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40歳代 女性 
 この若さで、どうしてこんなにたくさん安定剤や睡眠薬が必要なのだろうと思いながら、それでも当然のことながら、処方箋通りに調剤していた。精神病薬が必要になった過程など薬局で聞く権利もないし、患者さんも口は重い。ただ、患者さんからふとそうした問題を投げかけてくれれば、一緒に答えを求めることはできる。
 この方は、消化器系の不調で息子が勤めている病院に変わった。心療内科の処方をそのまま息子は引き継いだことになる。こうなれば僕も少しは意見が言えるようになり、本人も元気になって薬を減らしたいと思い始めた。
 現代薬と漢方薬(心身ともに元気にする煎じ薬)を併用して飲むようになってそれでも数年になる。家庭の問題が解決しないまま転職し、しかしながら趣味を楽しむ余裕も出てきて、それなりに楽しそうな日々を送っている。
 飲んでいる薬を知らされなければ誰も彼女が心の病気だとは気が付かないだろう。僕など毎回そう(元気そのもの)思う。
 今日処方箋を持ってきたときに、いつも以上に笑顔がこぼれていた。安定剤と睡眠薬を一つずつ減らせたのだ。自分から減らしてもらうように申し出たのだろう。
「姉御、よかったね」と一緒に喜んだ。と言うのは、素朴で善意の塊のような彼女は嫁ぎ先の悪意の通報で一晩留置所で過ごしたことがある。その逸話を聞いてから僕は「姉御」と呼んでいる。
「ええ、お控えなすって!」


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