春は木の芽が青々と芽吹き、自然界の植物も動物も活発に活動を始めます。古人が考えた「五行表」を見ると、春の自然界は「風」の影響を強く受ける時季になります。
春先の春一番、気象予報に、花粉の飛散状況が報道されるように、風邪の影響で、目が痒い・涙が出る・鼻水が出るなどの症状に悩まされる人もいます。風邪は万病の元といわれていますが、「かぜ」ではなく「ふうじゃ」と読むと良く理解が出来ます。
風がからだの中を吹き荒れると、高血圧、めまい、目の周りがひくひくする、皮膚が痒いなどの症状になって現れます。春は風邪(ふうじゃ)が、はしかやおたふく風邪、風疹などの感染症や結膜炎などの目の病気、ぜんそくやアレルギー関係の病気を多発させる季節です。
近年増加傾向のアレルギー性鼻炎とは発作性反復性のクシャミ、水様性鼻炎、鼻閉を主徴とする鼻粘膜のI型アレルギーです。そのほか目が赤く充血して涙が流れたり、頭痛や頭重を伴ったりします。
春先に多いのは、アレルギー性鼻炎の大きな原因である杉の花粉が3月から4月にかけて、また松の花粉が4月から5月にかけて大気中に舞うことによります。
昔はなかったアレルギー性鼻炎は花粉だけが原因ではなく、大気汚染が食生活の大きな変化などが背景にあります。そのために季節に関係なく症状が現れる方もあります。鼻症状のほかに肩こりやのぼせ、めまい、手足の冷え、腹部の膨満感や便秘などの胃腸症状が現れることが多いものです。
クシャミや鼻水、鼻づまりの発作に、一般的には西洋薬の抗アレルギー剤が使用されますが、欠点として眠気を催すことがあげられます。その点、漢方薬はその心配がありません。
しかし、漢方薬はすぐに効かないと思っておられる方が多いようですが、漢方薬も使い方によっては、内服後15~30分ごろより、症状が楽になり、その効果が6~8時間持続いたします。
漢方薬は長く服用して、体質を改善するためによく用いられていますが、急に生じた症状にすぐ対応するために用いられることのほうが現代では重要なことと思います。
もともと漢方の古典である「傷寒論」は紀元前頃に流行した疫病で多くの人が亡くなることを憂慮して漢方薬の使い方をまとめた本なのです。
なお大切なことは、漢方薬は自然の植物・動物・鉱物などを原料にして作られたものですので、同じ名前の漢方薬でも、使用した原料の品質や製造方法などによってその効果は大きく異なりますので、注意が必要です。
一般にアレルギー性鼻炎に用いる主な生薬を見ると、
麻黄(辛・微苦、温)細辛(辛、温)乾姜(大辛、大熱)炮附子(大辛、大熱)などがよく使用されます。辛は風邪を発散する作用を、温は温める作用、大はより強くという意味、熱は温める作用の強いもの。以上の生薬の作用から考えて、アレルギー性鼻炎は、風邪の影響で発生した症状であるとも考えることが出来ます。
処方で言うと
葛根湯
小青竜湯
麻黄附子細辛湯
などがよく使用されます。
アレルギー性鼻炎は、国民病ともいえるぐらいに増加していますが、その原因といわれる杉などの花粉が急に大気中に増加したのだとは考えられません。これは、都市化による生活環境の悪化や、空気の汚染も原因の一つと言えますが、それ以上に食生活の変化や生活様式の変化などで我々の体質が変わったことが大きな原因でしょう。即ち、アレルギー性鼻炎は現在の誤った生活習慣が原因と考えられます。
主なものをあげてみると、
一、飲食物は、その地方に昔から伝わるものが、その土地の住む人に最適です。日本は、戦後、食べ物の変化が非常に大きくなっています。
二、人工的に作られたものは控えましょう。怖い話ですが、これを摂取したらどんな障害が出るか、目下実験中とも考えられます。
三、冷たい飲み物は控えましょう。
四、生野菜の常食はやめましょう。果物の摂りすぎは控えましょう。
五、牛乳やヨーグルトの常食の控えましょう。
六、冬場の服装に気をつけましょう。薄着やショートパンツはやめましょう。
七、アイスクリームは食後に少量。緑茶の飲みすぎは要注意です。
以上のように、日常の注意としては、苦労を避け睡眠を十分にとり、下半身を冷やさないような服装に注意して、肉食や魚、卵などの動物性食品に偏らないように注意して、緑黄野菜や無精白の穀類を中心にしたバランスの取れた食事をすることが非常に大切です。
最近の厚生労働省の発表では、日本人の食事の栄養素は殆ど取れているが、カルシウムだけが不足していると言っています。火山国の日本の土壌に、カルシウムが不足していますので、アレルギー体質の方はカルシウムの摂取を心がけてほしいと思います。
解説:惠木 弘(恵心堂漢方研究所所長)