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身体に良いというイメージが強い薬用人参ですが、この生薬は用いる人を選びます。
誰にでも同じように作用するわけではありません。

前回の薬用人参をお勧めする理由(7)リンク で触れましたが
人の身体は気を益す事で、上向きの力が働きます。
この上向きの力というのは、「身体が軽く感じる」というだけに限りません。
身体の軽さと同様に体感しやすいのが、身体の温かさ
あるいは、寝起きの爽快さ低血圧の改善など。

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眠っていたものが起き上がる。血圧が正常に上がる。
確かに、どちらにも 上がる ということが共通しています。
この上向きにかかる力を増進するのが、気を補う薬用人参の働きです。

その一方で、薬用人参はときに高血圧の人に不向きとされます。
たしかに血圧が一方的に上がってしまうなら、
高血圧気味では今まで以上の血圧上昇を招くとも解釈できます。
実際、薬用人参の血圧上昇は議論のあるところです。

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もっとも、薬用人参は万事が弱々しい人に用いる、元気を補う薬物です。
対して高血圧気味の方には、
身体ががっちりしている、万事元気旺盛な人も少なくありません。
そのような人に、虚証に用いる薬用人参はそもそも適しておらず、
体力が充実した実証タイプの人が之を用いると、
血圧上昇のほか、のぼせや興奮、不眠、頭痛を誘発する可能性もあります。
不適なものを服すれば、ときに実害を生じるのは、
薬用人参に限らず、全ての漢方治療に共通する注意点です。

また、薬用人参は数ある生薬の中で上薬に分類されるものです。
長く服用しても障りがなく、からだを正常にするものが上薬の共通点。
実際の臨床試験では、通常の服用量であれば、
長期服用(2ヶ月~5年)でも血圧に大きな変動はない
という結果も報告されています。

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一方的に上げるだけではなく、ときには下げる。
それも上薬たる薬用人参の薬能です。
そんな薬用人参だから、薬用人参をお勧めする理由(1)リンク のように
服用する時間帯によって、正反対の働きを示す訳です。

薬用人参を服用した方から
しばしば耳にするのが 身体が軽い という感想。

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かの神農本草経には、薬用人参について次のような記載があります。
久しく服すれば身を軽くし、年を延ばす

身を軽くするとは、文字通り 「身体が軽くなる」 という体感に通じます。

身体が重く感じるとき、そこには下向きの力が作用しています。
ただそれは、下に強く引かれているのでなくて、
上に持ち上げる力が不足しているために起きています。

気球をイメージすると良いかもしれません。
気球には常に、熱した空気の上へ上昇する 上向きの力 と、
おもりの下降する 下向きの力 が働き、
気球はそれでバランスを取り、高さを維持しています。
このとき上向きの力が不足すれば、気球は下降していきます。

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ここで注意したいのが、上向きの力を戻すだけでは、
元の高さには戻らないという点。それ以上、下降しないだけです。
一旦下降したものを、上昇して元の高さに戻すには、
より多くの上昇力が必要となります。
この「より多くの・・・」というのが、漢方の気を補うという事に当たります。 

また、大気は熱すると軽くなり、上昇していきます。
この熱することも、漢方では気を補う事、気が益す事に通じます。
人の身体は気を益す事で、上向きの力が働きます。
逆に気が不足して、相対的に下向きの力が大きくなれば、
脱力して身体を重く感じたり、横になっていたいと思うようになります。
もちろん身体が急に重くなっているわけではありません。
いつもより重く感じてしまう訳です。

この いつも通り とは、難しい言い方ですが恒常性(ホメオスタシス)と呼ばれます。
そして薬用人参には、この「いつも通り」を支える=恒常性を保つ働きがあります。

さまざまな薬用植物をまとめた古書、神農本草経には
薬用人参について次のような記載があります。

味甘微寒。・・・(中略)・・・精神を安んじ、魂魄を定め、驚悸を止め、
・・・(中略)・・・心を開き、智を益して、気を主る。

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精神や魂魄、心、智などいわゆる無形のものを整えるのも、
人参の薬能の一つとされ、その働きは養心安神と呼ばれます。
 
漢方では、「気を患うことで、精神は乱れ病む」という点から、
精神や心の不調は、気症(気の道症)と呼ばれます。
現代でいえば、種々の神経症や更年期障害、自律神経失調症、
また原因が不明瞭な不定愁訴も、この気症に該当します。

漢方では精神や心など目に見えないものは、身体の機能に宿ると考えます。
俗にいう心に宿るのではなく、身体の機能に宿るというところがミソです。
そして身体の機能が乱れると、それに宿る精神も乱れてしまう。
人参には身体の機能を整えて、そこに宿る精神を安定する働きがあります。

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ちなみに漢方では、身体の機能は内臓が発揮すると考えます。
内臓が身体の機能を発揮する。その身体の機能に精神が宿る。
そうして身体の機能を介して、内臓と精神がつながる。
之もまた、漢方独特の考え方です。


前回の薬用人参をお勧めする理由(4)リンク でも紹介しましたが、
人参は「中」を整える漢方処方に用いられます。
身体の機能にとっての中心は、それに宿る精神にとっても同じく中心的存在です。
精神的不調に処方される漢方薬に人参が
欠かせないのには、そういう背景があります。

薬用人参の薬能に「心下痞硬して悸する者を治す」というのがあります。
心下痞硬は、みぞおちが痞えて硬くなった状態、
悸するは、動悸がする状態をそれぞれ表します。

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かの有名な江戸時代の医学者、吉益東洞(よします とうどう)も、
その著書の中で、薬用人参の目標は
心窩痞堅あるいは心窩痞鞭、支結を主治す。
かたわら不食、嘔吐、喜垂心痛、腹痛、煩悸を治す。

と述べています。

心下痞硬は、消化器の不調に伴い現れる自覚症状ですが、
一方で身体におこる痞えはストレスやそれに応じた筋肉のこわばりに由来します。
心患いのときには胸(が張って)いっぱいになりますが、
心下痞硬のときは胸でなくて、みぞおちが張っていっぱいの状態になります。
ですから心下痞硬というのは、消化器機能の不調というだけでなく、
ストレスによる消化器障害という側面も持ち合わせています。

この心下痞硬を目標に用いる方剤に瀉心湯類がありますが、
最近はストレスに伴い急増する急性・慢性胃炎や
胃酸過多、胃潰瘍などに用いられています。
この瀉心湯類には、上腹部の痞え・痛みを治す目的で薬用人参が含まれます。

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消化器機能を整えるだけでなく、さまざなま気症
(今でいうところのストレス障害)を治す働きも持つとされる薬用人参。
最近の研究では、このストレスに対する薬能が注目されています。

身体に良いというイメージが強い薬用人参ですが、この生薬は用いる人を選びます
誰にでも同じように作用するわけではありません。
中には良い効果が得られないばかりか、悪影響を及ぼすこともあります。

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薬用人参自体は、虚証タイプの生薬です。
簡単に言えば、万事が弱々しいタイプ。
特に脾虚と呼ばれる、消化器機能の低下に対して用いられるのが特徴です。
漢方では消化器やその機能はもっとも大切なもの、
さまざまな機能の中心に位置すると考え、「中」と喩えます。
薬用人参を用いた漢方処方、補中益気湯や小健中湯なども
中を立て直す=消化器機能を改善するというところに由来しています。

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人の身体には代謝系や循環器系、自律神経系などさまざまな機能がありますが、
それらが十分に機能するには、消化器機能の働きが不可欠です。
「腹が減っては戦はできぬ」と言いますが、
戦をしているとき(身体が活動しているとき)、身体に備わった機能はフル回転しており、
それを影で支えているのは、お腹=お中という訳です。


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