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二階堂先生の「食べ物は薬」
アンズ - 咳止め、疲労回復にアンズ酒
- アンズ
- 学名:Prunus armeniaca var.ansu
- 科名:バラ科
- 英名:apricot
- 別名:杏、加良毛毛(からもも)
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中国原産の落葉果樹で、日本には古くから渡来し、万葉集にも記載され、現在では長野県、山梨県などが主産地として知られています。
ブンゴウメに葉、花、果実などが似ていますが、樹皮が褐色で、割れ目が細かい点などの違いがあります。白色又は淡紅色の5弁の花が葉の出る前に咲き、ウメより遅い時期に咲きます。
果実は短毛に覆われ、熟すと黄色味を帯びてきます。また果実が熟すと甘味が出て、石核と果肉が離れやすく、ウメのように完熟しても甘味を生じず、果肉が離れにくいのとは異なります。甘酸味と特有の芳香があり、生食や生のものに砂糖を加えて甘煮やジャムの缶詰にしたり、乾燥して菓子原料、シロップ漬などにします。
石核を割り、取り出して乾燥した種子(仁)を杏仁(きょうにん)と呼び、青酸配糖体のアミグダリンを約3%含有し、利尿、去痰、鎮咳薬として喘息、呼吸困難などに使います。杏仁を砕いて圧搾して脂肪油(杏仁油)を除き、水蒸気蒸留をしてから、エタノール・水を加え調整して作る杏仁水(きょうにんすい)は鎮咳、去痰剤として用いられます。アミグダリンは酵素(エムルシン)の働きによりシアン化水素、ブドウ糖とベンズアルデヒドに分解するため、過剰に使うと青酸中毒の恐れがあり注意する必要があります。また杏仁油は石けん材料や軟膏の基材、注射薬の溶剤、毛髪油などに利用されます。
生薬の杏仁は麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)、麻黄湯(まおうとう)、続命湯(ぞくめいとう)などの漢方処方に配合されて使われます。
杏仁には食べて甘い甜杏仁(てんきょうにん)と、苦い苦杏仁(くきょうにん)とが知られ、薬用には苦杏仁が使われ、食用には甜杏仁が使われます。粉末にした甜杏仁を、寒天を牛乳で溶かしたものに入れて作られるのが杏仁豆腐です。
落ちる前の果実を陽乾して果実酒(アンズ酒)にして鎮咳、疲労回復などに用います。また幹の材はアルミ、鉄、銅などを媒染剤として茶色系の染色剤としても使われています。果実の熟した時の色である赤味がかった橙色を杏色と呼び、灰汁媒染で染めることもできます。