体を温める漢方の知恵
香り高いシソの葉は実は心と体を癒すキー食材だった
体を温めながら心も温かくなる
生薬・紫蘇葉は漢方では「気剤」に属し、精神的な疾患によく使われます。
処方としては香蘇散(こうそさん)、紫蘇飲(しそいん)、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)など。
これらの処方は漢方でいう「肝気鬱結(かんきうっけつ)」の症状に用いますが、これは肝の気の流れが悪いために起こるうつ症状なのです。
肝はいつものびのびとした状態を好みますが、自分を責める気持ちが強くなったり、周囲からの押しつけが強くなったりすると、のびのびできなくなって肝に気が通りにくくなるのです。
いわゆるストレス過多による精神的な諸症状が対象です。
特に、理性が強くて自己を抑制するタイプ、周囲からのプレッシャーによって心が弱っているタイプがなりやすく、特に女性によく現れる症状に功を奏する処方です。
前述の処方には柴胡(さいこ)、香附子(こうぶし)、厚朴(こうぼく)、半夏(はんげ)などの生薬が配されていますが、これらの生薬を補佐するのが紫蘇葉なのです。
この生薬も他と同様、鮮度や品質の管理が大切で、シソ特有の芳香の強いものほど良品とされます。
品質の優れた気剤は、最近よく使われる現代医学の抗神経薬に匹敵する威力を持ちながら、体にはやさしい治療をすることができます。
シソにはこのような素晴らしい効果があり、また、他の食材の味覚を一層高めてくれる働きがあります。
普段からシソをたくさん食べることによって、体温を高めるばかりか、精神的な安定感も増すありがたい食用植物なのです。
ですから、生薬の紫蘇葉は薬膳、つまり漢方生薬を隠し味にした料理にもよく使われています。
私が好きなのは、ショウガ、ネギ、ミョウガに紫蘇葉を加え、醤油、砂糖、ごま油、酢を混ぜ合わせて作った薬味ソース。
これを素揚げのナスやピーマン、豆腐などに掛けると絶品の薬膳になります。
シソは種子から取れる良質の食用油も大変重宝されています。
老化防止の切り札、抗酸化作用の高いα-リノレン酸が多く含まれているからです。
解説:惠木 弘(恵心堂漢方研究所所長)