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外科手術、特に開腹手術などは、近年医療技術の進歩によって減少していますが、やむを得ず手術に至った患者さんにとって肉体的、精神的にも大きなストレスとなります。そのため、人によっては全身倦怠感、神経の昂ぶり、不眠、口渇、腹満、便秘など、さまざまな不定愁訴を訴える場合が多くみられます。

とかく、術後とはいえ、傷が癒えた場合は、元の身体に戻ったと考え、術前のような、あるいは術前に匹敵した体動をしてしまうため、体力の大きなロスを感じイラダチを感じることもあります。肉体的、精神的あせりに起因することが多いと思います。

このような時に漢方薬は術後の体力回復が早まるだけでなく、癒着を予防したり、精神的な症状(神経の昂ぶり、不眠など)を改善します。また、下痢、便秘、貧血、食欲不振、腹痛などは下の表を参考にして下さい。


体格・体質代表的な処方と症状

中間証

虚 証

  • 黄連解毒湯(おうれんげどくとう)…元々、体力があるタイプでイライラしやすい。
    癒着予防にも用いられる。
  • 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)…体力が低下し、食欲がない。
  • 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう )…おなかが張って苦しい、ときに心窩(しんか・・・みぞおち)が痛む、腹力はない。
  • 竹茹温胆湯(ちくじょうんたんとう)…疲れやすく胃腸障害があり、咳や痰が出て眠りが浅い。
  • 十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)…全身倦怠感が強く貧血がある。
  • 人参養栄湯(にんじんようえいとう)…疲れがひどく貧血があり、寒さに弱くなるなどの、虚証の症状が強い。
  • 桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)…腹部膨満感(おなかがはる)が強く、便秘がある。

くしゃみ、水様性鼻汁、鼻づまりを主症状とするアレルギー性鼻炎は、最近とみに増加しています。この鼻炎には草木の花粉が原因となる季節型とダニや室内の塵が病因となる通年型とがあります。どちらもダニや花粉(抗原)と反応する物質(抗体)を体の中に持っているために、抗原が来ると一連のアレルギー反応が引きおこされ、ヒスタミンなどの化学物質が出ることによって発作が起きます。

以前このシリーズでもとりあげましたが、もう少し詳しく説明したいと思います。

症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりの他、眼のかゆみ、のどの痛み、のどの乾き、のどの奥(喉頭)がイガイガして何か張りついた様で辛い、ゾクゾクと寒気がして感冒にかかったかと思う場合もあります。

花粉症は漢方は比較的特意な分野です。花粉症は漢方では「水気」の病と考えています。頻発するくしゃみ発作を「気逆」ととらえ、あふれる鼻汁を「水分の停滞」と考え、症状や体質によっていろいろな処方が用意されています。発作時はもとより、長期間服用することにより、体質を改善することも可能です。


体格・体質代表的な処方と症状

中間証


虚 証

  • 越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)…尿が少ない、くしゃみ、鼻水、眼のかゆみなどの症状がきつい。
  • 小青竜湯合五虎湯<虎龍湯>(しょうせいりゅうとうごうごことう<こりゅうとう>)…くしゃみ、鼻水、鼻づまりがきつい、有効率が高い。
  • 葛根湯(かっこんとう)…日常、肩が凝りやすく、くしゃみ、鼻水の発作が頻発するタイプ。
  • 麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)…くしゃみ、鼻水とともに、のどが痛いタイプ。
  • 小青竜湯(しょうせいりゅうとう)…くしゃみ、鼻水、眼のかゆみがひどいタイプ。
  • 喉頭鼻涼散(こうとうびりょうさん)…鼻から喉にかけてひりつくように乾き、喉がイガイガする、主にヒノキ花粉症に有効。
  • 柴胡桂枝干姜湯(さいこけいしかんきょうとう)…くしゃみ、鼻水が多い、ストレスが多い、平素より疲れやすい。
  • 麦門冬湯(ばくもんどうとう)…咳とともに濃い粘稠な痰がでる。
  • 苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)…くしゃみとともにうすい鼻水がタラ~と流れるように落ちる。
  • 麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)…くしゃみ、うすい鼻水が出る。ゾクゾク感が強い。

人の関節は骨の表面が真珠の様な光沢のある軟骨でおおわれています。
ですが、加齢とともに軟骨の弾力性が失われ、厚みが薄くなり、ひび割れしたり、でこぼこになったりして、関節が変形してきます。このような膝の状態を変形性膝関節症と言います。

この病気の八割以上の人はO脚で脚が少し外側に突き出て曲がっています。
これは、内側の軟骨がすり減っているためです。

そのため、太ももの筋肉のつり合いが乱れ、じん帯に無理な力が加わったり、骨や関節の袋の血のめぐりが悪くなり、痛みが生じると言われています。また、進行すると関節に水がたまることもあります。

治療の基本は膝にかかる負担をなるべく軽減することです。

太りすぎの人は体重のコントロールに心がけ、既に変形のある人には足に靴の中敷のような足底板を入れ、膝にかかる負担を少なくします。更に、運動治療をして脚の筋肉をきたえる訓練が大切です。

(1)あお向けに寝て、膝をまっすぐに伸ばし、足首に1~2kgの砂袋をつけ脚を上げ下げします。
(2)椅子に座って同じ動作をくりかえします。

漢方医学では腎虚と虚労をもとに湿気と冷えが加わって発病すると考えられています。

腎虚とは心身の活動力が低下した状態、虚労は過労のため、体が衰弱し、精が疲れた様子を言います。また漢方の"気・血・水"の異常から処方を考えています。


体格・体質代表的な処方と症状

中間証


虚 証

  • 越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)…関節が腫れ、痛みがきつい。尿量が少ない、平素身体が丈夫。
  • 麻杏薏甘湯(まきょうよっかんとう)…関節が痛い。皮膚があれやすい。
  • 薏苡仁湯(よくいにんとう)…痛みは軽いが長期間治りにくいタイプ。
  • 五積散(ごしゃくさん)…腰から上はのぼせ、下は冷えるタイプ。
  • 防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)…関節に水がたまりやすい。色白で水ぶとりタイプが多いが、細くても下肢が重かったり、尿が少ないタイプに用いられる。
  • 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅうしょうきょうとう)…冷えがきつい。
  • 桂芍知母湯(けいしゃくちもうとう)…大腿部と下腿の筋肉が細くなり、膝関節のみが腫れる(鶴膝風と呼ばれる)タイプ。

「五十肩」と呼ばれる本症は、40代後半から50代に突然起こる原因不明の関節痛です。

主な症状は肩関節の痛みと運動制限です。

肩関節の周りには、筋肉と、それを骨に結びつける腱があり、その働きをなめらかにしているのが滑液包です。五十肩の多くはこの滑液包に何らかの原因で炎症が起き、痛みがはじまります。軽いけがの後に痛み出すこともあります。その後、腕を動かすと痛みが強くなり、重症の場合は腕の上げ下げや歯みがきも出来ない程痛みます。

多くは数ヶ月から一年位で痛みも楽になり、少しずつ回復していきます。この時に漢方を用いれば治癒が促進され、早く症状が軽快することが多いのです。

冷えや痛みの程度、尿、汗の出方、日常の体力や体質を考えて漢方を選びます。急性期は安静が第1ですが、出来るだけ早く痛みを和らげ、運動を始めることも大切です。(拘縮を起こさないため)。前かがみになり、よい方の手で机を押え、痛む方の手で鉄アレイや砂袋を握り、前後左右に動かします。この時、無理をせず、重りを加減しつつ、少しずつ増やしていって下さい。


体格・体質代表的な処方と症状

実 証


中間証


虚 証

  • 越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)…日常、体格がよく、丈夫なタイプ、風が吹いても痛む程、激しく痛む。
  • 葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう)…前処方同様、日常丈夫で、頚や背が張るタイプ。
  • 麻杏薏甘湯(まきょうよっかんとう)…皮膚があれやすいタイプ。
  • 桂枝二越婢一湯(けいしにえっぴいちとう)…急性期に用いられる(進行すると附子を加えて用いる)。
  • 二朮湯(にじゅつとう)…胃腸が弱く筆圧が弱いタイプ。肩関節の周囲炎の専門薬といわれている。
  • 五積散(ごしゃくさん)…上半身はほてり、下半身は冷え痛むタイプ。
  • 回首散(かいしゅさん)…首が凝って回らないタイプ。
    (この処方は寝ちがいやギックリ腰に用いても有効です)。
  • 桂枝加苓朮附湯(けいしかれいじゅつぶとう)…日常汗が出やすく冷え性で体質的に弱いタイプ。
  • 甘草附子湯(かんぞうぶしとう)…痛みが一層はげしいタイプ。

一般的に痔と呼ばれているのは、痔核、痔瘻(じろう)、裂肛、脱肛に分類され、病態はそれぞれ異なっています。

疾患の種類や程度は正確な現代医学の診断が必要です。
現代医学では、坐薬を除けば外科的処置が多いですが、漢方では内服薬が殆どです。

いずれの場合も痔疾は、肛門周辺の静脈の異常なうっ血によって起こるものであり、瘀血(おけつ)の一症状と考えています。病態上の分類を大切にしながら、自他覚症状の「証」を考えることによって漢方を選択していきます。


体格・体質代表的な処方と症状

実 証


虚 実





外 用

外 用

  • 大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)…のぼせ感が強い。
  • 三黄瀉心湯・・・日頃のぼせやすい、出血が激しい場合。
  • 麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)…出血が激しく、痛みがきつい。
  • 乙字湯(おつじとう)…痔核に対して最も頻用される。
  • 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)…体力がない。
  • 十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)…出血のため、貧血で疲れやすい。
  • 黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)…痔瘻で体力がないもの。
  • 托裏消毒飲(たくりしょうどくいん)…痔瘻が進み、化膿、膿瘍の慢性のものに適している。
  • 忘憂湯(ぼうゆうとう)=甘草湯…脱肛のはげしい痛みに煎じて腰湯で用いる。(痛みが速やかに消失し、脱出した患部も元にもどる)
  • 紫雲膏(しうんこう)…痔核、裂肛に用いる軟膏。


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