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腸で幸せホルモンが作られる
前回号では、朝食にトリプトファンとビタミンB6が含まれている食べ物を食べると、体内時計のリズムを整えると言われているメラトニンが夜作られ、眠りもよくなるというお話をしました。ビタミンB6は他のビタミンB群とビタミンKと同じように、腸内細菌も合成しています。脳に入ったトリプトファンからメラトニンが松果体で作られる間には、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが作られます。
 脳と同じように腸は、セロトニンや、やる気を高めてくれるドーパミンなどの神経物質も作っています。腸で作られた神経伝達物質が腸の神経を刺激し、迷走神経を通じて脳に伝わり、気分や感情に影響を与えます。腸内環境が整えられると脳内のセロトニンが増加するのですが、腸内細菌の状態が悪いとセロトニンが作られにくくなり、結果として脳内のセロトニンも不足してしまいうつ病を発症しやすくなります。お店で扱っているベストトリムにも入っているブレーベ菌は、マウスに与えたところ、不安症状の軽減が認められたそうです。腸内細菌によって腸で多く作られやすくなったセロトニンが脳に運ばれているのでしょうか?脳の血液脳関門という仕組みによりセロトニンは脳に入ることはできません。セロトニンの素(5-ヒドロキシトリプトファン)が、脳内に入ることで脳でセロトニンに変わり、増えるようです。セロトニンは全身の90%は腸管に分布し、そのほとんどは腸クロム親和性細胞の顆粒内に局在していて、腸内細菌によって作られた単鎖RNAが、腸クロム親和性細胞のPiezo1というものを活性化して、セロトニンを産生するようです。腸内細菌の状態がいいと脳のセロトニンが多くなるということは、メラトニンも多く作られることになり、眠りにもよさそうですよね。 

腸内細菌と睡眠
 筑波大学などのグループは、長期間、抗生物質を投与することで腸内細菌叢を除去したマウスを用いて、腸内細菌叢と睡眠の関係について調べたそうです。腸内細菌叢除去マウスと正常なマウスの盲腸内容物を調べたところ、腸内細菌叢除去マウスではビタミンB6が有意に減少し、セロトニンが枯渇している一方で、抑制性神経伝達物質であるグリシンとγアミノ酪酸(GABA)には有意な増加が認められました。腸内細菌叢を除去したマウスでは、覚醒と睡眠の昼夜のメリハリが弱まっていること、レム睡眠に特徴的な脳波成分であるシータ波が減少していることがわかったそうです。腸内細菌がいなくなると睡眠の質を低下させる可能性が示されたとのことです。
 
腸内細菌と漢方薬
 体内で代謝されて、化学構造が変化してはじめて効果を示す薬物をプロドラッグと言います。漢方薬の成分には天然のプロドラッグと言われるものがたくさんあります。糖がくっついている配糖体というものは、分子がかさ高く、水溶性であるため消化管上部では吸収されにくく、大腸まで運ばれて代謝されます。糖が酸素で結合したO-配糖体、炭素で結合したC-配糖体があり腸内細菌が糖部分を加水分解して、糖がないアグリコンになります。C-配糖体は酸やアルカリに強いため、腸内細菌がいなければ、容易に加水分解されません。葛根湯の中の生薬・葛根に含まれるプエラリンはC-配糖体でそれ自身では女性ホルモン作用は示しませんが、糖部分が除かれたダイゼインには顕著な作用があります。同じく葛根に含まれるダイジンはO-配糖体で、糖が除かれると同じダイゼインになります。そしておなかにエクオール産生菌がいる方はダイゼインをエクオールに変換することができます。エクオールはダイゼインより体内保持期間が長いため、排泄されにくく女性ホルモン作用も強いとされています。腸内細菌によって、漢方薬の効き目も変わってくるのですね。気づいている方もいらっしゃると思いますが、大豆中には配糖体のダイジンが含まれ、味噌や醤油のような大豆の発酵食品の中には、糖が切り離されたダイゼインが含まれています。

幸せを感じて、漢方の効き目をよくするためにも、おなかの中の味方を応援したいですよね。発酵食品やベストトリムで善玉菌を取り入れ、善玉菌を増やす発酵性食物繊維を食べましょう。具体的な食べ物については相談の時に聞いてくださいね。

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34歳の時、不妊治療でなかなか赤ちゃんを授からず、漢方薬の服用で一人目を自然妊娠されました。その後、二人目は自然にできるものと不妊治療や漢方薬もせず様子を見ていたようですがなかなか授からず、漢方のご相談に見えられました。
身長167㎝体重53㎏とやや痩せ型で、顔の汗、足の冷え、浅い睡眠、疲労感などの症状があります。生理は正常にありますが、生理前は不安感ややる気が出ないなどの症状があります。
 漢方薬の当帰建中湯を調合。飲み始めると、足の冷えは改善していきましたが、顔の汗や睡眠は改善されず、寝汗や動悸、息切れもあるといいます。
柴胡桂枝乾姜湯に変えて1か月後、よく眠れるようになったといいます。さらに1か月後、寝汗、動悸、息切れが改善し、前より疲れにくくなったといいます。
そのまま漢方薬を服用し、4か月がたったころ、「妊娠しました」とご連絡がありました。
その後は当帰芍薬散に変えて無事にご出産されました

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「妊娠する力」を高める漢方処方ってありますか?
日常生活では何に気をつければよいのでしょう
人工授精に4回チャレンジしましたが、よい結果に結びつきません。同じころに治療を始めた人が次にするので、ちょっとあせっています。「妊娠する力」をアップするには、どうすればよいのでしょう? 日常生活で気をつけるべきこと、おすすめの漢方処方があれば教えてください。
(治療歴5年、41才)

元気な卵をつくり、育てるために「体をあたため」「血流をよくする」ことが大事。
食事、適度な運動、そして漢方薬の活用を

妊娠するために必要な力は2つあります。1つは「元気な卵をつくる力」、そしてもう1つは「卵がしっかり育っていくためのベッド= あたたかな子宮」。この2つのどちらかが欠けてしまうと、なかなか妊娠できないのです。この2つの妊娠するための力を高めるために、漢方薬でできることが「体の中の血(水、気)の滞りを改善すること」と「子宮の中をあたたかい状態にすること」です。血液の流れがよくなると、卵巣に新鮮な血液が送り込まれ、元気な卵をつくることがでるようになります(水や気の滞りも体のさまざまな循環や新陳代謝を低下させ、妊娠を妨げるので要注意)。そして子宮の中をあたたかい状態にしてあげると、卵が育ちやすく、さらに体全体の機能が向上し各器官の機能がアップするというわけです。体をあたためるために使う薬草の主となるのは、当帰というセリ科の植物。私の薬局で不妊相談にいらっしゃるかたに使っているのは、当帰の中でも最も良質で効能も高いといわれている大深当帰を無農薬有機肥料で栽培したもの。落ち葉やモミガラ、期英などをまぜて作る有機肥料を使っての栽培はたいへん手間がかかりますが、化学肥料で作ったものとはにおい、味、効能が比較にならないほどよいため、私たちは有機肥料にこだわっています。たとえば最近人気の有機野菜で育った鶏の卵を思い浮かべてください。有機野菜をエサに放し飼いで育った鶏の卵は黄身が球のようにまん丸に盛り上がり箸でつまるほど元気で、鶏小屋に詰め込まれブロイラーで育った卵とはパワーが違いますよね。人間だって、
元気な卵をつくるには「有機の力」と「運動」が必要なのではないでしょうか。特に、長期間にわたって不妊治療を受けてきたかたは、さまざまな薬やストレスなどで卵巣もかなり疲労してい
ます。そんなかたたちにこそ、有機育ちの薬草を使ってもう一度元気な卵巣、子宮をとり戻していただきたいと思うのです。日常生活では体をあたためる食べ物を積極的にとり、適度な運
動をすることをおすすめします。

処方の実例
治療歴6年。半年間なかった生理が2カ月で再開し、自然妊娠。

今回の体験者は35才で不妊治療歴6年。人工授精は10回以上、体外受精も2回チャレンジ、病院からは多嚢胞性卵巣と診断されたAさん。Aさんからのご相談は、「長年に及ぶハードな不妊治療のせいか、半年間生理がこなくなってしまった。漢方薬で体調をよくしたい」というものでした。Aさんは顔色はのぼせ傾向で、体格や体つきはしっかり(身長163cm、体重58kg )、
テキパキとしたいわゆるキャリアウーマンタイプのかた。生理前はイライラして寝つきが悪い、手足は冷えやすく、便秘・下痢ともに起こしやすい、甘いものが好きでコレステロール値は300近くあるとのことでした。そこで柴胡剤の薬方を1カ月分処方。すると微熱と下痢が3日ぐらいつづいたそうです。これは漢方特有のめんげん反応というもので、長期にわたる薬物治療で体内に滞った薬物を漢方が解毒している状態なのです。漢方薬で体内にたまった毒を排出して体
内がきれいになり、生理が回復したのは漢方服用後2カ月目のことでした。さらに同じ薬を1年半つづけたあと、子宮を温める目的で、当帰四逆加呉茱萸生姜湯を服用していただきましたところ、3カ月後に自然妊娠されました。

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母性を失っているために不妊に悩むかたがふえているのかも?
不妊症でご相談にいらっしゃるかたから「他人が連れている赤ちゃんやよそのお子さんの姿を見ていると、落ち込んでしまう」と言われることがよくあります。そういうかたの中には「赤
ちゃんや子どもを見ているとつらくなるので、小さな子どもたちが集まるような場所を避けています」とおっしゃるかたもいます。よそのお子さんを見て悲しくなったり落ち込んだりするの
は、「望んでいるのに子どもが授からない」「一生懸命努力しているのになかなか妊娠しない」と悩む不妊症のかたにとって、ある意味当然といえる心情なのかもしれません。しかし、私たちは、それは不妊に悩むかた特有の気持ちだから、というだけではなく、もしかしたら現代の女性
が全般的に母性という本能を失ってしまったことも一因なのではないか、と思うのです。人間が本来持っているはずの母性を失いつつあるということも、いま、不妊に悩むかたがふえてい
る現象につながっているのではないでしょうか。
たとえば「1人目を授かるまでには苦労したが、2人目はわりと簡単に授かった」といったことをよく耳にします。これなどは、1人目の赤ちゃんを育てているうちにその女性の中にある
母性が強くなり、それが体のコンディションをととのえ、次の妊娠につながったのかもしれません。
自然にふれる、植物を育てるなどして母性を強めてみませんか。
本来、母性とは、おおらかでやさしく、赤ちゃんを包み込んで育てようとする才能で、人間の持つ本能の一つです。しかし夫の帰りがおそい、仕事の人間関係でイライラする、悩みがあって家に閉じこもりがち.…など、いつも不満をかかえてギスギス・イライラしていると母性のエネルギーはどんどん弱くなっていきます。最近はお仕事を持ちながら不妊治療にとり組むかたも少なくありません。仕事の場、「社会」は、ある意味戦場のような場所です。戦前の多くの女性のように畑を耕すのが仕事というので
あれば、それはよい運動になりますし、植物を育てることで母性につながる工ネルギーがはぐくまれていったことでしょう。しかし朝から晩まで机に向かってパソコンを打つような現代社会
の仕事では、運動不足にもなりますし、何かを育てる、慈しむという場も多くないため、母性のエネルギーも弱まるばかりです。ですから、そんな自覚のあるかたは、せめて休日だけでも自然のたっぷりある田舎に行って過ごしたり、緑のある公園に散歩に行くなどしてみてはどうでしょう。時間がないというのであれば庭やベランダなどで植物を育てたり、小動物などペットを飼って世話をするのもよいですね。日常生活でイライラした心もいやされるでしょうし、何かを育てるという体験そのものが、女性が本来持っている母性本能を強めてくれるのではないかと思うのです。

「内膜が薄く、着床しにくい」。冷えをとり循環をよくする処方で
今回ご紹介する患者さんは40才。2人目の赤ちゃんをほしいと思って約2年間で人工授精4回、体外受精1回にチャレンジ。たび直なるホルモン治療の結果、子宮内膜が薄くなっていて、医師からは受精しても着床しにくいだろうと言われたそうです。その後、ご本人がホルモン治療をつづけていくことに不安を感じ、病院での治療を中断。「漢方薬だけで赤ちゃんを授かる体質に改善していきたい」というご相談を受けたのです。このかたにいろいろ伺うと、色白で体質は冷え性、疲れやすく月経も毎回ひどい、ふだんからおなかが張りやすく便秘ぎみ、腰痛があり、腰がいつも冷えて重い感じがする、果物や甘いものが好きとのことでした。甘いものや果物など体を冷やす食品を多くとると、食物を血に変える胃腸が冷えて新陳代謝が低下し、水の循環が悪くなり体内に余分な水分をため、さらに体を冷やします。そのために下腹部の血流やホルモンの循環が悪くなっていることも、子宮内膜を薄くしている要因ではないかと考えました。そこでまず腰まわりにたまっている水分を除き、下腹部をあたたまりやすくする苓姜朮甘湯を1カ月処方。すると月経痛がまったくなくなったそう。次に胃腸に力をつけながらおなかをあたためる当帰建中湯を処方したところ、みごと2カ月後に自然妊娠されました。

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1年前より眠れなくなってきたといいます。病院で睡眠導入剤をもらうと眠れるようですが、ずっと飲み続けることに不安を感じ、漢方のご相談に見えられました。
性格は、几帳面で神経質、ストレスをためやすく、イライラ感、のぼせ感、まぶたのケイレン、足のつりなどがあります。
 漢方薬の抑肝散加陳皮半夏を調合。
飲み始めて1か月後、睡眠導入剤を止めても、なんとか眠れるようになっているといいます。さらに1か月後、イライラ感が減り、まぶたのケイレンや足のつりが起きなくなったといいます。
睡眠は、眠れるようですが、まだ朝早く起きてしまうといいます。
漢方薬を柴胡桂枝乾姜湯に変えて1か月後、ぐっすりと眠れるようになったといいます。
その後、漢方薬を1年飲んで止められましたが、不眠になることはないといいます。


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