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健康トピックス

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認知症のはなし

上原薬局 (東京都小平市)

世界は老い始めた ( マーガレット・チャン)
世界保健機関(WHO) によって、認知症に関する初めての報告書が発表され(2012 年4 月)、世界の患者数は40 年後には今の3 倍に増えると予測されています。国連の人口推計によると100 人に1 人以上が認知症を発症する見通しになります( 現在は200 人に1 人の割合)。
 まさに押し寄せてくるような高齢化の中で、認知症をいかに回避するかがますます重要となってくるでしょう。今回は生活習慣病と認知症の関係をまとめました。

高血圧と認知症

<認知症とは>
 認知症は、「脳や身体の病気が原因で記憶・判断力などの障害がおこり、普通の社会生活が困難になる状態」をいいます。いくつかに分類され、脳血管性認知症、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症などがあります。このうち、アルツハイマー型認知症は半数を占めるといわれます。脳血管性認知症は、脳の血管が詰まったり( 脳梗塞) や血管が破れて出血した状態( 脳出血) などにより脳に栄養が行かなくなって起こり、アルツハイマー型認知症は脳細胞が変性したり消失した結果、脳が萎縮して起こります。

<高血圧の影響>
これまで高血圧の合併症としては、脳出血、脳梗塞、心疾患、腎硬化症などが知られていました。しかし、高齢化の進行に伴い、より長期間にわたる影響として認知症との関係が注目されています。認知症との関係では高血圧は脳血管性認知症の危険因子とされていました。しかし、近年の研究により、中・高年期の高血圧が認知機能の低下やアルツハイマー型認知症の発症にも関連していることが分かってきました。晩年期の認知症発症を予防するうえで、若年期からの高血圧管理の必要性が認識されてきています。

<歩く速度と握力にご注意>
 歩行速度や握力から認知症や脳卒中の将来的ななりやすさが予想できるかもしれません。11 年間に渡って、約2400 人( 平均年齢62 歳) の歩行速度、握力、認知機能が追跡調査されました。その結果、歩行速度が遅かった人では速かった人に比べて認知症の発症リスクは1.5 倍高くなっていました。また、握力の強い人では、65 歳以上の人に限り、脳卒中のリスクが42%低くなっていました。さらに握力の強さは認知機能だけでなく脳容積の大きさとも関係がありました。できる範囲で意識的に速く歩いたり、しっかり握ったりするのは脳にとって効果がありそうです。

<高血圧の治療が認知症の予防に!?> 
血圧の高い人は降圧剤を服用しますが、いくつかの大規模な研究によって、高血圧を治療すれば認知症の発生を予防し、進行を抑えるという報告があります。

<予防の鍵は「健康なからだ」> 
高血圧の予防や治療への取り組みは、脳卒中や心臓病といった心血管病の予防に有効なだけでなく、認知症の可能性を小さくするので、まさに一石二鳥です。薬を飲むだけでなく、塩分を減らしたり、適度に運動するといった生活習慣の改善も重要です。次の点に注意しましょう。

☆食事
塩分控えめの食事は高血圧の予防に有効ですが、「減塩に王道なし」です。地道に取り組みましょう。例えば食品選択では、ちくわなどの練り製品、ソーセージなどには注意が必要で、かまぼこ10.8g、ハム1 枚0.6gの食塩が含まれます(高血圧治療ガイドラインが基準とする数値は6g未満)。
☆運動 
有酸素運動の継続が高血圧の改善に有効です。毎日30 分のウォーキングが奨励されています。運動量や強度の目安は「汗ばむ程度」、「少し息が上がっていても話はできる程度」です。
☆脳を使う生活など
 趣味などを持って生活を楽しむことも認知症の発症を抑えるといわれています。病気により引き起こされた機能の低下を、学習活動、運動などが補ったことを示唆する報告がなされています。

東洋医学にできること
漢方医学でも認知症の諸症状に対する薬物療法は古くから行われてきました。退行性神経性疾患である認知症に対して、漢方では瘀血であるとの認識から様々な方剤が用いられています。

方 剤  効 能・効 果
釣藤散
体力中等度で、慢性に経過する頭痛、めまい、肩こりなどがあるものの次の諸症:慢性頭痛、
神経症、高血圧の傾向のあるもの

当帰芍薬散
体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などを訴えるものの次の諸症: 月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、産前産後あるいは流産による障害( 貧血、疲労倦怠、めまい、むくみ)、めまい・立ちくらみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷え症、しもやけ、むくみ、しみ、耳鳴り

黄連解毒湯
体力中等度以上で、のぼせぎみで顔色赤く、いらいらして落ち着かない傾向のあるものの次の諸症:鼻出血、不眠症、神経症、胃炎、二日酔、血の道症、めまい、動悸、更年期障害、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ、口内炎

抑肝散
体力中等度をめやすとして、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症: 神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症( 神経過敏)、歯ぎしり、更年期障害、血の道症

抑肝散加陳皮半夏
虚弱な体質で神経がたかぶるものの次の諸症;神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症

慢性疲労症候群

上原薬局 (東京都小平市)

慢性疲労症候群(CFS) は、原因不明の強い全身倦怠感が長期間続き、健全な社会生活に支障をきたしている病態です。主な症状として、強い倦怠感、微熱、頭痛、筋肉痛、精神神経症状などがあります。
 近年、明らかとなってきたメカニズムとして、次のモデルが提唱されています。様々なストレスによって体の中の神経系、免疫系、内分泌系のバランスが崩れ、免疫力(NK 細胞活性) の低下が起こります。それに伴い、体内に潜伏していた種々のウイルスが再び活動します。すると、ウイルスをもう一度元に戻そうとするために免疫物質(インターフェロンなど) が増産されてきます。この増加が脳に悪影響を及ぼしてしまい、特に前頭葉の機能障害を引き起こし、疲労感・倦怠感が増してしまいます。
 日本では、1990 年よりCFS に対する研究が本格的に行われています。2004 年に行われた調査では、対象とした一般地域住民のうち、6 割近くの人が疲労を感じ、約4 割の人では半年以上続く慢性的な疲労を自覚していることが明らかとなりました。さらに慢性的な疲労を感じている人の半数近くが日常生活に何らかの支障をきたしていることが分かりました。疲労は身体の異常や変調に対するアラーム信号として重要なシグナルですが、過剰にはたらくと疾病状態に陥ってしまいます。

<不況の一因かも!?>
 疲れがたまってくると、生活が楽しくない、仕事がはかどらない等と感じられることがしばしばあります。疲労が社会に与える影響について、経済損失として算出したところ、年間で約1.2 兆円にも及ぶと推定されました( 文部科学省)。慢性的な疲労への対応は、社会が取り組むべき大きな課題と言えるでしょう。

慢性疲労症候群の治療と予防
<大きくは内科的治療、精神科治療>
 一般的には認知行動療法、段階的運動療法などの非薬物療法に加えて、症状に応じた薬物治療が行われます。例えば、疼痛に対しては非ステロイド性抗炎症薬が、うつ症状には抗うつ薬、不安症状には抗不安薬、不眠には睡眠薬が用いられます。また、疲労や不眠に対する効果を期待して、ビタミンC やビタミンB12 等も処方されます。さらにそれぞれの症状に適した漢方薬の使用も取り入れられています。

<心掛けたい食習慣>
 疲労感の少ない人の食習慣が調べられ、疲労対策のいくつかのポイントが分かってきました。まず主食としてお米が食べられていました。これは、米食主体により副菜の種類が豊富となり、疲労回復に役立つビタミンB1、C 等の栄養素も増えたためと考えられています。さらに摂られていた食材では、野菜、きのこ、果物などが多いことが分かりました。また、疲労感高い人ほど欠食率が高く、夜9 時以降に夕食を摂る率が高いことも明らかとなりました。
 以上から、疲れにくい体づくりのためにも、バランスのいい食事を規則正しく摂ることを心がけたいものです。

<プラスアルファの生活習慣> 
さらに誰にでもすぐにできる予防策として、「笑い」と「プラス思考」が挙げられています。笑いは免疫力のひとつであるNK 細胞活性を高めることが実証されています。
また、プラス思考によって意欲の低下、疲労の悪化を防ぎ、免疫力の低下も予防できます。

東洋医学にできること 
東洋医学では、身体は陽気( 気) と陰液( 血・津液) から成り、これらがバランスをとって生命活動が営まれているととらえられています。精神的あるいは肉体的な疲れ・無力・倦怠の場合、陽気と陰液が不足した状態によって引き起こされていると考えられ、身体的な特徴の把握によって適切な方剤が選定されます。特に、補中益気湯については臨床検討が行われ、西洋医学的にも有効性が報告されています。

方 剤  効 能・効 果
補中益気湯
体力中等度で、ときに脇腹( 腹) からみぞおちあたりにかけて苦しく、食欲不振や口の苦味があり、舌に白苔がつくものの次の諸症:食欲不振、はきけ、胃炎、胃痛、胃腸虚弱、疲労感、かぜの後期の諸症状、体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えて、疲れやすいものの次の諸症:虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒

十全大補湯
体力虚弱なものの次の諸症: 病後・術後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血

八味地黄丸
体力中等度以下で、疲れやすくて、四肢が冷えやすく、尿量減少又は多尿でときに口渇があるものの次の諸症: 下肢痛、腰痛、しびれ、高齢者のかすみ目、かゆみ、排尿困難、残尿感、夜間尿、頻尿、むくみ、高血圧に伴う随伴症状の改善( 肩こり、頭重、耳鳴り)、軽い尿漏れ

小柴胡湯
体力中等度で、ときに脇腹( 腹) からみぞおちあたりにかけて苦しく、食欲不振や口の苦味があり、舌に白苔がつくものの次の諸症:食欲不振、はきけ、胃炎、胃痛、胃腸虚弱、疲労感、かぜの後期の諸症状

柴胡加竜骨牡蛎湯
体力中等度以上で、精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う次の諸症:高血圧の随伴症状(動悸、不安、不眠)、神経症、更年期神経症、小児夜泣き、便秘

不眠と漢方

上原薬局 (東京都小平市)

意識は五臓(肝・心・脾・肺・腎)のひとつである心によってコントロールされています。心は陰陽のうちの陽に属するので、陽気が盛んな日中では心の機能は活発であり意識は明瞭で眠ることはあまりありません。一方、陰気が盛んになる夜間では心の機能が安静になり意識は沈潜し眠りに入ります。しかし、安静になるべき夜間に何らかの原因で心のはたらきが乱されると不眠が生じます。漢方では、ヒトそれぞれの体質、症状などのタイプに対応する方剤を選び、血行動態、自律神経系、胃腸障害を調節して改善をはかります。


タイプ別漢方方剤
血色がよく、のぼせ気味で、気分がイライラして落ちつかず興奮しやすい方。高血圧症、更年期障害などでみられる不眠にも。便秘があれば三黄瀉心湯を用いる。
・・・・黄連解毒湯、三黄瀉心湯など

大病後あるいは仕事で無理が続いて、疲れ、神経過敏になっている方。些細なことに神経を使って眠れないもの。
・・・・温胆湯など

胃腸が弱く、顔色すぐれず、腹にも脈にも力がない方。貧血、健忘、動悸、神経過敏、
不眠などで物忘れして困るというものによく、この症状があって眠れないものに用いる。
・・・・加味帰脾湯など

心身が疲労して眠ることのできないものに用いる。慢性病、老人の方で、夜になると目がさえて眠れないというものによい。
・・・・酸棗仁湯など

神経過敏で不眠を訴える、一見して丈夫そうな肥満体質の方。上腹部が膨満し、胸脇苦満があり、臍部で動悸が亢進し、便秘の傾向がある場合に。
・・・・柴胡加竜骨牡蠣湯など