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最近、漢方薬は随分と普及しています。ところが、日本の伝統医学である漢方薬本来の使い方をされていることは、残念ながらいまだに少ないものです。

 漢方薬は「風邪には葛根湯(かっこんとう)」というように、病名で選ぶものではありません。 「この病気にはこの漢方薬」という単純な決め付けを、私たち漢方家は〝病名漢方〞と名付けています。

 本来の漢方薬の使い方であれば、同じ風邪でも発熱しているか、首や肩が凝っているか、寒気がするか、頭痛がするか、鼻水がひどいか、胃腸の調子はどうかなど、症状と体質を考慮して薬を選んでいかなければなりません。

 昭和61年「小柴胡湯(しょうさいことう)」という漢方薬が慢性肝炎での肝機能障害を改善すると発表されました。

 漢方薬は飲む人の「証(しょう)」によって薬を選びます。

 ですから、小柴胡湯の仲間である体力のある人向けの大柴胡湯(だいさいことう)や、体力がない人向けの柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)などが同じように使用されていなければおかしいのです。

 しかし、実際の現場では、飲む人の体質を軽んじた「肝機能障害には小柴胡湯」といった認識で漢方薬が扱われてしまいました。その結果、前年まで使用量トップだった葛根湯を抑え、小柴胡湯の使用量がトップに躍り出たのです。

 このような使い方をしても不都合なことがなければよかったのですが、残念なことに間質性肺炎という副作用が問題となってしまいました。

 国も西洋医学とは異なる漢方薬の使い方があるとし、平成9年には薬の説明書である「添付文書」に、「患者の証(体質・症状)を考慮して投与すること」という一文が加えられました。

 このように、漢方薬が正しく用いられない結果で起こる不都合な症状を副作用と思われるのは残念です。

 漢方薬は〝病名漢方〞でなく、漢方という医学の考え方で扱ってこそ、本来の効果を実感することができるのです。


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