金沢大学はJR金沢駅からバスで40分ほど揺られた先の丘陵地帯にあります。それはそれは広いキャンパスです。シンポジウムや講演、ポスター発表などを全てワンフロアで行えるほど大きな建物、また薬用植物園も見学できるのですが広いキャンパスの端っこにあるためここで生薬の研究をしていると決して運動不足にはならないだろうなと思わせるほどです。普段長全堂薬局の中だけで仕事をしている私にとってたった2日の学会で1か月分歩いたような気がします。
最近のここの学会で頻繁に話題に上がるのは”漢方の国際化”。すでに中国は自国の伝統医学を国際標準規格(ISO)にしようと随分以前から画策しています。そうなると日本の漢方医学がただの地球の片隅にある一握りの人のための伝承医学に成り下がってしまいます。それは日本人として、漢方を生業とする者として嫌だなと思う。この学会に参加している者は皆そう思っているのでしょう。だから議論するのだけれど・・・。
ではどうしたら良いのでしょう。学会では日本漢方を世界に如何に認知してもらえるように情報を発信すべきだ、という議論が多いように思います。私はそうは思いません。「彼を知り己を知れば百戦危うからず」と孫子言っています。世界の漢方をアピールすると同じだけ中医学を分析する必要があるのではないでしょうか。
今回の学会では茨城大学の真柳教授の「『神農本草経』の科学技術と思想」という講演は大変面白く興味深いものでした。”本書は決して中国本草の萌芽などではなく、明確な意図をもって編纂された書とみなければならない”を存分に楽しみました。

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