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 先月放映されたテレビ番組【発掘!あるある大辞典】で『プチうつ』について紹介していました。
 『プチうつ』とは、病院で治療を受けるほどではないけど、なんとなく気分が晴れない、落ち込みやすい、あまり外出したくない、人と話すことがおっくう億劫といった、軽い(プチ)うつ症状のことを指すようです。
 番組では、このプチうつの人が最近かなり増えているといっていました。
 通常、うつは強い精神的ダメージを受けることで起こることが多いのですが、中にはそのようなダメージがないのにうつになってしまう人もいます。原因は小さなストレスの積み重ね。それが脳や体のエネルギーを消耗させてしまう、うつ症状になっていくというものです(自覚がなく進行する)。

 また、うつに陥りやすい性格のタイプとして次の2つを挙げていました。
① 完璧型人間→常にストレスが多く、エネルギーを消耗しやすい。
 ・目標を達成できない・・・・いらだちで日々ストレスを感じている。

② 円満型人間→欲求を抑えることでストレスがかかり、エネルギーを消耗しやす
  い。
 ・人との和を乱さないように過剰の気を使うため、エネルギーを消耗する。

 日々ストレスが多く、上のどちらかのタイプに当てはまる人は、十分休息をとったり、気分転換を心がけてみた方がいいかもしれませんね。

【漢方医学的な考え方】
 漢方の古典に「恬憺(てんたん)、虚無(きょむ)、精神内に守れば、病、何によってか生ぜむ」とあります。
 つまり、心を平静に保ち、思いわずらわず、ストレスをうまく発散させていれば、病気にはならないということです。
 また、「百病は気より生ず」とあり、東洋医学では、七情(喜・怒・憂・思・悲・驚・恐の七つの感情)がこう昂じると病気になるとして重視しています。
 特に、現代のうつ病に相当すると思われる『気積(きせき)』という病気の原因は、「憂(うれう)・思(おもう)・怒(おこる)」の感情で、これが鬱積し内臓の機能を低下させて発症すると考えています。

 漢方では五臓六腑のバランスを調整し、気血のめぐりを改善して、うつ症状を緩和させていきます。
【よく用いられる漢方薬】
・柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
  体力は比較的あり、のぼせて動悸がし不眠を訴え、不安感やイライラがあって
  便秘気味の方に用います。

・柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
  神経質でゆううつ感が強く不眠や動悸があり、体力はあまりありません。
  のどが渇き、時に寝汗をかくことがあります。

・補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
  胃腸を丈夫にして気力・体力を高める作用があります。
  やる気がなくて体もだるく、食欲が落ちている人に。

・加味逍遥散(かみしょうようさん)
  イライラや不眠などの神経症状を強く訴え、頭痛やめまい、動悸がある女性に
  多く使用します。更年期のうつ症状にも。

・半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
  気のめぐりをよくして気分がふさいでいる状態を改善する効果があります。
  のどに異物感があるとよく訴えられます。時に動悸やめまいもあります。

【症状の見方】
 まったく眠れない人もいれば、寝てもすぐ目が覚めてしまう人も、なかなか寝つけない、夜中に目が覚める、朝早く目が覚める、熟睡感がないなど、不眠症にもいろいろなタイプがあります。
 うつ病や高血圧症、脳動脈硬化症などの病気が原因になっていることもありますが、ほとんどは神経性のものです。

【西洋医学的な考え方】
 睡眠導入剤などの投与で緊張をといて眠りを誘う。
原因疾患がない単なる不眠症の場合は、西洋医学では催眠薬や睡眠導入剤などを投与します。最近は、安全な西洋薬が多く開発されており、医師の指示に従って飲む限り、特に危険はありません。

【漢方的な考え方】
 目がさえてしまって全然眠れない、こういう状態は疲れすぎたときや産後によくみられ、「肝」の機能が低下し血が不足していることから起こります。また、夢ばかり見て眠った気がしないというのも「肝」が弱まることから起こります。
 寝つきの良し悪しは、胃腸が関係しています。つまり、空腹でも満腹でも胃腸が働いてしまって睡眠を妨げてしまうのです。
 朝早く目覚めるのは「腎」が弱っていることから起こります。年をとると腎が弱まるので朝早く目が覚めてしまいます。
 漢方では以上の観点から不眠の原因を探り、五臓六腑の弱りを改善することで、不眠に対応していきます。

【よく用いられる漢方薬】
 漢方薬には睡眠導入剤にあたるものはありません。
即効性は期待できませんが、服用を続けていると徐々に自然な形でぐっすり眠れるようになってきます。
 また、西洋薬のように依存性がなく目覚めが良いので、睡眠剤を止めたいと思っている方も試してみられるといいでしょう。

・柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
 一見、丈夫そうにみえるタイプで、脇からみぞおちにかけてつかえたり、おさえると痛んだりします。動悸がみられ、のぼせ、イライラがあって便秘気味の人に有効です。眠りは浅く、よく夢を見る傾向にあります。

・柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
 柴胡加竜骨牡蠣湯の場合と同じような症状を訴える人に用いますが、体力はあまりなく、神経質で軟便気味です。

・加味逍遥散(かみしょうようさん)
 女性の不眠症に汎用されます。寝つきは比較的良いのですが、夜中にたびたび目を覚まします。不眠症の他に、疲れやすい、頭痛やめまい、イライラしやすく時々のぼせるなどの不定しゅうそ愁訴があります。更年期に伴う不眠症によく効きます。

・加味帰脾湯(かみきひとう)
 虚弱な人で、心身過労の結果、精神不安、抑うつ傾向、動悸、健忘傾向に伴う不眠に用います。立ちくらみやめまいなどの貧血症状もあります。

・半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
 胃腸の機能を改善して不眠を改善する薬です。みぞおちがつかえて重苦しく、食欲がなくて下痢しやすいです。寝つきが悪い方が多いようです。

・八味地黄丸(はちみじおうがん)
 中年以降で朝早く目がさめる方によく用います。
のどの渇き、夜間頻尿、足腰の弱りや痛みなどの症状を伴います。


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