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秋は体内の各器官・機能の休息と調整の季節といえますが、健康に影響を及ぼす多くの要素があり、また夏に消耗したものを十分に補充することも重要です。この時期にこそしっかり養生を心がけることが大切です。

①乾燥を防ぐ

秋になると気温が下がり始め、雨も少なくなって湿度が低くなり、空気が乾燥してきます。五行の考え方では秋は肺に対応しており、乾燥した気候は肺の陰気を損傷させやすいと考えられます。そのため、口や咽喉が渇く、空咳が出る、肌が乾燥する、便秘しやすいなどの症状が出やすくなります。さらに酷いときは咳き込んで血が混ざることもあります。したがって秋の養生は乾燥を防ぐことが最も重要です。

②冷えに注意する

乾燥と同時に、秋は冷えも忍び寄ってきます。夏に大汗をかいて人体の各組織は水分が不足していいる状態の人もいます。このとき冷気に侵されると、頭痛・鼻づまり・関節痛などの症状が現れやすくなります。また慢性病の再発や新たな病気を誘発することもあります。特にお年寄りや貧弱体質の人はこうした気候の変化への適応力や抵抗力が弱いので、冷えには十分注意が必要です。お年寄りの方には、湯たんぽの利用をお勧めいたします。

③基礎体力を養う

夏は体力の消耗が大きく、消化吸収力は衰える季節です、古来四季の規律を表す「春生、夏長、秋収、冬蔵」という言葉がありますが、秋は人体にとっても収穫の季節で、体力を養う重要な時期とも言えます。気候は涼しくなり人体の陽気は徐々に衰え、朝晩と日中の温度差が大きくなりますので、毎日の生活に注意を払って風邪などひかぬ気配りが必要です。


解説:惠木 弘(恵心堂漢方研究所所長)

漢方薬専門 東医堂 杉山薬局
〒355-0047 埼玉県東松山市高坂1088
相談電話 0493(35)0890 
定休日 日・月・木曜、祝日
当店への漢方相談はこちら >>
食中毒
食中毒というと、梅雨や夏場のイメージがありますが、実は食中毒が年間で最も多く発生するのは10月、次いで8月、9月に発生件数が多いのです。これからが最も食中毒を起こしやすい季節になります。

涼しくなってきたからと、食品の保管方法に関する注意が緩んでしまうことや、秋は、行楽・運動会・お祭りなどの行事が多い季節で野外での調理、食事の機会も多くなります。また、夏ばてで体力が落ちており、体の抵抗力が弱くなっています。

腸炎ビブリオ菌やサルモネラ菌によう食中毒は、免疫力の弱い方は重症化する可能性があります。中には死亡例が出ているものもありますので怖いですね。台所の衛生管理は、一年中気を抜かないようにする必要がありますね。

また、秋から冬にかけて、ノロウイルスやロタウイルスによる胃腸炎も増加します。重症化する可能性は低いですが、感染力が非常に強いので、吐瀉物を処理する際などには特に注意が必要です。


季節性うつ病
日照時間が短くなる秋から冬にかけては、精神的にもふさぎがちになる人が増えると言われています。秋冬に発症するうつ病を季節性うつ病と言います。これは、秋口はまだ温かいので、身体はまだ夏モードで活動的なままです。しかし、日照時間は短くなるので、脳は冬モードに切り替わろうとしています。このため、夏のスタイルに精神が追いつかず、憂鬱な気分になりやすいのがこの時期の特徴です。気分が落ち込む以外の症状としては、過眠や過食(特に炭水化物や甘いものが欲しくなる)があげられます。日光を浴びることによって症状が改善されますので、毎日短時間でも外出することが重要です。

季節性うつ病は、北海道や東北など緯度の高い地域で多く発病します。1日の日照時間が秋に短くなるのが原因ですから、夏と冬の日照時間の格差が大きい高緯度地域に発生しやすいと言われています。「芸術の秋」と言いますが、秋になると切ない音楽が心にしみるのも、こうした精神と身体のギャップが関係しているようです。


ぜんそく
ぜんそく患者の救急搬送は秋から初冬にかけて多いというデータ(名古屋市消防局)があります。9月中旬以降になると気温がグッと低下し、夏に冷たいものを摂りすぎていた人などは、食欲不振など夏バテの症状が出やすくなります。10月以降には湿度も低下し、朝晩の気温差が大きくなるため、上空は温かいのに地表付近は冷えるいわゆる放射冷却で空気の対流が悪くなり、汚れた空気が停滞します。その影響で、喘息も出やすくなります。

11月以降には、温度、湿度ともに低下します。空気の通り道である気道の粘膜が乾燥して、異物を体外に排出する機能が衰え、インフルエンザなどの感染症にもかかりやすくなります。

前日までの暑さがウソのように涼しくなったり、台風が来たりするなど、天気の変化が激しいこの季節はm気管支喘息発作の起きる方が多くなります。喘息は、空気の通り道である気道に炎症が起き、吸気の流れが妨げられる慢性の病気です。炎症を繰り返すうちに、「気道壁の変形」が進行し、刺激に対する敏感さである「気道過敏性」も高くなります。繰り返しの咳や「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴が起こり、呼吸困難が起き易くなります。

夏バテで体力が落ちていると特に危険ですので、栄養をしっかり摂るなど体力回復に気をつけましょう。

カゼをひくと喘息発作も誘発されやすいので、外から帰ったら手洗い・うがいと長袖長ズボンなど秋冬衣料などを早めに準備しておきましょう。


解説:惠木 弘(恵心堂漢方研究所所長)

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日本には四季があり、春夏秋冬と自然の変化を楽しんで生活することが出来ます。古人は、1年を24等分して、その分岐点を含む日に季節を表す名称を付け二十四節気と呼びました。
秋の二十四節気を見てみましょう。

●立秋(りっしゅう)
8月8日頃。朝夕が涼しくなり、秋の気配が立つ日。暦の上では秋になりますが、日中はまだ残暑が厳しく、1年で最も気温が高くなり時期です。この頃は、月遅れのお盆を前に各地で夏祭りが開催されます。まだまだ夏のレジャーを楽しむ頃ですが、よく観察してみると秋の気配を感じることが出来ます。夏の風と秋の涼やかな風が混在し、空を見上げると、巻雲など秋の雲が見られます。

●処暑(しょしょ)
8月23日頃。暑さが和らぐと言う意味。萩の花が咲き穀物が実り始める頃。厳しい暑さの峠を越し、朝夕は涼風が吹き始め、山間部では早朝に白い露が降り始め秋の気配を感じます。この頃は台風シーズンでもあり、立春の日から数えて二百十日、二百二十日とともに台風襲来の特異日です。夏バテや食中毒にかかりやすい時期でもありますので注意が必要です。夏の家具や雑貨を片づけ、秋の準備を始める目安にしましょう。

町内のお盆地蔵様をおまつりし、子供たちの健やかな成長を願う催しが、8月23日、24日の地蔵菩薩の縁日を中心に行われます。主に、京都を中心とした近畿地方や北陸、信州で行われ、関東・東海地方ではほとんどないようです。京都では、町内ごと地蔵尊の前に屋台を組んで花や餅などのお供物をし、子供たちはゲームをしたり、お菓子をいただいたりして遊んでいます。

●白露(はくろ)
9月8日頃。草の葉に白い露が結ぶという意味です。夜の間に大気が冷え込み、草花に朝露が宿ることから名づけられたのでしょう。野には薄が穂を出し、太陽が離れてゆくため空が高くなるなど本格的な秋の到来です。日中はまだ暑さが残りますが、朝夕の涼しさの中に肌寒さも感じ始めます。カゼに注意しましょう。
中国の五行説では「白」を秋(肺)の色としています。日本人からすると「白」は雪=冬をイメージしますね?

●秋分(しゅうぶん)
9月23日頃。春分と同じく、太陽が真東から昇って真西に沈み、昼と夜の長さがほぼ同じになります。太陽が、極楽浄土があるという真西に沈むことから、亡くなった人をしのぶ日とされています。春分・秋分の3日前からの7日間をそれぞれ春の彼岸、秋の彼岸とします。
「暑さ寒さも彼岸まで」と言われ、この日を境に寒さが増してきます。

●寒露(かんろ)
10月8日頃。寒露とは、晩夏から初秋にかけて野草に宿る冷たい露のこと。秋の長雨が終わり、本格的な秋の始まりになります。この頃になると五穀の収穫もたけなわで、農家では繁忙を極めます。
露が冷たい空気と接し、露に変わる直前で、紅葉が濃くなり、燕などの夏鳥と雁などの冬鳥が交代される時期でもあります。
この頃は、大気の状態が安定して空気が澄んだ秋晴れの日が多くなります。夜には月も美しく輝いて見えます。寒露の頃になったら、空を見上げて見てはいかがでしょう。これまでと違った、秋の清々とした趣を感じる空に出会えるはずです。

●霜降(そうこう)
10月23日頃。秋が一段と深まり、朝露が見られる頃。朝晩の冷え込みが厳しくなり、日が短くなったことを実感できます。初霜の知らせが聞かれるのもこの頃で、山は紅葉で彩られます。
コートや暖房器具の準備などの冬支度をこの頃から始めます。読書や編み物をしたりして、秋の夜長を楽しむのもいいですね。


解説:惠木 弘(恵心堂漢方研究所所長)

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東洋医学の最古典の「素問」を見ると、適当に運動して汗を出すのが良いのは夏の養生法であって、秋の養生法には、「秋の3ヶ月を容平という。万物が実を結ぶ時だ。すべてが引き締まり、収納される。この時期は早く寝て鶏と共に起きる。あれもこれもやりたい、などとイライラして活動的になってはいけない。この時期に活動しすぎて、陽気を発散(汗をかく)すると肺が弱り、冬になって下痢をする」と書かれています。

たしかに発汗し過ぎるとカゼを引きやすいものです。もし、秋に発汗したときは、すぐにでもふき取りたいものです。

今まで咲いていた花も実を結び、翌年のために生命力を種の中に収める時期です。人間の身体にも同じ働きがあり、「気」の流れの勢いも外向きから内向きに変化しています。この時期は身体の防御力が手薄になりがちです。秋に風邪を引きやすいのはこのためです。この季節は、薄着をして身体の熱を逃がしすぎるのは避けるべきでしょう。

また、乾燥する時期でもあります。これは、体表から「陽気」だけでなく「水分」も逃げていくためです。春や夏に比べると「身体」や「心」もおとなしく過ごすことが、自然と調和する方法だと言えます。春に目が覚め、夏にかけて外へ発散していた気のエネルギーは、秋を迎え身体の中へ向かおうとしています。身体は皮毛を閉じる前にもう一度、窓を開け放って残った「陽気」を出しきり、「涼しく清潔な気」を体内に入れて、「気」の入れ替えをすることが必要です。

肺は呼吸をつかさどり、取り入れた気「天の気」と食物から得られた「地の気」と合わせ、人体の『エネルギー』に変化させ、全身に送り出しています。

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スポーツの秋・食欲の秋・天高く馬肥ゆる秋、いずれも秋の健康状態をさしているようです。江戸時代の名医、貝原益軒の「養生訓」の知恵を参考に健康について考えて見ましょう。

心は平静にして、体は良く動かしましょう。(養生訓第一の14)
養生訓には、「心は身体の主人である。だから平静を保たなければならない」・・・。当たり前の話ですが、大切なことなのです。養生は心のあり方が問われます。怒らず、悲しまず、心の平静を保って、日々を有難く、喜んで、生活しましょう。次の言葉が続きます。

「身体は心の僕のようなものであるから、大いに労働させるべきである。心が平静であると、身体の主人である天君も豊かで、苦しみもなく楽しむ。身体を動かし働けば、飲食滞らず、気血の循環はよくなって病気は無縁の存在となる。」心を静かに保ち、体を動かすことが、健康へとつながってゆきます。

日本の長寿村を調べてみると、おじいちゃんやおばあちゃんはたいてい畑仕事をしています。高齢者みんなに畑仕事があればよいのですが、それは無理な話です。毎日玄関先にまで新聞を取りに行く、犬の散歩に行くなど、こまめに動くと良いでしょう。

最近では、食糧事情が良くなって、糖尿病の方が多くなっています。誰でも年をとると老化します。老化によって腎の働きも弱くなってきます。生活養生の仕方で、人様々ですが、老化を予防し、腎の働きを強化し、糖尿病を改善できる漢方療法と運動療法を紹介しましょう。

漢方療法では、六味地黄丸か八味地黄丸を用います。手足が冷え、夜間尿の回数の多い方は八味地黄丸を用います。

運動療法では、ガチガチになった股関節や膝関節を柔らかくするのが目的です。お相撲さんがやっている、膝割りや四股踏みは誰でもよく知っているでしょう。股関節を鍛え体のバランスを調えることが老化防止につながるのです。特に1日中椅子に座って仕事をしている方は、股関節が硬くなっています。浦田で開業しているしんクリニックの辛院長の報告では、股関節の筋肉を鍛える運動が健康回復に大きな効果を与えるようです。患者さんに実践してもらったところ、体が楽に動かせるようになったり、肥満が解消されたり、血糖値が下がったりと予想上の改善が見られるようです。

老いは股関節から始まると言われます。私たちは年をとると股関節や膝が硬くなります。股関節が硬くなると膝まで思うように動けなくなります。そうなると体のバランスが取れにくくなり転倒したり、骨折しやすくなります。そのまま寝たきりになったり、認知症につながって行ったり、高齢化社会の昨今では多く見られる現象だと思います。

高齢者の元気な人ほど、毎日よく歩いたり、軽い運動を行っています。人間の体は、東洋医学的には、五臓の中の腎が成長を促進し、生殖を司り、老化を防止すると考えられて、人間の一生に大きな影響を与えています。50歳・60歳を迎えると老化防止に、股関節を柔らかくするのも、元気に長生きするために大いに役立つことと思います。

膝割りのやり方は簡単です。まずは両足を広げて立ちます。上半身の力を抜いて、そのまま落とせるところまで腰を落とし、数秒間は我慢してその姿勢を維持します。このとき上半身はまっすぐで、前かがみにならないように注意しましょう。

しばらくすると太ももがブルブル震えて苦しくなってきますので、息を吐きながら元に戻します。これを毎日、数分間繰り返します。あなたも毎日、少しずつ確実に行ってみませんか。

なんとなく体が動きやすくなるのを感じるはずです。


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