• お問い合せ
  • サイトマップ
  • 個人情報保護
  • 交通アクセス
  • 漢方薬 漢方薬局 薬店のことなら きぐすり.com
  • ホームへ
  • 店舗紹介
  • 相談方法
  • よくあるご質問

10歳代 女性 (過敏性腸症候群 ガス漏れ型)
 確か1年くらい前に、他県からお母さんと一緒に漢方相談に来てくれた。過敏性腸症候群で、大学受験を見送った後だった。
 二人の顔は覚えていないが、記憶にあるのは、最初の相談時から、ほぼすべてを語ったことだ。
 かつて僕は、若気の至りか、最初から知識を総動員して、何とかお役に立とうとしていた。悪気はなかったが、聞く方は相当の消化不良だったと思う。それが証拠に、それで治癒率が上がったという実感はなかった。
 自分が年を重ねたこともあるし、その間の多くの症例を経験したことで、最近は多くを語らなくしている。漢方調剤の実力で何とかお役に立てれる機会が増えたこともあるが、説得では解決しないことを悟ったことも大きい。
 ところが本当に珍しく最初からこの親子にはすべてを語った。なぜか語りたくなったし、語っても裏目に出ないような予感がしたのだ。
 運良く、病理を説明しきったことが良い方に転がって受験モードを継続でき、この春大学に合格した。新学期で少し不安もあるみたいだから漢方薬は継続しているが、最近朝の9時ごろ突然電話をくれた。過去の記憶がよみがえって少し不安だったみたいだが、1年ぶりに10分くらい話したら、安心したみたいで明るく電話を切ってくれた。
 平日の朝9時だから本来なら授業に出ているはずの時間だったので、一瞬何かあったのかと思ったが、その日は1時間目の授業がなかったそうだ。不安が解消されたのでほっとして、僕はこれは滅多に踏み込まない領域なのだが何故か、何の勉強をしているのかと尋ねてしまった。すると彼女は看護と教えてくれた。
 なんと彼女は看護の大学に入学し、皆勤で頑張っているのだ。僕は単純にうれしかった。つい何度も嬉しいと言ってしまった。僕がうれしかったのは、過敏性腸症候群で受験場にも行けなかった人が、将来病人のお世話をする職業を目指していることだ。まるでハンディーを持った人がそれを克服して頑張っている姿と重なったのだ。もっとも僕に言わせれば実際にはハンディーでも何でもないのだが、ご本人にとっては重病と同じくらい苦しい。
 青春期に痛みを経験した人が看護師になる意味を僕はとても高く評価している。だから自然に何度も嬉しいを繰り返したのだ。彼女が生涯幾千の、いや幾万の人のお役にたつだろう。心や体の不調を経験し克服した人にしか備わらない強さや優しさをもって。
 自分が目指したものとはすべて逆に逆に進んで行き、ろくな寄り道も出来ずに来た僕の何倍、彼女は人様のお役に立てれるだろう。


Copyright© Sakaemachi-Yamato Pharmacy. All Rights Reserved.