)を伴う病態で、
若い女性の貧血では営気を、お年寄りの貧血では脾気を、それぞれ損じるという訳です。

貧血に服んでおきたい漢方薬とは即ち、
血(=栄養)を補いつつ、気の虚損を改善する漢方薬を意味します。
それには例えば、当帰建中湯や補中益気湯、芎帰調血飲第一加減、
あるいは帰脾湯や十全大補湯、五積散に一服の価値があります。


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