90歳代の女性、ご本人は認知症があって来店は不可能な状態で息子さんが代理で来店。
左肩が痛むとのこと。ご本人さんから直接お話が聞けないので本来なら投薬をお断りするところですが、
息子さんの親を想う心情に心打たれて漢方薬をご用意しました。
当初桂枝加朮附湯で様子をみていただくことに。
服薬開始してすぐに効果は出て、痛みを訴えなくなったとのことでした。
ご本人さんは高齢でかつ認知症ということで昼間はデイサービスに行っている。
次第に桂枝加朮附湯では痛みを抑えることができなくなり、夕方から夜にかけて痛みを訴えるようになってきた。
そのうち寝る前になると決まって痛みを訴えるようになりご家族が困っている、と息子さんから話がありました。
ところがデイサービスに行っているときは痛みはなく、機嫌よく施設で過ごしている。
認知症は色々な事象を認識し理解する能力が低下する病気です。
一方本能や感情の表現能力の低下は物事の認識・理解能力に比べてゆっくりと進行とします。
認知症のある時期は、ご本人の感じた事柄、想った事柄を上手く表現できずイライラし、それが肉体的表現になってしまうことがあります。
この90歳代の女性の場合、デイサービスから帰って暫くすると肩が”痛い!”と訴えるといいます。
更によく聞くと次第に不眠傾向(寝つきが悪い)になりつつあり、不眠の程度が強いと痛みの訴えもひどくなるとのこと。
この場合痛みのみに注視するのではなく、「痛み」=「感情・想いの発露」と考えて対処しました。
使用した漢方薬は”肝”の”爆発的な気の疏泄”を抑制する処方(最近ではアルツハイマー病に用いることも多いと聞きます)です。
結果肩の痛みよりも先に不眠傾向の改善がみられ、それにつれて肩の痛みも訴えなくなったと報告がありました。
今から3年ほど前のこと、以来息子さんも来店されなくなりこのブログに書き込むために思い出したがために、どうなったか心配しているところです。
認知症と肩の痛みと不眠
長全堂薬局 (山口県萩市)
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更新日: 2011/06/20 |