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春の温かさが本格的になると同時に、増えていくのが汗の悩み。
春の汗は、日に日に増していく温かさと共に
この時期に伴いやすい肌の失調を反映しています。

春の肌は、寒さによる緊張から開放され、
血流が増えていき、新陳代謝が良くなります。
汗は血液から作られるので、
血行が良くなれば(=血管の中の血液が増えれば)
汗の量も自然と増える傾向にあります。
(だからと言って、それが直ちに汗を招くという訳でもありませんが…)

また春は、大気の変動(気圧や気温の変動)が大きく、
そこに新生活特有の精神的ストレスも手伝い、
自律神経系を通じて、この時期の肌には特有の緊張がたびたび起こります。
肌が緊張すると、そこに通る血管も収縮・緊張を起こしますが、
その反応が強すぎると、急激な収縮で行き場を失った血液は、血管から滲出しやすくなります。
けれど一方で、緊張したときには鼓動が早くなり、全身の血液循環は盛んになりますから、
体表面の血管は①緊張に伴って収縮、②緊張に伴って血流量が増加(≒血管は拡張
という、真逆の現象に挟まれます。

実際には、異常な収縮を繰り返した血管は
次第に反応が悪くなり、十分な収縮を行えず
血流量の増加も相まって、拡張する傾向が強くなります。
それは血管に注目すれば、一種の弛緩状態にも相当します。

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漢方では、血管の正常な運動・反応には、気の作用が伴うと考えます。
緊張に伴い(自律神経系を介して)、血管が正常に収縮できるのも、気のお陰という訳です。
けれど一方で、血管は収縮する度に気を消費する為、
症状が頻発すると、気を過剰に消耗してしまい、血管は緩みやすくなります。
血管が緩み、拡がることは、言いかえると、血管の締まりが悪くなることでもあり、
それが即ち、血液の漏出=汗に繋がります。
また一方で、血管が本来持っている柔軟性(≒弾力)を欠く事は、「陰虚」と見立てられます。
陰虚に陥った血管は、刺激に対して正常な反応が行えず、それもまた汗を誘引してしまいます。

春の多汗トラブルには、これら気虚と陰虚という2つの側面が影響を及ぼします。
春の多汗に服んでおきたい漢方薬とは即ち、
気虚・陰虚を改善する漢方薬を意味します。
それには例えば、補中益気湯や桂枝加黄耆湯、玉屏風散、
あるいは、柴胡疎肝湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝乾姜などに一服の価値があります。

今週末から、いよいよ長い10連休に突入します。
中には、遠方まで足を運ぶ方も少なくありませんが、
その場合に注意したいのは、普段の生活以上の立ち過ぎ&歩き過ぎです。

漢方では、立ち過ぎ&歩き過ぎは、肝・腎を傷めると言われます。
この場合、歩き過ぎによる筋肉の硬直、
あるいは逆に、歩き過ぎによる下肢の重だるさが
肝・腎の損傷に相当すると考えられます。
早い話、立ち過ぎ&歩き過ぎによるトラブルは、
肝気を消耗して血行を滞せ、
腎気を消耗して体液の滞りに及ぶという訳です。

足腰が強い人と弱い人では、
足腰に蓄えている肝・腎の気の絶対量が異なります。
それを増やしていく漢方的アプローチは、補肝・補腎と呼ばれます。
一方で、歩き過ぎ&立ち過ぎは、一時的な肝気・腎気の消耗(≒損傷)に相当する為、
補肝・補腎的なアプローチが、必ずしも効果的という訳ではありません。

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また、漢方に陰虚・陽虚という概念があります。
陰・陽にはいろいろな捉え方、概念が含まれますが
その一つに陰は静的、陰は動的というのがあります。
その点からすれば、立ち過ぎ(≒直立不動)は、動かな過ぎ=陽虚、
歩き過ぎは、動かし過ぎ=陰虚に相当すると言えます。
(現実は、歩くことには立つことも伴うので、陰虚に陽虚を兼ねる訳ですが)

足の酷使による一時的な陰虚(特に肝陰虚)に用いる漢方薬として、
芍薬甘草湯は大変に有名です。その一方で、立ち過ぎ・座り過ぎに伴う
一時的な陽虚に用いる漢方薬には、桂枝加苓朮湯や桂枝苓丸があります。
ちなみに、生薬に注目すると「芍薬」は、両タイプの漢方薬に配合されています。
このことは、芍薬が陰虚・陽虚のいずれに用いる事ができるというよりも、
芍薬の性質を、それと対になる桂枝や甘草、当帰が決定づけることを物語っています。

春の温かさと共に、強くなるのが紫外線。
その影響が及ぶのは皮膚だけではありません。目にこそ及びます。

目はむき出しの感覚器官で、そこには沢山の神経・毛細血管が通っています。
皮膚に比べて感受性が高い分、与える刺激の大きさが同じでも、
目に及ぶ影響は何倍にも増幅されます。
また最近の研究では、目に受けた紫外線の影響は皮膚に及び、
黒色化を招くことがわかってきました。
それこそ、光を認識する一番の器官は「目」ですから、
その点からすれば、当然の話かもしれませんが・・・。

そんな目に、ふとした瞬間に、眩しさを感じる・・・。
それはしばしば、目が疲れているサインとされます。
特に、現代の電子機器に溢れた生活は、目を酷使しやすく、
また前述の通り、春の紫外線が目に及ぶ一面もあります。
電子機器と紫外線。春の目には、ダブルパンチで影響が及びます。

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漢方では、目が正常に見えることは、目が澄んだ状態を反映すると考えます。
澄んだ状態は言葉を変えると、「目の輝き」とか「目が明らか」ということでもあります。
逆に言えば、目の働きが悪くなる(=見え方に変調をきたす)ことは、
目が濁った状態(それを招く栄養の消耗、老廃物の蓄積)を反映しており、
栄養の枯渇はかすみ目や目の乾燥、充血、眼筋の痙攣、
老廃物の蓄積は、結膜炎や目ヤニ、瞼の腫れなどにそれぞれ及びます。

また漢方では、肝は目に開くとも言われますが、
体の清濁を、物質的な側面(≒それを全身に供給する血流)から支えるのが
肝の働きであり、それを顕著に反映する一つが、目であるという訳です。

目が眩しい時に服んでおきたい漢方薬とは即ち、
血行を促進して①目に不足した栄養の回復
②目に溜まった老廃物の解消を行う漢方薬を意味します。
それには例えば、洗肝明目湯や抑肝散加芍薬黄連、柴胡疎肝湯
あるいは苓桂朮甘湯、連珠飲、桂枝加竜骨牡蛎湯などに一服の価値があります。

春の神経症。
ストレスに伴う緊張・興奮・障害が及ぶのは、実は「副腎」かもしれません。

人の体はストレスを受けると、
副腎から抗ストレスホルモン(=コルチゾール)を分泌して対応します。
体が出すものだから、有益なものと思いがちですが、
コルチゾール自体は、大量&長期的な分泌を想定した物質ではありません。
過剰な分泌は、ストレスに対する正常な反応を阻害して(=副腎を疲弊させ)、
心身に必要以上の負担を招き、ストレスへの過剰反応、
引いてはストレスへの適応力を低下させます。
その一連の状態は、副腎疲労と呼ばれます(それ自体は、正式な診断名ではありません)。

「ストレスが溜まる」というのは、概念的な話ではなく、
文字通り、(コルチゾールの過剰分泌という形での)副腎疲労の蓄積に及びます。
逆に言えば、ストレス解消にも抑うつ感の開放だけでなく、
コルチゾール蓄積の回避、副腎疲労の解消も含まれる訳です。

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・・・こういう風に書くと、コルチゾール自体が危険な物質で
それを分泌する事に、何かマイナスの印象を抱くかもしれません。
けれど、コルチゾールを分泌すること自体は、正常な生体反応であり、
それだけを切り取って論じれば、善悪の両面が混在しています。
適度に分泌する分には善行、けれど過剰&継続的に分泌する分には悪行。
大切なのは、コルチゾールを分泌しないことでなく、
①出しっぱなしを防ぐこと(=適当なところで止めること)
②分泌に応じて、副腎を労うこと(=副腎に疲労を貯めないこと)です。

東洋医学では、陽が極まれば陰となるという考えがあります。
陽が極まる=コルチゾールが増加していくと、
陰となる=それによる弊害(=コルチゾール障害)も同時に増加する関係にあり、
陽と陰は、一蓮托生の関係にある訳です。

漢方における副腎疲労のケア(≒副腎の回復)は、
肝腎の保養(肝腎の陰陽調和)に通じます。
それには例えば、補血・補腎の作用を持つ四物湯や当帰製剤、鹿茸製剤、
疎肝の作用を持つ柴胡疎肝湯や逍遥散に、一服の価値があります。


春の温かさと共に、増えていくのが汗の悩み
暑さが及ぶ面もあり、肌膚が緩む面もあり、自律神経が不安定になる面もあり
この時期の汗トラブルは、いろいろな要素を含んでいます。

東洋医学では、汗は心の液と言われます。
心は、五行において「火」を象徴する存在ですが、
心は火のエネルギーで体液を加熱して、汗に変えていきます。
その為、漢方では汗の異常=心の不調と見立てる場合が少なくありませんが、
汗をかくことには、①汗をかいて、心を平静に保つというプラスの面と
心の不調が、汗に及んでしまうというマイナスの面が共存しています。
汗の悩みを抱えた方は、このマイナス面を反映する場合が少なくありません。

緊張に伴う手汗、冷や汗。就寝中の寝汗。そういった汗にも、心の不調が及んでいます。
人の意志が及ばない場所で、心は半ば勝手に汗をかき、
心の昂ぶりを鎮め、平静を保とうとします。
現実は、汗が出ることが最大の悩みでしょうが、
その一方で、汗を出す事で均衡を保とうとする体の状態が存在する訳です。
その状態を無視して汗だけを防いでも、元の状態は残りますから、解決には至りません。

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心の不調を反映した汗。このタイプの汗を改善するには、
①表面的な心の煩労(=心が動じて、汗に及びやすい状態)
②根本にある心の不調(=心が弱って、動揺しやすい状態)
を改善していくことが大切です。

汗に服用しておきたい漢方薬とは即ち、
汗を及ぼす心の不調を改善する漢方薬を意味します。
それには例えば、柴胡加竜骨牡蛎湯や柴胡桂枝乾姜湯、
あるいは酸棗仁湯や温胆湯に一服の価値があります。



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