先日内臓の癌を患った80歳代の女性が来店されました。普段から食欲がなくなったりすると来店され鍼灸治療をされている方です。今回癌の症状が悪化したため病院に入院されていました。
入院中からガスのため腹が張り苦しくなり、ドクター等に症状を訴えるものの改善せずそのまま退院され長全堂に電話連絡されてきた次第。電話ではとにかく腹が張って苦しいとのことでした。
こういった場合漢方薬では平胃散や小建中湯を考えますが、ガスが溜まって腹が張るといった状況はまさに”氣滞”です。
この”氣滞”をいかに疏通させるかが治療のポイントになります。腹中にガスが溜まっているのですから「胃経」「脾経」「大腸経」「小腸経」のいずれかに影響が出ているのではと予想して来店をお待ちしていました。
実際お会いしてお身体を診てみると「胃経」特に足に反応が”だるさ”として表れており、先ず「胃経」を中心に気を疎通させるため置鍼と施灸。更に百会に施灸。
しかし施術中に腹中に変化も放屁もなく腹の張りもそのまま残り帰宅されました。鍼灸治療は無効であったかと落胆する気持ちと、いやいやこれだけ鍼と灸で氣が動くように施術したのだからきっと症状は改善するはず、と思う気持ちが交錯しながら帰られる後姿を見送りました。
そして翌日お嬢さんが来店され帰宅後放屁が数回、夜半にも放屁がありとても快調になったと報告がありました。
やれやれ施術は無駄ではなかったと一安心した次第です。
その場で反応がなくても”氣”を疎通させるために刺激しておくと身体が時間をおいて反応し、良好な結果をだすことができる。鍼灸・漢方の妙味を感じた一例でした。