93歳にして、自分で電話をしてきて、症状を説明して薬を娘に取りに来させる。症状を正確に説明してもらわないと僕も漢方薬の作りようがないから、若干不安だったが、下手な若者より語彙が豊富で分かりやすい。
　風邪を引いて病院にかかっているが、どうも痰が切れなくて困っている。声もかなりかすれていた。こんなときの病院の定番はムコダインだが、あまり効果が得られていないらしい。実際電話の途中でも喉が乾燥してふさがるのか、しゃべりにくそうだったし、咳払いばかりしていた。老人を治すときは潤いをもたせるようにすればいいから、そうしたことができる漢方薬を飲んでもらった。4日分ずつ薬を取りに来てもらって、3回で完治した。
　すると、実はもう一つ困っている症状があると後日相談された。この症状はずいぶんと長いらしく数年といっていた。その症状では何軒か医院を訪ねたらしいが、言うことがまちまちで結局どこの薬も効いていないらしい。最後には病気ではないから来なくてもよいといわれそのことで少しばかりショックを受けているとお嬢さんが教えてくれた。その症状は相談を受けたときに、確かにつらいだろうなと想像できた。「月賦が払えずに心苦しい」と言うものだった。いまどき月賦という呼び方は珍しいなと思ったが、お年寄りだから今風の呼び方は苦手なのだろう。また亡くなった御主人をはじめ厳格でよく出来たお家だから、月賦の支払いが滞れば心苦しいに決まっている。踏み倒せるような家庭ではない。「でも○○さん、心苦しいのはよくわかりますが、月賦の相談だったら銀行にでも行ったほうがいいのではないですか？」「銀行に行ったら胸苦しいのをとってくれるんですか？」「えっ、心苦しいのではなく、胸苦しいのですか？大体同じ目的のために使いますけれど、やはり人に迷惑をかけるときは心苦しいのほうが正しいですね」「私は人に迷惑をかけていませんよ、月賦くらいで」「でも月賦を払えなくなったらやはり相手は困りますね」「何で月賦を払わなくてはならないの、げっぷが出なくて困っているだけなのに」「げっぷが出なくてって、口から出る空気のこと？」「そうですよ、食後にげっぷが出そうなのに、出ないからこの数年つらいんですわ」「ひょっとしたら○○さんが困っているのは、げっぷが出ずに胸苦しいってことですか？」「最初からそう説明していますけど」
　先入観とは恐ろしいものだ。お詫びに漢方薬を根性で作った。2週間分で無理に月賦を、いや、げっぷを出すようなことを食後にする必要がなくなってくれた。やはりげっぷ（月賦）は払うものではなく、出すものだ。

60歳代　女性　２０１４・８・２９
5月ごろ、疲れや対人関係のストレスで体調を崩した。6月に膀胱炎になり病院で治してもらった。ところがその後半月くらいで再発し、病院の薬が効かなくなった。残尿感があり、おしっこをするたびにしみるのだそうだ。毎日が不愉快で何とかならないかと相談を受けた。漢方薬を2週間飲んでもらったらそれで完治した。やはり長引く膀胱炎には漢方薬しかないと思う。

７0歳代　男性　２０１４・８・２７
もう半年くらい口の苦味で困っている。この方の特徴は「口が苦くて夜眠れない」と言うレベルだろう。今まで何人か口の苦味のお世話をしてきたが、それが原因で眠れないと言うのは初めてだ。確かに今までかかった病院の名前を教えてもらうと、よほど困っていたのだと思う。そんな症状を僕が治すと失礼に当たるかもしれないが、2週間漢方薬を飲んでもらったら、口の苦味で目が覚めることがなくなり、日中もかなり苦味が消え楽になったと喜んでいた。「もう止めてもいいじゃろうか」と言えるほどで、せっかくだから完治させたらと言ってもう2週間飲んでもらうことにした。

３0歳代　女性　２０１４・８・１５
２ヶ月近く、毎日吐き気で悩んでいる。病院や薬局の薬を飲んでいたが埒が明かない。僕は相談を受けたときに、胃の薬が必要なのではなく、ストレスの薬で治るのではないかと思った。そして２週間分だけ、ストレスから来る吐き気の漢方薬を送った。すると１回飲んだだけで吐き気が止まったそうで、１日３回飲む漢方薬を自分で１回だけ毎日飲んでいるそうだ。それで吐き気は起こらないからいいでしょう？と尋ねられた。勿論それでいいし、もう止めても大丈夫かもしれない。

４0歳代　女性　２０１４・８・１２
高校生から偏頭痛で悩まされていた。頭がガンガン痛み、頭を振ることは出来ない。必ずと言っていいほど吐くから生活の質が悪く、勤めに行くのがストレスだ。２週間分漢方薬を飲んでもらったら、その間頭痛が起こらずに、頭痛薬も飲まなかった。３０年ぶりの爽快さに信頼を得られたのか、家族の方のトラブルも治してと連れてこられた。