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女性の生活と健康
東西の医学を駆使すれば、治療の選択肢が充実し、 青春のシンボル「にきび」。でも・・・
食と漢方によって、治療効果のさらなる向上がみられる皮膚疾患の一つに「にきび」があります。 皮膚科の診断名では尋常性ざ瘡に当たりますが、膿疱を主体とする膿疱性ざ瘡、嚢腫が主体の嚢腫性ざ瘡なども含めて、「にきび」と呼ばれてきたように思います。 面皰を初発疹とする毛孔一致性の慢性炎症性病変で、思春期の男女の顔面、胸背部に好発します。「青春のシンボル」と言われてきましたが、瘢痕を伴うような重症例では、悩みは深刻です。 また、どんなに軽い「にきび」でも、いやでたまらないときもあり、いわゆる生活の質(quality of life)に著しい影響を及ぼす疾患として、適切な治療が求められるものです。 例:「にきび」で悩む男性Kさんは、20代の男性で、両こめかみから下顎まで、目と口を結んだラインの外側に、膿疱、嚢腫、瘢痕を伴う、ざ瘡病変が見られ、通常の抗生物質内服や外用療法にても再発を繰り返し、増悪してきたため、来院されました。 当科でも、まず、抗生物質内服から治療を開始し、急性炎症性病変は改善傾向がみられましたが、紅色丘疹の新生がとまらず、また、嚢腫や陥凹性の瘢痕形成が認められました。 色んな角度から「にきび」を退治▼仕事飲食関係の仕事で、熱気のある環境下で汗を流しながら調理をされていたためか、病変部位はタオルなどで機械的な刺激を受けやすいことも分かりましたので、擦るなどの刺激を避けることやスキンケアについての注意も加えました。 ▼食生活食生活では、甘いものの過食傾向はみられませんでしたが、油脂過剰に注意し、緑黄色野菜の摂取不足を解消することを勧めました。 ▼外用薬外用ではイオウカンフルローションをはじめ、抗生物質含有軟膏なども併用しました。 ▼漢方エキス製剤それでもなお、難治でしたので、漢方エキス製剤の内服を加えました。真皮深層に及ぶ化膿性炎症が続いていたため、荊芥連翹湯を用いましたが、変化がほとんどみられず、同じように解毒症に対する体質改善薬である柴胡清肝湯に変更したところ、2週間後の再来時には炎症症状が軽減し、改善が明らかでした。その後、3ヶ月間ほど内服を続け、新生皮疹、紅斑ともに消失したので、内服終了し、食の注意を続けていただくことにしましたが、再燃はみられず、瘢痕も目立たなくなって、非常に喜ばれました。 効能に「にきび」の記載のある方剤としては、
が挙げられますが、この方のように柴胡清肝湯の方が有用な場合もあります。 ほかにも、十味敗毒湯、桂枝茯苓丸、桃核承気湯、当帰芍薬散をはじめ、臨床現場で有用な漢方製剤は多種にわたります。 抗生物質内服を必要とするほどでもないときは、漢方のみで経過観察するので、漢方の腕の見せどころとなります。ただし、毛包虫性ざ瘡ほか、鑑別しなければならない毛嚢脂腺系疾患は数多く、正しい診断を行った上で、治療法を選択しなければなりません。皮膚の症状のみに注目しても、鑑別が必要な疾患が複数ある上、漢方薬の選択においては、背景にある冷えや便秘など、個別に異なる生体側のシステム調整を考慮するので、「にきび」に有効な漢方療法が多岐にわたるのは当然です。 最近、ケミカルピーリングなど、西洋医学領域でも治療の工夫が加わっていますので、東西の医学を駆使すれば、治療の選択肢もさらに充実することになり、「にきび」で悩まれていた方の心からの笑顔がもっと増えると思います。
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