
この黄耆と組み合わさる生薬には、白朮(ビャクジュツ)や人参などの補気薬、茯苓(ブクリョウ)や防已(ボウイ)などの利湿薬、桂枝や生姜などの辛温解表薬があります。これら生薬の多くは体表で作用する為、黄耆はそれらの効能を引き上げたりと過度になりすぎないように調節するなどの作用が期待されていると言えます。
黄耆が配合された有名な漢方には、玉屏風散や防已黄耆湯があります。上で述べたような組み合わせを処方に組み込んだ一例で、それぞれ黄耆+白朮で補気の効能を、黄耆+防已で利湿の効能を高めています。特に玉屏風散は3種の生薬のみから成るシンプルな漢方なので、葛根湯や小青竜湯などの体表で作用する漢方に『黄耆』を足すような感覚でも使います。
黄耆によって補われる気は、『燃料としての気』です。以前に、気にはエンジン(代謝)としての側面と、燃料(物質)としての側面があるとお話しました。肌が弱いのは、肌の代謝を支える燃料としての気が不足しているからですが、ではこの気を補給するにはどうするべきでしょうか。一つには燃料そのものを補充する。今まで述べてきた事がこれにあてはまりますね。しかし実際にはもう一つ、『燃料としての気を作る、巡らせる部分の働き』を強くするエンジンとしての気を高める方法があります。これは五臓の肺は持つ気、肺気とよばれるものが深く関わっています。衛気とともに肺気を高めることでより効果的に、よりうまく衛気を巡らせることができるでしょう。