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50歳代 女性 
 病院通いが頻繁だった方が、僕の漢方薬と出会って、この10年くらいはほとんどの不快症状を漢方薬で解決してきた。漢方薬で多くのトラブルに対処できると実証してくれたような方だ。
 今年の初めに頻尿になり、その漢方薬を依頼された。繊細な方だからストレスが影響していると見て神経性頻尿の漢方薬を作っていた。ところが僕の予想期間を過ぎても漢方薬を取りに来るから、なんで効果が出ないのだろうと不思議に思っていた。
 ある日の会話でその理由が分かった。僕も泌尿器科の先生も神経性頻尿だと判断しているのに、本人は、お嬢さんがスマホで見つけた間質性膀胱だと信じ切っていたのだ。だから少し好転しても、もう治らないなどと最悪のことを考えていたのだ。こうなると僕の考えや、泌尿器科の診断など信じることはできない。スマホの文章の中から心地よい言葉を選び出し、それが唯一の正解だと権威づけてしまう。
 もうこうなると僕の出番はないが、それでも漢方薬を取りに来る。間質性膀胱炎の漢方薬や、無菌性膀胱炎の漢方薬や、神経性膀胱炎の漢方薬を「気休め」に作っていたが、これ以上は薬剤師としても長年の付き合いからしても遠慮すべきだと思って漢方薬を中断した。1週間に一度やって来ては、心身ともにやつれていくのを見るのが心苦しかったのもある。
 途中、僕の勧めで泌尿器科にかかり、内視鏡検査を受けたのだが、内視鏡が尿道に入らずに先生が断念したのも回復のチャンスを失った大きな要因だった。色々なことが重なって、心労が激しく、ご主人がご自分の煎じ薬を取りに来るたびに、奥さんのやつれようを報告してくれた。食欲がなくまともに食べない。疲れて何も出来ない。
 本人はとても善良な方で、僕の薬局のスタッフ全員が好感を持っている方なので、僕は漢方調剤を辞退したことを後悔した。そこでご主人に、とにかく心身ともに元気にさせてと頼んで、ある天然薬を2種類購入してもらった。運のいいことにご主人はそんな薬があるなら、是非徳用を下さいと言って、1か月半分の薬を持って帰ってくれた。
 今日処方箋をご主人が持って来た時に、例の薬を欲しいと言う。なんとご主人があれだけ心配していた食欲が、従来に戻り、よく食べていると言われ、倦怠感も改善しているらしい。あの思い込みさえなければこれで完治なのだろうが、頻尿はまだあるらしい。
 基礎体力がこれから上がって来れば、きっと頻尿も良くなるだろう。少なくとも敵は本能寺にありなのだから。


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