下痢で悩む80歳代の女性が漢方相談のため来店されました。
詳しくお話を聞くと、
下痢は必ず夜間であること、
排便前にはお腹がグルグルと鳴る、
便は水様便である、
排便後の不快感はない、
食欲は正常で食べ物飲み物は美味しく感じる、
口渇は強く感じない、お小水は普段に比べて少ない、
とのことでした。
これらの症状は、食べ過ぎや食中りではないことはすぐに判ります。ウィルスや細菌に感染した訳でもなさそうです。
こういった場合、漢方では先ず陰陽虚実や寒熱を考えます。「下痢は必ず夜間である」ことから身体を守り維持するべき“陽の気”が自然の“陰の力”に負けていると考えられます。更に「排便後の不快感が無く」「食欲は正常で」「お小水は普段に比べて少ない」ことから、本来お小水として排出されるべき水分が、自然の“陰の力”に負けて腎臓・膀胱を経由せず排出されると考え、これに対応する「排出されるべき水分を効率よく腎臓・膀胱を経由して排出し、“陽の気”を補う」処方をご用意したところよく効いて1週間もせず快癒されました。
実はこの女性、他所の病院で下痢によく使う“半夏瀉心湯”という処方を出されていました。確かに“半夏瀉心湯”は下痢症状のファーストチョイスとして繁用しますし、配合されている黄連の主成分は止瀉に優れていますが、この女性には全く無効でした。そのため長全堂に来店された訳ですが、半夏瀉心湯は胃腸に熱がこもった状態で下痢する場合に用いる処方で、「下痢は必ず夜間である」ことはないのです。