疲れの裏に乱れあり。
前回は、暑気による疲れに関係して、寒気による疲れに言及しました。
この寒気による疲れを解消する場合には、
からだを温めること(=陽気を高めること)が養生の基本となります。
実際に寒気を被(こうむ)って、冬かぜを引いた場合も同様です。
寒気による疲れは温めることで改善されるのであれば、
暑気による疲れは「冷やせば」改善される。
このように、考え及ぶかもしれません。
からだを「温めること」と「陽気を高めること」は、とても近い関係にあります。
しかし、からだを「冷やすこと」と「陰気を高めること」は、大きく違います。
冷えは万病の元と称されます。からだを冷やす事もそれは同じです。
冷たいものを口にすること(冷気を中に取り入れること)は、
暑い時季においてたしかに気持ちが良いものです。
ですがからだにとっては重み・負担となってしまます。
寒気に身を晒す事は確かにこたえますが、
寒気を内に取り入れる事は、それ以上にこたえるものなのです。
それがすぐに現れないのは、他ならぬあなたのからだが抗っているからです。
この冷気に伴う負担をできるだけ減らすという点では
「冷やすのはからだの表面のみにとどめておく」というのが適切とされています。
これは以前に述べました「風通しを良くする」や
「暑気疲れは一種の過熱状態」という事にも関連します。
ですが実際は、「暑気による疲れは冷やせば楽になる」と思い立ち、
果たして何人の方が夏場に冷たいものを口にしてバテしまう事でしょうか。
「暑いから冷やす」というのは、一部の例外を除き、大なり小なり誤りを含みます。
加えて、からだの内側から冷やすというのは大きな間違い。
その繰り返しの顛末が、寒気による疲れを引き起こすわけですから。
寒気を制するのは、まぎれもなく温かさ(陽気)です。
一方で暑気を制するのは、
適度な潤い(陰気)とそれを巡らせるための温かさ(陽気)です。
ですから、たとえ暑い時季であっても、からだを温めるものを摂取したり、
巡りを良くするよう努めていくのは至極当然な話です。
むしろそういうものを通じて、皆さんが「スタミナ」と呼ぶものが養われていく。
私はそう考えています。
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更新日: 2015/05/15 |
疲れの裏に乱れあり。
ここまで暑気による疲れについて解説してきました。 前回は暑気による疲れの裏には、 利用できない熱を抱えることで陥る、過熱様の状態があるというお話でした。 そして、またまた唐突ですが、 暑気による疲れがあるなら、その一方で寒気による疲れがあるのか。 あってもおかしくないですよね。 結論を先に言ってしまえば、寒気による疲れは確実にあります。 すなわち、寒気を抱えることによって疲れるという状態。 ただ、ここで注意いただきたいのは 暑気による疲れでは「疲れた」という言が口をついてすぐに出ますが、 寒気による疲れはそうではないという点。 ご自身の冬の生活を振り返ると、ご理解いただけると思います。 身の回りに「(寒くて)疲れた、疲れた」と口をつく方はいませんよね? もっとも寒い時季には「寒い、寒い」と言い、 暑い時季には「暑い、暑い」と口をつく点では大差なく、 暑い時季には次いで「(暑くて)疲れた」といってしまうだけの違いだと思いますが。 そしてこのことは言いかえると、 暑気による疲れは感覚に訴えてくる部分が大きいが、 寒気による疲れはそうではないということ。 この辺りは暑さと寒さの性質の違い、 それに対する体の反応の違いも関係してきますから、 正直に頭を垂れるしかありません。 (ちなみにですが、「痛み」に対する感覚はしばしば疲れと逆の関係にあります) ここからが本題になるわけですが 片や暑気に当たって疲れる、暑気疲れや暑気当たり。 そして片や寒気に当たって疲れる寒気疲れ。 この寒気疲れのもっとも身近な症状が、冬かぜです。 「寒気に身をさらして現れる症状」という見方をすれば、 冬かぜはまぎれもなく寒気当たりによる症状。 実際にもからだに何らかの寒気を自覚しているでしょ。 この寒気当たりには、さらに激しい症状となればそこに凍傷なども含まれてきます。 そして、暑い時季は暑気当たり(疲れ)に加えて、 冷房の多用や冷たいものの取り過ぎで、 この寒気当たりを自ら抱えてしまう事が実はよくあります。 例えば、「カキ氷を食べて頭がキーンとする症状」。 これは全身は暑気に当たっているが、 首から上は寒気に当たっているという、何ともアンバランスな状態です。(つづく) |
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更新日: 2015/05/13 |
疲れの裏に乱れあり。
ここ数回に渡り、暑気による疲れについて述べておりますが、 そもそも「暑いから疲れる」というこの症状(というか現象)に 疑問に感じたことはありませんか? 盛夏に汗をかき過ぎて消耗して疲れる。 服水のし過ぎでからだが重だるくなって疲れる。 そのようなケースでは疲れてしまう事にもうなづけると思います。 ですがそういうことを伴わずとも「ただ暑いだけで疲れる」。 これはいささか腑に落ちないと思ったことはありませんか。 もっとも、理屈はどうあれ、 暑さに長時間さらされると現実に疲れる事は疑い様もありません。 「暑気当たり」といわれるように、暑さは暑気を帯びています。 ですが暑気とは私たちにとっては利用できない熱エネルギー、いわば廃熱です。 私たち自身は体内でエネルギー:気を錬って生きています。 そして体内で作られるエネルギーは質が良いので、 体熱をはじめ様々な形で活用されます。 対照的に、外からやってくる暑気は質の悪いエネルギーで、 活かし様がないわけです。 からだに抱え込んでも活用することができませんし、むしろ荷物にしかならない。 けれども暑気に身をさらすというのは、 多かれ少なかれそういう廃熱をにからだに蓄えることになる。 すると、過熱:熱し過ぎるわけです。 この過熱した状態を疲れとして感覚するわけです。 そして店頭でこのようにお話しすると、 「では、出歩かない方(暑気にからだをさらさない方)が良いんじゃないか?」 と考え及ぶ方もいます。 けれどもそれはとどのつまり、 「疲れないようにする為に、疲れる事をしない」のと同じです。 それではますます駄目になっていきませんか。 暑気に身を晒さない方法よりも、身を晒す暑気への対処法を備える。 これこそが健康への一歩だと思います。 |
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更新日: 2015/05/11 |
疲れの裏に乱れあり。
季節外れともいえる、この時季の暑気による疲れ。 その対処法の一つとして、前回は 『からだの風通しを良くしておくこと』を述べました。 春風や春一番といわれるように、 春は他の時季と比べて風と関わりが深く、風が生じやすい季節です。 そして自然界に風が生じやすい季節では、 人の中にもやはり風が生じやすくなります。 内に吹くことから、しばしば「内風」と呼ばれるこの風。 風は目には見えませんが感じる事はできます。 そして風を心地良く感じる時もあれば、鬱陶しく感じる時もあります。 追い風、向かい風・・・。人の心と内に吹く風は、さながら波と風のような関係です。 そして暑気疲れに対して「風通しを良くしておく」というのは、 そういう波と風の関係を踏まえながら、 風の通り道を作りつつ、からだを閉めきらないよう心掛けるということです。 この辺りは抽象的な話なので、わかりにくいかもしれません。 風の通り道を設けるというのはすなわち、 風を遮らないようにしつつ、風が淀み乱れないようにすること。 これは「自然体」という言い回しが、的を得ているかもしれません。 そしてからだを閉め切らずに熱を逃がすとは とどのつまり、風穴を「詰まらない」、「詰まらせない」ということ。 「根を詰めない」「集中しない」「窮(きゅう)しない」・・・。 しばしば「冷静になる」と表現しますが、まさしくその境地です。 冷静になる、リラックスした状態になる。 そういうものを通じて、硬いものは軟らかく、結んでいたものは綻びます。 そうして風穴が開いていくわけです。 以上をまとめますと、 ①春の養生は「風」が一つのキーワード ②それは季節外れの暑気疲れに対しても同じ ③春に吹きやすい風を最大限に活用していく ④熱を溜めずに外へ逃がしつつ、からだの内には波風を立てないようにしていく というように言えると思います。 ![]() こちらの記事は、漢方柿ノ木薬局のfacebookでも掲載しています。 facebookへはこちらから ![]() また漢方柿ノ木薬局の詳しい情報はこちらでも ![]() |
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更新日: 2015/05/08 |
疲れの裏に乱れあり。
ゴールデンウィークはいかがでしたか。 春の陽気に誘われ遠出をする。 近郊でピクニックをして悠々と過ごす。 家族サービスに勤しむ。 十人十色の過ごし方があったかと思いますが、 その様な中、ゴールデンウィークの暑さはあいかわらず旺盛気味でした。 黄金週間で英気を養うつもりが、返って疲れて、体調を崩してしまう。 最近はそういうケースも少なくないと耳にします。 これをお読みの皆様はいかがでしょうか。 さて、前回の中で、 春季に旺盛な暑気による疲れの裏には、 暑さへの対応力が未熟なことが影響していると述べました。 「暑さへの対応力」とはすなわち、 ①暑さに対してからだが自ずと速やかに反応すること ②反応する中で活発になる働きや旺盛になる機能のこと:例えば発汗 の組み合わせと考えられます。 そして暑さによって疲れやすい方はこのうち、 ①暑さに対する反応が緩慢 ②対応して活発になる働きや機能が不十分 この二つのいずれか(もしくは両方)が関与していると考えられます。 春先は特に、季節の変わり目:三寒四温であることも影響して、 このうちの特に①暑さに対する反応の緩慢さが大きく関与します。 では、その対処法ともいうべき方法ですが、一つには『暑さに慣らしていく』。 当たり前の話ですが、そもそも暑さに慣らしていかないと、 暑さに対して反応していくことなどできません。 実際にも、暑い土地で長く生活する人には、 暑さに対する対処法も然ることながら、「暑気に対する抵抗力」が養われていく。 逆に、暑さ対策を文明の力に頼りすぎるのは、 暑気に対する抵抗力を衰えさせたり、 からだに備わる暑さのアンテナを鈍らせますから注意が必要です。 この点を踏まえた上で、さらにもう一つは『風通しを良くする』。 盛夏の暑さと異なり、この時季の暑さは湿気を帯びていない為、 カラッとしており、その中で吹く風はとても心地良いものです。 風が涼しさを運んできてくれるわけです。 家屋は、窓や扉をすべて開けておくと風通しが良くなります。 そして薄着は、体の表面近くの風通しを良くすることですが、 これに加えて、『からだの内側の風通しも良くしておく』ことで、 熱が篭りにくく、暑さ疲れも溜まりにくくなることでしょう。 そして、詳細は次回としますが、『からだの内側の風通しを良くする』とは、 漢方の養生の基本『巡りを良くする』という事に帰結していきます。 ものが巡れば流れができて、流れができればそこには自ずと風が生じます。 自然界でも人のからだでも、それは変わりません。 ![]() こちらの記事は、漢方柿ノ木薬局のfacebookでも掲載しています。 facebookへはこちらから ![]() また漢方柿ノ木薬局の詳しい情報はこちらでも ![]() |
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更新日: 2015/05/07 |