80歳代 女性
1か月前に「沖縄に行ってもいいじゃろうか?」と相談を受けた。お孫さんがお母さんとおばあちゃんを沖縄旅行に連れて行ってくれる計画を立ててくれたらしい。ただしこの女性は、脳神経外科で治療を受けている方で、ふらふらして外出が怖い方。そんな方に「行ってきたらいいが」とさすがに僕も言えなかった。何かあった時に責任は取れないし、そもそも僕にそんな権限はない。
ただし、20年以上僕の薬局を利用してくれているから、様子はよく分かっていて、脳外で治らないフラフラも漢方薬で改善できるだろうとは思っていた。出発までまだ2週間あったので、運が良かったらフラフラが改善して行けるかもと内心やる気満々で漢方薬を作って渡しておいた。
最終的には「せっかく専門医にかかっているのだから、先生に聞いてみて!」と責任転嫁して、そこから僕の頭の中から、その家族の沖縄旅行は消えていた。
今日お母さんとおばあちゃんが紙袋を持って入って来た。その瞬間、そういえば1か月前に沖縄旅行の是非について相談を受け、漢方薬を作っていたことを思い出した。ただお土産らしきものを手に持っていたから、内心「行ってきたんだ」と安堵した。
案の定行けたみたいで、その内容も期待以上で、いい思い出作りをさせてもらったと礼を二人から言われた。
と言うのは、飛行機に乗っても耳が塞がることもなく、現地では1日最高12000歩歩いたそうだ。フラフラして1か月前にはお母さんに手を引かれて薬局に入って来たのに。
こちらでは夜は危ないからと外出しなかったのに、沖縄の夜の町を、お孫さんと歩いたり、挙句は夜の桟橋まで渡ったりと、多くの武勇伝を聞かせてもらった。
3代が揃って沖縄旅行を楽しんだことになるが、こうした家族関係を築いているお家があるんだと、その毛の全くない僕には衝撃的だった。家族と言うより同業者の集まりと言った方が的を射ているような家庭からすると、羨ましい限りだ。その演出に僕が一役買う所がまた皮肉だ。
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更新日: 2025/02/18 |