漢方について
漢方医学と西洋医学の違いは?
漢方(東洋)医学と西洋医学では、病気のとらえ方や治療法が全く異なっています。
西洋医学では、内科、外科、耳鼻科など専門分野に分かれ、主に種々の検査によってからだの状態を数値化したり、画像化して病気かどうか判断します。
一方、漢方では専門科というのはありません。
漢方では、からだを一つの生命のある個体としてとらえるからです。
からだのバランスの崩れが様々な症状になって現れると考えます。
治療法にも大きな違いが出てきます。
西洋医学では診断にしたがった目的のはっきりとした治療が行われます。
たとえば、血圧が高ければ降圧剤、からだから分泌されるホルモンが少なければホルモン剤が投与されます。
西洋薬の多くは有効成分が単一で即効性があるため、感染症の原因となる細菌を攻撃したり、血圧を下げたりするなど、直接的な作用は強く、一つの症状を改善させるには優れていますが、服薬を止めるとまた元の状態に戻ってしまうことがあります。
それは、西洋薬の多くが、病気を根本的に治しているのではなく、本来からだがすべき働きを薬が代わりにやっているからなのです。
漢方では、病気を治すためには、からだのバランスを整えることを第一に考えます。
病名や症状だけにとらわれず、漢方でいう五臓六腑のどこが病気の原因なのか? どこが冷えて、どこに熱を持っているのか? 等々、体質を考慮して、漢方薬を選定していきます。
こうした漢方薬は西洋薬のようにからだの働きの肩代わりをするのではなく、自然治癒力を高めることにより、自分自身の力で病気を治していきます。
さらに、漢方特有の原因療法により、西洋医学では治療法がない病気や、自覚症状があるにもかかわらず検査をしても異常が見つからない場合にも対応できます。
漢方薬は飲んでどれくらいしたら効果がでてくる?
同じ病名でも、病気になってからの期間や病状の軽重、その人の体質などによって、まさに千差万別ですが、一応の目安を紹介しておきます。
たとえば、風邪や急性胃腸炎など、いわゆる急性病の場合、早く治療すれば一両日中に効果が出始め、短期間で治ります。
高血圧や不眠症、慢性肝炎を始めとする慢性病、リウマチや潰瘍性大腸炎などの難病(特定疾患)は、病気の根が深いため、ある程度は漢方薬を飲み続ける必要があります。
当薬局では、最初7日~10日分の薬を服用していただき、様子をみさせていただいております。
慢性病や難病でも、漢方薬がピタリと合えば症状はかなり改善されますが、一般に漢方は原因療法であるため、体調が良い方向へ変化するまでには時間を要することが多いといえます。
また、一番治して欲しい病気や症状に変化がなくても、付随した症状が改善されたとき、たとえば「血圧を下げて欲しい」と漢方療法を始められた方で、血圧はあまり変化がなかったけれど、だるみが取れてきたり、食欲が出てきたりしたような場合は薬が効いてきた証拠です。
さらに服用を続けられるとよいでしょう。次第に血圧も下がってきます。
煎じ薬とエキス剤の違いは?
みなさんが漢方薬と聞いて連想する光景は、土瓶でコトコトと薬草を煎(せん)じているところではないでしょうか?
また、最近では医師から処方された粉状の漢方薬(エキス剤)を思い浮かべる方もいらっしゃるでしょう。
「煎じ薬は飲みにくい?」「煎じ薬とエキス剤はどちらがよく効くの?」などの疑問について説明していきたいと思います。
【煎じ薬】
煎じるというのは、生薬を水で煮出してその成分を浸出させる方法です。
したがって手間はかかりますが、液状なので消化吸収が良く、効き目が優れています。
また、服薬される方の症状や体質、体格に応じて生薬の分量を増減することが容易ですから、よりその方に適した薬を調合する ことができます。
【エキス剤】
生薬を製薬工場で煎じて、エキス分を抽出した後、顆粒や粉末に加工したものを“エキス剤”といいます。
煎じる手間がかからないため、入院や旅行先でもすぐに服用できる便利さがあります。
また、煎じ薬特有の味や匂いがほとんどないので、子供にも飲ませやすくなっています。
ただし、便利になったとはいえ、エキス剤にも短所があります。
まず、薬効の問題です。
その人に合っているはずの薬がエキス剤ではあまり効かず、煎じ薬だとよく効いたという場合があります。
さらに、エキス剤は煎じ薬と違って、微妙なさじ加減はできません。
服にたとえると、エキス剤は既製服で、オーダーメイドに相当するのが煎じ薬といえます。
便利なエキス剤も臨機応変にということでしょう。
西洋薬との併用は?
結論から申し上げますと、ほとんどの西洋薬(新薬)と漢方薬を併用されても問題ありません。
ただし、肝炎などの肝臓疾患に使用されるインターフェロンとある種の漢方薬は併用すると、まれに症状が悪化する場合がありますので、使用されている方はお申し出ください。
なお、西洋薬と漢方薬の服用時間は、1時間程度あけられた方が、両方の効果がより発揮されやすくなります。
漢方薬には副作用がないの?
漢方薬に使われる生薬は、ほとんどすべてが天然のものです。
植物の根や葉、果実、鉱物などを何種類も一定の分量で組み合わせて漢方薬は作られています。
天然物であるため、からだにやさしく、合成された西洋薬のように強烈な薬とは根本的に違います。
しかも、二千年以上の長い歴史の中で、膨大な人に飲まれ続けた薬ですので、危険なものや副作用の強いものはふるい落とされ、安全で効果が確実なものが、今日まで伝わってきたといえます。
したがって、使い方さえ間違わなければ、漢方薬は非常に安全な薬ですが、万が一、体質に合わない薬を飲まれて不快な症状が現れても、その症状は軽く、一過性で、服薬を止めれば元に戻り、継続することはありません。
瞑眩(めんげん)ってなに?
ただし、漢方薬の特徴の一つに“瞑眩(めんげん)”という現象があります。
これは、治療の経過で一時的に症状が悪化した後、急速に快方へ向かう現象をいいます。
瞑眩はどのような病気にどのような症状が現れるかは、はっきり分かっていません。
もし漢方薬を服用されて気になる症状が出たときは、電話で結構ですのでご相談ください。
未病(みびょう)ってなに?
未病とは、病気になる前の状態、つまり病気のきざし(芽)のことです。
「未病を治す」とは、病気になる前にその原因を解決することをいい、漢方療法では、それが治療の最も理想的な姿と考えています。
病気の芽を見つけることは難しそうですが、「なんだか体がだるい」「食欲がない」「小便が出にくい」「最近、足腰が弱くなった」など、漫然とした体調の変化が病気の芽の存在を知らせてくれます。
からだはそうした変化を巧みに発して異常を知らせ修復しようとします。そして、その手助けをするのが漢方薬なのです。
たとえば、「からだのだるみを治してほしい」と漢方療法を始められた患者が、漢方薬を服用しているうちに、だるみがとれるだけではなく、「風邪をひきにくくなった」とか「肩こりや便秘が治った」と喜ばれることがよくあります。
この例からも、漢方薬が西洋薬とは違って、ある病気や症状だけを治すのではなく、からだのバランスの崩れを治して、病気の芽を摘み取っていることがわかっていただけるでしょう。
“漢方薬が未病を治す”といわれるゆえんです。