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女性の身体はとてもデリケートで複雑です。女性ホルモンにより、体調、お肌、気分、が左右され、生理がある期間(初潮~閉経)は特にその影響を受けやすくなります。
ひと月の中でも、生理中、生理後、生理前では精神的にも、身体的にも変化がある方も多いのではないでしょうか。その身体の変化に関わる「気」「血」「津液」について、特に「血」についてお話したいと思います。
気・血・津液
身体を元気に維持するためには、「気(身体を温めて元気にする生命エネルギー)」「血(身体に酸素と栄養を運ぶ栄養の源)」「津液(身体を潤わせる体液)」が必要です。この3つが十分にあり、スムーズに身体をめぐっている状態であれば、身体は満足して、何も不調は感じません。しかし、この3つが不足したり、スムーズに巡らなくなり、滞るようになると、身体は不満を感じて、「ちゃんとエネルギーと栄養を送ってよ!」と、様々な不調でそれを私たちに知らせようとします。
女性の身体は「お血になりやすい」
中でも「血」は、女性にとって、生理によって毎月消耗してしまったり、筋力が男性より弱いため、巡りが滞りやすかったりするため、ポイントになるものです。
「血」の病状には、2タイプあります。
(1) 「血虚(けっきょ)」という「血」が不足することで、めまい、立ちくらみ、乾燥肌、目の疲れ、
生理不順など様々な症状がでる状態です。 |
(2) 「お血(おけつ)」という「血」の流れが滞ることで、肩こり、頭痛、肌荒れ、しみ、生理痛など
様々な症状が出る状態です。 |
女性の身体は、「お血になりやすい」状況にあります。
その理由は・・・・
* オシャレ心から、薄着、短いスカート、締め付ける下着を身につけることは、冷えにつながり、
血流を滞らせる原因になります。 |
* 毎月の生理で「血」を消耗し、身体を巡る「血」が不足しがちで、巡る力が弱くなり血流が滞ります。 |
* 仕事・育児・家事で気力・体力を消耗し、ストレスが増えることで、血流が滞ります。 |
* ストレスから、過食、拒食となり、胃腸が疲れて「気」「血」を作るパワーが弱まり、血流が滞ります。 |
* 出産をすることで、膨大な「気」「血」「津液」を消耗します。 |
* 多忙なため、睡眠不足から、「気」「血」「津液」を消耗し、夜12時までに寝ることができずに、
「気」「血」「津液」を作って補充することができないと、悪循環になってしまいます。 |
* 運動をする機会がないと、血流が滞りやすくなります。 |
* 男性より筋力が弱いため、「血」を末端から押しもどす力が弱く、「血」の流れが滞りやすくなります。 |
「お血」になると、女性の場合は、生理不順、生理痛、子宮内膜症、子宮筋腫、チョコレートのう腫、不妊症の原因になる可能性もあります。
チェック表で、あなたの「お血」度を調べてみましょう。
5点 | 顔色がくすみやすい | 3点 | 頭痛がある | ||
---|---|---|---|---|---|
5点 | 内出血のアザができやすい | 5点 | 関節痛がある | ||
3点 | クマが気になる | 2点 | 物忘れしやすい | ||
3点 | 肩や首がこる | 5点 | 唇が紫っぽい | ||
2点 | 手足が冷える | 3点 | お腹や足の静脈が浮き出ている | ||
2点 | 痔がある | 5点 | 胸に締め付けるような痛み、
刺すような痛みがある |
||
5点 | 経血(生理の出血)に塊がある | 3点 | 生理痛がある | ||
3点 | シミ、そばかすが多い | 5点 | かたくてザラザラとしたサメ肌 | ||
3 ~6点: お血傾向がある
7~11点: お血 12点以上: お血が進んでいる ※ただし、5点の症状が1つでも当てはまる場合は、お血と判断してよい。 |
以上のようなことが心当たりのある方は、ぜひ、養生して、ご自分の身体を労り、「お血」を予防・改善することで、お悩みの症状を改善していきましょう。以下にタイプ別で養生法をまとめました。
「お血」には、大きく分けて次の6タイプがあります。
「気虚(ききょ)」タイプ | ||
---|---|---|
□ 疲れやすい
□ 風邪をひきやすい □ 食欲不振 □ 声に張りがなく小さい |
原因血を押し出すエネルギーである「気」が不足している状態。 |
漢方補中益気湯四君子湯 十全大補湯 など
|
疲れをためないように、睡眠を6時間以上はとりましょう。元気をつくる胃腸を大事にするためにも、消化の悪いもの、冷たいものや生ものを飲食しすぎないように気をつけましょう。
きのこ類、山芋、かぼちゃがオススメ。 |
||
「陽虚(ようきょ)」タイプ | ||
□ 寒がり
□ 手足が冷える □ 腰が冷える □ 下痢をしやすい (気虚が悪化した状態) |
原因身体が冷えることで、「血」の巡りが滞っている状態。 |
漢方温経湯当帰四逆加呉茱萸生姜湯 海馬補腎丸 など
|
生理中は特に冷えの影響を受けやすいため、スカートではなくパンツをはくなどして、冷えないように気をつけましょう。日頃から夏でも温かいものを飲食するようにしましょう。
生姜、シナモン、紅茶がオススメ。 |
||
「血虚(けっきょ)」タイプ | ||
□ 立ちくらみしやすい
□ 冷えやすい □ 髪が抜けやすい □ 爪が割れやすい |
原因いくら押し出しても流れる「血」自体が少なくて、巡らない状態。 |
漢方当帰四逆加呉茱萸生姜湯当帰芍薬散 温経湯 芎帰調血飲 など
|
「血」を消耗する生理中と生理後は「血」を増やす食事を心がけましょう。夜12時までには寝て、「血」を養いましょう。
レバー、人参、ドライフルーツ、卵がオススメ。 |
||
「気滞(きたい)」タイプ | ||
□ イライラしやすい
□ お腹にガスがたまりやすい □ 生理前に胸がはる □ 運動するとすっきりする |
原因「血」を巡らせる「気」が滞ることで、スムーズに巡らない状態。 |
漢方加味逍遥散合四物湯血府逐瘀湯 当帰芍薬散 芎帰調血飲第一加減 など
|
生理前は特にイライラしやすくなるので、リラックスして過ごしましょう。ストレスをためすぎないよう、適度に発散しましょう。
柑橘類、セロリ、紫蘇がオススメ。 |
||
「痰湿(たんしつ)」タイプ | ||
□ むくみやすい
□ 身体が重だるい □ 乗り物酔いしやすい □ 甘いもの・お酒をよくとる |
原因「血」に老廃物がたまり、ドロドロ血になって、巡りにくい状態。 |
漢方桂枝茯苓丸加薏苡仁当帰芍薬散 など
|
胃腸が弱ると、水分代謝が悪くなり、老廃物がたまりやすくなりますので、温かいもの、温野菜などを摂り、甘いもの、冷たい飲食、お酒は控えましょう。適度な運動もオススメです。
もやし、ハトムギ、昆布、玄米がオススメ。 |
||
「お血(おけつ)」タイプ | ||
□ 唇の色が暗色
□ 経血(生理の出血)に 塊がある □ 肩こりがある □ クマ、くすみが気になる |
原因瘀血の原因が進行して、血の巡りが悪くなった状態。 |
漢方血府逐瘀湯桃核承気湯 桂枝茯苓丸 など
|
半身浴などで、ゆっくり身体を温め、汗をかいてデトックスしましょう。柔軟運動をお風呂上りに取り入れ、身体をほぐしましょう。
玉ねぎ、黒酢、青魚、サフランがオススメ。 |
漢方を服用される場合は、体質にあったものでないと効果が現れず、症状が悪化する場合もあります。必ず専門家にご相談上、ご服用ください。
また、「お血」を改善する方法として、体質別で対応してくれる鍼灸もオススメです。
「お血」は万病の元です。養生や漢方で、女性ホルモンを整えながら、「気」「血」「津液」が身体のすみずみまで行き渡り、身体が満足する状態を、是非作って頂きたいと思います。「お血」知らずで体調が良いと、気持ちの余裕もできますので、仕事、育児、家事なども、より気持ちよくできるようになるかもしれません。私たち、漢方の専門家は、そのお手伝いができればと思います。
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誠心堂薬局
薬剤師
中川 倫子先生 -
薬剤師・国際中医師
北海道医療大学 薬学部卒業
中国漢方普及協会所属
誠心堂薬局 新浦安店店長を経験。
東京エリアのマネージャーを経て、現在は中医学術部門課長。