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秋も深まると、日中が暖かく朝方や夜半が冷え込むという、
気温差の激しい日々を経験することが良くあります。
放射冷却が影響していて、
夏のように暑さが際立つ時期は気づきにくいのですが、
夏の終わりと共に体感しやすくなってきます。

放射冷却は日中が暖かいほどに、体感しやすくなる性質があり、
地表と大気の温度差がひとつのキーポイントです。
即ち地表と大気の温度勾配に比例して、冷却は盛んになるというわけです。

さて、自然界がそうであるように、私たちのからだにも放射冷却は備わっています。
即ちです。夏にピークを迎える発汗は、この放射冷却によるところが大きい。

実際は、
からだに熱が生じる
⇒それに伴って汗が生じる
⇒、汗が蒸発するときに熱を奪っていく。

古都の京都で行われる水撒きも、この効果を含んでいます。
実際は商店が開店前に行うことが多いから、
風習や儀式としての側面が強いですが・・・。

逆にいえば、汗をかくとそれだけからだは冷えてしまうということ。
この事を忘れ、辛いものを好んで食してばかりでは、
からだが過度に冷えてしまいます。
汗をかいたら、からだには度が過ぎていると考えるともひとつの手でしょうね。
もちろん、デトックスや新陳代謝の向上を目的に辛味を活用する方もいます。
ですが、そういう方はそもそも汗をかくことを目的としている訳であって。
辛味による発散に耐えうるだけの体躯を備えている訳であって。
かぜの漢方薬では虚実を重んじるように、
体力がないものでは辛味に負ける可能性も多分に含んでいます。
年を重ねるとかぜをひいても汗をかかなくなるのも、
からだへの負担を抑える自衛作用が働くためと考えられます。

そういう場合には辛味を単独では扱わずに、際立たせず、
甘味を利用したり、はたまた温性の食材で補いながら、
円やかに整えていく方が良いでしょう。

漢方薬を継続的に服用する方が

「この漢方薬は、いつまで服み続けたら良いのでしょうか?」

と質問されることがときどきあります。

確かにゴールや目的がはっきりしないで、漠然と続けるのは良くはないでしょうね。

そういう方には次のような説明をしています。

漢方薬でよく「体質改善」と言いますが、
体質改善とはからだの(そしてこころの)バランスを整えることを意味します。
簡単に言えば「リセット」することです。
ですが一旦リセットしたもの、整えられたものがそのまま継続していくかといえば、
必ずしもそうではありません。
時間をかけて緩やかにバランスが崩れていくことも当然あり得ます。
その程度(急なのか緩やかなのか)は、その方の日々の営みが反映されます。
不摂生な生活をしている人ほど、バランスは崩しやすい。

そしてそのような場合には、体質に先んじてまず体調が崩れていく。
だから体質改善ならぬ、体調改善という形で漢方薬を活用していく形もあって、
それはつまり日々漢方薬を嗜んで、日々整えていくことに他ならないんですよ。

体調改善と体質改善は簡単に言えば程度の違いでしょうか。
つまり 体調改善 ≦ 体質改善。
年齢を重ねるほどに、体調改善と体質改善は同等のものになっていくと考えられます。

昨日、10月15日は「キノコの日」だったらしいです。

10月はきのこが最も多く取り扱われる月であり、天然のきのこも多く採れる月で、きのこ狩り、紅葉狩りなど山の幸を実感できる月でもあります。
また、10月はスーパーなどの店頭できのこコーナーが拡充される月であり、冬場の鍋需要を前に、消費拡大のためのイベント等の実施に最も適した月でもあります。15日は一般に月の中日で慌ただしくなく消費者に対してきのこの良さをアピールするのに適していると思われます。

よって10月15日を”きのこの日”と定めることを提唱し、制定に至りました。
(日本特用林産振興会参照)

秋の味覚は山の幸、山の幸といえばキノコ。言われるとそうかもしれません。

漢方処方でもキノコは利用されています。
代表的なものに猪苓(チョレイ)や茯苓(ブクリョウ)。

猪苓はサルノコシカケ科チョレイマイタケの菌核(菌核:植物組織内や土壌中に菌糸が集まってできる硬い塊のこと)で、
ブナやカエデの根に寄生しやすいのが特徴です。 
解熱や利尿の作用があり、口の渇きも改善したりします。

茯苓はサルノコシカケ科マツホドの菌核で、伐採後のマツの根に寄生しやすい性質を持ちます。
鎮静や利尿の作用があります。

ちなみ菌核の形成は、きのこの生存本能の産物です。簡単に言えば。
ですから日本のように多湿な環境ではなく、中国内陸のような乾燥した地域の方が、生育には向いているらしいです。
そして、菌糸は根の導管(水や栄養分の通り道)に沿って伸びていく(そしてそこから水分や栄養分を吸収して菌核へもたらす)という性質があります。
即ち、水分(栄養分)の通り道の確保・拡充
これが人体においては水分の通りを良くする、目詰まりを改善して水分代謝を正常にするという働きに結びつき、利尿や健胃の作用をもたらすと考えられます。人体における主だった水分の通り道は、吸収口である消化官と、排出口である腎臓(腎小体)。

ですから「利尿」といいますが、あくまで本来の状態に戻したり、正常化するということで、服んだもの皆の尿の出が良くなるわけではなくて、むしろ「利水滲湿」と表現されるのが正しいようですね。

最近、当店でも問い合わせが多い耳のトラブル。

そもそも耳が聞こえる(耳が通じる)=聴覚が発揮されるのは、
耳でエネルギーが放出(消費)されるからだと漢方では考えます。
聴覚以外の視覚や嗅覚も同様に、
それぞれ目や鼻からエネルギー(気)が出ていくことで養われているわけです。
子供向けの番組で、ロボットが目からビームを発して敵を攻撃する
という描写がしばしば目にしますが、「言い得て妙」です。

そして、視覚ではしばしば眼精と結びつけて考えるように、
(眼精が消耗することで、視覚にトラブルが生ずる)
からだには耳精と呼ばれるものが蓄えられ、
何らかの理由でこれが消耗されることで聴覚にトラブルが生じやすくなります。

そして精とは簡単に言えば、先のエネルギー(気)の素。
火力発電所で例えれば、
石炭が精に当たり、発電される電気がエネルギー(気)に当たる。

そして漢方では耳は器ではなく、穴=出口と考えます。
エネルギーの噴出孔、電気の送電先です。
対して耳に送られるエネルギーの元である精は腎という臓に蓄えられている。
文字通り「お蔵」なわけです。そして腎に蓄えられることから腎精と呼ばれます。
まあ呼び名などはさして重要なことではありませんが、
老化・加齢症状としての耳のトラブルは、
燃料不足に状態ある腎や、
エネルギー不足の状態にある耳にトラブルの種がある
わけで、
肝心(肝腎)の燃料を養わないと、根本の改善には行き着かないというのが、
漢方の教えといえます。
そしてエネルギー不足を痛感するのは、
やはりこれからの寒さが厳しくなる季節ではないでしょうか。

一休みすることを「一服する」と表現します。

「ちょっと一服しませんか?」とか、「あそこにある茶店で一服していこう」とか・・・。

一服するとは即ち、
お茶(+茶菓子)を服みつつ一休みすることに他ならないですが、
この考えは漢方にも通ずることで、
即ち、一服するというのは「飲んで、はい終わり。」ではなくて、
服む最中やその後の30分~1時間をどのように過ごすかで、大きく変わってきます

さしずめ「効かせ方」といったところでしょうか。

特に疲れとか冷えとか、そこからくるかぜとか痛みとか・・・。
中でも疲れというのは、服んですぐに動くことを良しとせず、
しばらく安静にしておくことが肝要です。
これを行わず、動き続けて働き続けて、効いた実感がないというのは、
当然の言われでしょう。

急がば回れとは、まさに的を得た表現かもありません。

漢方薬を飲むことも服むといいます。服むとは即ち一服すること。

漢方薬を服用されるときには、この点にぜひ気をかけていただきたい。
ですから漢方薬で一服するというのは、大ありなことです。
対して西洋薬で一服するというのは、通じない話だと思いますよ。
味気ないでしょ。


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