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素材解説 病気と薬の関係とは・・・

 
   

糖尿病

糖尿病
日本人で糖尿病が強く疑われる人が690万人?
 

サラシア

 サラシアという名前は、インドやスリランカ産のデチンムル科植物のSalacia(サラキア)属植物を原料として開発された健康食品素材の一般名称で、属名salaciaの日本語読みに由来している。

 Salacia属植物は、インドやスリランカをはじめ、タイやインドネシアなどの東南アジアおよびブラジルなどの熱帯地域に広く分布し、約120種が知られている。薬用に供されるほかに、建材として利用する場合や果実を食用にする種類もある。

 スリランカ、インド、タイなどに多く自生するsalacia(S.)reticulata(サラキア レティキュラータ)、S.oblonga(サラキア オブロンガ)およびS.chinensis〔サラキア キネンシス=S.prinoides(サラキア プリノイデス)〕などは、つる性の多年生木本で、成木では幹の太さが20㎝を越えるものもある。

 これらのSalacia属植物の根や幹は、インドやスリランカの伝統医学であるアーユル・ヴェーダやタイなどの東南アジア諸国の伝承医学で天然薬物として利用されてきた。例えば、スリランカの「Medicinal Plants in Ceyron」などの薬物書には、S.reticulataの根皮は、リュウマチ、淋病、および皮膚病の治療に有効であるとともに、糖尿病の初期の治療にしばしば用いられると記載されている。

 また、インドでは、S.reticulataやS.oblongaの根をリュウマチ、淋病、皮膚病の治療に用いるとされ、S.chinensisは糖尿病の治療のほかに、堕胎、通経、性病の治療を目的に用いると伝承されている。タイにおいては、S.chinensisの幹の煎じ液が緩下や筋肉痛の緩和に良いとされ、種々の方剤に配合されている。


 スリランカでは、S.reticulataの太い根や幹をくり抜いてコップを作り、食事の際に水や酒を入れて飲むと糖尿病予防になると伝えられている。

 Salacia属植物には、糖尿病の予防や初期治療に有効であることが伝承されているとともに、抽出エキスでの抗糖尿病作用も報告されていた。スリランカのColombo大学のグループは、スリランカ産S.reticulataの根皮の水抽出エキスに、ブドウ糖の経口負荷ラットでの血糖値上昇抑制作用のあることや、富山医科薬科大学のグループは、スリランカ産S.reticulataの根皮エキスにstreptozotocin誘発の糖尿病ラットでの血糖値降下作用のあることを報告した。

 また、インドのKakatiya大学のグループもインド産S.macrospermaの根部エキスがalloxan誘発の糖尿病ラットで血糖値降下作用があり、インスリン様作用のあることを報告していた。著者らは、糖尿病や肥満の予防、治療効果のある天然薬物や薬用食品の探索研究の一環として、スリランカ産S.reticulataの根や幹の水可溶部エキスにショ糖やマルトースの経口負荷ラットにおける血糖値上昇に対する顕著な抑制活性のあることを見出した。

 しかし、これまでにSalacia属植物エキスについて報告されていたブドウ糖経口負荷ラットやalloxan誘発の糖尿病モデルでは血糖値に対して影響を与えなかった。

 そこで、更に詳しく検討した結果、S.reticulataのショ糖やマルトース負荷での血糖値上昇の抑制活性がα-glucosidase阻害作用によることが判明した。そこで、ラット小腸由来のsucraseとmaltaseに対する阻害作用を指標に活性成分の探索を進めたところ、新奇なチオ糖スルホニウム硫酸分子内塩構造を有するsalacinolとkotalanolが得られ、NMRなどのスペクトルデータの解析、X線結晶解析および分解反応の結果からそれらの化学構造を決定した。 インド産S.oblongaやタイ産S.chinensisにも強いα-glucosidase阻害作用が認められ、主活性成分は同一であった。Salacinolとkotalanolにはsucraseとmaltaseに対してα-glucosidase阻害活性の抗糖尿病薬acarboseと同程度の阻害活性が認められ、isomaltaseに対してはacarboseよりも非常に強いことが判明した。

 Salacinolは、ショ糖やマルトースの経口負荷ラットにおける血糖値上昇を用量依存的に抑制し、そのin vivoでの作用は市販医薬品のacarboseよりも非常に強いことも明らかとなった。Salacinolやkotalanolの分解生成物や合成した関連化合物についてα-glucosidase阻害活性を比較検討したところ、活性発現にはスルホニウム硫酸分子内塩構造が必須であるなど構造と活性に関する興味深い知見が得られた。

 S.reticulataの根部や、幹の水可溶部エキスのα-glucosidase阻害活性の強さと、Salacinolやkotalanolの含量とそれらの活性強度に整合性が認められなかったことから、更に、他の活性成分の探索を進めた。その結果、高含量で含まれているmangiferinやポリフェノール成分にも弱いながらα-glucosidase阻害活性が認められた。

 またmangiferinはインスリン非依存型糖尿病マウス(KK‐A)において、血糖降下作用を示すことが報告されていた。そこで、HPLCを用いた定量法を開発し、Salacia属植物中の含量を比較したところ、タイ産S.chinensisの幹やインド産S.chinensis(S.prinoides)の根に高含量でmangiferinが含有されていることが判明した。


 つぎに、Salacia属植物エキスと成分について、糖尿病性合併症の原因となるaldose還元酵素に対する作用を検討したところ、S.oblongaやS.chinensisのエキスに顕著な活性が認められた。

 Aldose還元酵素阻害活性を指標に検討したところ、mangiferinやトリテルペン類が活性成分であることが判明した。Aldose還元酵素は,ポリオール代謝系における律速酵素であり、その阻害物質は白内障や末梢神経障害といった糖尿病性合併症の治療薬として開発されている。

 Salacia属植物エキスと成分は糖尿病性合併症にも有用と考えられる。

 肥満は、糖尿病や高脂血症、高血圧の原因と言われ、さらに心血管症(動脈硬化、脳卒中)や癌を併発することも多く、有効な治療薬の開発が最も望まれている疾患の一つと言える。

 S.reticulataの根部の水抽出エキス(SRHW,125μg/㎏/day,p.o.)の4週間投与において、Zucker fattyラットおよび高脂肪食(ラード58%含有)飼育SDラットにおける体重増加の抑制効果が認められた。さらに、腸管膜や腎臓周囲、子宮周囲といった内臓脂肪重量が減少し、血清や肝臓中のトリグリセリド量も減少させることが判明した。

 また、S.reticulata根部の水抽出エキスに、ブタ由来膵リパーゼと、ラット脂肪組織由来リポプロテインリパーゼの阻害作用が認められた。そこで、S.reticulata根部の水抽出エキスから得られた成分について、リパーゼ阻害活性を検討したところ、トリテルペン成分、ポリフェノール成分およびタンニン分画に膵リパーゼ阻害活性やリポプロテインリパーゼ阻害作用のあることが判明した。また、タンニン分画はglycerophosphatedehydrogenaseを阻害することも明らかとなった(IC50 6.7μg/ml)。

 これらの知見から、S.reticulataは小腸からの脂肪の吸収と脂肪蓄積を抑制すると考えられた。

 一方、S.reticulata根部の水抽出エキスは,30-100μg/mlでラット培養白色および褐色脂肪細胞における脂肪分解を亢進し、mangiferin、トリテルペン、およびポリフェノール成分などに強い脂肪分解作用が認められた。これらの検討の結果、S.reticulataは脂肪代謝酵素(PL,LPL,GPDH)の阻害と脂肪分解の促進によって抗肥満作用を示すことが判明するとともに、その有効成分はテルペノイド類およびポリフェノール成分であった。

 このほか、S.reticulata水抽出エキスに高脂血症予防効果のあることも明らかとなっている。α一Glucosidase阻害による抗糖尿病薬には、深刻でない腸内ガスの増加が認られる他には、重篤な副作用は無いと言われていた。

 しかし、最近、α-glucosidase阻害抗糖尿病薬の副作用として肝障害が発生することが報告されたことから、S.reticulataの根と幹の水抽出エキスについてCCI4誘発マウス肝障害モデルに対する作用を検討した。

 その結果、両エキスともに400㎎/㎏(p.o.)の用量において、血中GOT,GPTの上昇および肝臓中のチオバルビツール酸反応物の生成を有意に抑制することが判明した。


 次に、DPPHラジカル消去活性とCCI4誘発肝細胞障害抑制活性を指標にS.reticulataの活性成分を探索したところ、ポリフェノール類が主活性成分として得られた。CCI4肝障害マウスでの検討では、mangiferinとポリフェノール成分が100㎎/㎏の投与量で強い肝保護活性を示すことが明らかとなった。

 このほか、Salacia属植物には、NO産生抑制活性や胃粘膜保護作用およびSOD様活性が認められ、トリテルペン成分やポリフェノール類の関与が判明している。

 また、水抽出エキスの安全性については、単回経口投与および13週間反復経口投与での毒性試験、染色体異常試験、抗原性および光毒性試験が行われており、問題なかったと報告されている。

 Salacia属植物は、強いα-glucosidase阻害作用を有するsalacinolとkotalanolをはじめ、抗肥満活性や肝保護作用を示すmangiferinや、ポリフェノール成分、アルドース還元酵素阻害やNO産生抑制活性を示すトリテルペンやジテルペン成分などの多種の成分を含有している。

 天然薬物の特徴は、多成分の関与した多様な複合作用によってホメオスタシス(体の恒常性)を維持、助長することにあると言われている。

 Salacia属植物においてもこれらの多成分によって抗糖尿病作用や抗肥満作用などの体に良い多様な薬理作用を示すものと考えられる。

 一方、Salacia属植物には、種の違いや産地、生育場所および使用部位の違いによって活性が著しく異なることが判明している。


その科学的解明をはじめ、品質評価法の確立などについては今後、更に詳細に検討する必要があると考えている。


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