すでに向かうべき方向や目標が定まっている方は邁進していただき、何かチャレンジしたいけれどもまだ具体的に見えていないという方は「不動だったところを動かす」という目標はどうでしょうか。
動かないこと、動かされないこと、揺るぎないこと、そんな不動の性質を誰しも一つや二つお持ちだと思います。プラスに働くならいいのですが、そうでないものを放置するのはよくありません。肉体的にいうなら運動不足、精神的にいうなら固定観念などです。
例えば運動の習慣。適切な運動の強度は人それぞれですが、「体が硬い」のは「動いていない」証拠です。テニスや水泳など、運動らしい運動をしていたとしても、柔軟性のない体は「動いていない」と評価できます。疲労が抜けにくく、怪我のリスクも高いです。運動習慣の有無に関わらず肩こりにお悩みの人は多いですが、肩こりはまさに「動いていない」を示す代表的な症状です。肩に限らず、深い呼吸ができる、足が開く、体側がしなやかに伸びるなど、エネルギーを解放していく春にふさわしい伸びやかな体の使い方をしてみてください。
そして精神面での柔軟さも大事です。「信念を貫く」と言えばかっこいいですが、物事に対する価値観や常識は時代によって変化します。よく考えた末に信念を貫くことにしたと言えればいいですが「昔からそうしてきたからなんとなく今も」とアップデートを放棄しているのは怠慢に他なりません。春は精神的にも揺らぎの大きい季節とされています。凝り固まった古い考えにしがみつくよりも、柔軟に物事を捉える姿勢でいる方が、その揺らぎにしなやかに対応でき、精神的に安定します。おすすめの養生は夜中23時から3時にかけて、ぐっすりと眠ること。この時間帯は胆と肝の時間です。五臓六腑の中でもストレスに対して敏感な部分です。春は特にケアしてあげたいところ。調子が悪いと感じたら、早めに布団に入りましょう。翌朝に活発に動けるエネルギーが養われますよ。
それでもイマイチなら、ぜひご相談ください。
どうぞご自身の中の「不動」を卒業して、陽の気が高まる春を謳歌してくださいね。
神楽坂 漢方 有恒薬局 薬剤師・鹿島絵里